2020年版開発協力白書 日本の国際協力

(2)水・衛生

エチオピア・ガンベラ州クレ難民キャンプにおける手洗いキャンペーンの様子(写真:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン)

エチオピア・ガンベラ州クレ難民キャンプにおける手洗いキャンペーンの様子(写真:特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン)

水と衛生の問題は人の生命に関わる重要な問題です。世界の約22億人が、安全に管理された飲み水の供給を受けられず、42億人が安全に管理されたトイレなどの衛生施設を使うことができず、30億人が基本的な手洗い施設のない暮らしをしています。また、水道が普及していない開発途上国では、多くの場合、女性や子どもが水汲みの役割を担っており、時には何時間もかけて水を汲みに行くため、子どもの教育や女性の社会進出の機会が奪われています。また、不安定な水の供給は、医療や農業にも悪影響を与えます。こうした観点から、SDGsの目標6において、「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」旨が定められています。

●日本の取組

カンボジアにおいて、日本の無償資金協力により建設された浄水施設(写真:JICA)

カンボジアにおいて、日本の無償資金協力により建設された浄水施設(写真:JICA)

日本は、1990年代から累計で、世界一の水と衛生分野における援助実績を有しています。この分野に関する豊富な経験、知識や技術を活かし、円借款、無償資金協力、および専門家の派遣や途上国からの研修員受入れなどの技術協力により、途上国での安全な水の普及に向けて支援を続けているほか、UNICEFなどの国際機関を通じた支援も行っています。

日本は、アジア・大洋州地域のインドネシア、カンボジア、ベトナム、ラオスといった国々で上水道の整備・拡張のための事業を実施しました。たとえば、2019年10月には、日本はラオスとの間で、世界遺産地区を抱えるルアンパバーン市での配水管の新規敷設などを含む水供給サービス改善のための無償資金協力に関する交換公文に署名しました。この協力により、同市の給水人口が2017年実績の約58,800人から、事業完成3年後の2025年には約70,000人に増加し、持続可能な都市環境整備に寄与することが期待されます。また、2020年3月には、日本はカンボジアとの間で、人口の急増に伴い水の供給能力向上が喫緊となっているタクマウ市において、上水道施設を新規に整備するための無償資金協力に関する交換公文に署名しました。この協力により、2030年までに当該地域住民約12万人が安全な水へアクセスできるようになり、同国の生活の質の向上に寄与することが期待されます。

このほか、日本NGO連携無償資金協力の枠組みを利用して、日本のNGOにより、水・衛生環境改善事業が実施されています。たとえば、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンは、カンボジアで衛生インフラが脆弱なプレアビヒア州において、衛生設備の建設および地域主導の包括的衛生改善活動を実施しています。事業1年目には、同国の3郡で、3つの貯水槽を建設しました。

こうした取組と並行して、草の根・人間の安全保障無償資金協力を通じて、日本は、井戸や給水・灌漑(かんがい)設備の整備、災害対策など、地域の住民に直接裨益(ひえき)する水・衛生分野の支援を多数実施しています。たとえば、コートジボワールにおいて、日本は、「グロビアスメ村井戸建設計画」により、井戸4基を供与しました。これにより、地域住民が安全な水へアクセスできるようになり、水因性疾病が減少するだけでなく、女性や子どもの水汲み労働が軽減されることにより、女性の社会進出や子どもの就学率の向上に貢献しています。

また、日本国内および現地の民間企業や団体と連携した途上国の水環境改善の取組も、世界各地で行われています。たとえば、南西アジアのスリランカでは、JICAの中小企業・SDGsビジネス支援事業を活用して、経済的な水道整備に資する圧縮コンクリート製タンクの普及・実証事業が実施されました。同事業により、1万4,650世帯に水を供給することが可能となり、その後、現地事務所を立ち上げ、新たなタンクの建設計画が進むなどの成果が現れています。

さらに、環境省でも、アジアの多くの国々において深刻な水質汚濁が生じている問題に対して、現地での情報や知識の不足を解消するため、アジア水環境パートナーシップ(WEPA)を実施しており、アジアの13の参加国注31の協力のもと、人的ネットワークの構築や情報の収集・共有、能力構築などを通じて、アジアにおける水環境ガバナンスの強化を目指しています。また、SDGsの目標6.3に掲げられている「未処理汚水の半減」の達成に貢献すべく、主にアジア地域を対象に、日本の優れた技術である浄化槽に関するワークショップやセミナーを開催するなど、浄化槽の技術や法制度などを紹介する取組を通じて、途上国における浄化槽の普及を後押ししています。


  1. 注31 : カンボジア、中国、インドネシア、韓国、ラオス、マレーシア、ミャンマー、ネパール、フィリピン、スリランカ、タイ、ベトナム、日本の13か国。
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