2020年版開発協力白書 日本の国際協力

第Ⅱ部 課題別の取組

グアテマラの小学校において、生徒に算数を教えるJICA海外協力隊員(写真:JICA)

グアテマラの小学校において、生徒に算数を教えるJICA海外協力隊員(写真:JICA)

第Ⅱ部では、日本が世界で行っている開発協力注1に関し、「1 『質の高い成長』の実現に向けた協力」、「2 普遍的価値の共有、平和で安全な社会の実現」、そして、「3 地球規模課題への取組と人間の安全保障の推進」の3つの主要な課題に関する最近の日本の取組を紹介します。

1.「質の高い成長」の実現に向けた協力

開発途上国が自立的発展に向けた経済成長を実現するには、その成長が「質の高い成長」である必要があります。「質の高い成長」とは、成長の果実が社会全体に行き渡り、誰ひとり取り残されない「包摂(ほうせつ)的」なものであると同時に、社会や環境と調和しながら継続できる「持続可能」なものであり、経済危機や自然災害などの様々なショックに対する「強靱(きょうじん)性」を兼ね備えたものです。これらは、日本が戦後の歩みの中で実現に努めてきた課題でもあります。日本は、自らの経験や知見、教訓および技術を活かし、途上国が「質の高い成長」を実現できるよう支援を行っています。

(1)産業基盤整備・産業育成、経済政策

「質の高い成長」のためには、発展の基盤となるインフラ(経済社会基盤)の整備が重要です。また、民間部門が中心的役割を担うことが鍵となり、産業の発展や貿易・投資の増大など民間活動が活発になることが不可欠ですが、開発途上国では、貿易を促進し民間投資を呼び込むための能力構築や環境整備を行うことが困難な場合があり、国際社会からの支援が求められています。

●日本の取組

…質の高いインフラ
ベトナムにおいて、日本の有償資金協力により建設されたニャッタン橋(写真:JICA)

ベトナムにおいて、日本の有償資金協力により建設されたニャッタン橋(写真:JICA)

2019年3月に開通したインドネシアのジャカルタ都市高速鉄道(MRT)の新型車両。日本の技術と運営ノウハウを全面的に導入して完成した。(写真:JICA)

2019年3月に開通したインドネシアのジャカルタ都市高速鉄道(MRT)の新型車両。日本の技術と運営ノウハウを全面的に導入して完成した。(写真:JICA)

開発途上国には依然として膨大なインフラ需要があり、2040年までのインフラ需給ギャップは約15兆ドルとも推計されています(出典:G20グローバル・インフラストラクチャー・ハブ(GIH))。しかし、途上国において、「質の高い成長」を実現するためには、ただ多くのインフラを整備するだけでなく、質の伴ったインフラを整備する必要があります。

具体的には、インフラ投資を行う上で、インフラの開放性・透明性、またライフサイクルコストからみた経済性、またマクロ(国)レベルの債務持続可能性を確保した上で、真に「質の高い成長」に資する「質の高いインフラ」を整備することが重要です。さらに、安全で、災害にも強い「強靭(きょうじん)性」を有するのみならず、誰ひとり取り残さないという「包摂(ほうせつ)性」や社会や環境への影響にも配慮した「持続可能性」を備えたものであることも重要です。日本は、途上国の経済・開発戦略に沿った形で「質の高いインフラ」を整備し、これを管理、運営するための人材を育成しています。技術移転や雇用創出を含めながら、途上国の「質の高い成長」に真に役立つインフラ整備を支援できることは、日本の強みです。

こうした「質の高い成長」に役立つインフラ整備への投資、すなわち「質の高いインフラ投資」の基本的な要素について認識を共有する第一歩となったのが、2016年のG7伊勢志摩サミットで合意された「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」です。さらに、質の高いインフラ投資の重要性およびその諸要素については、中国議長下のG20杭州サミットにおいても合意されました。日本議長下のG20においては、これまでのG7およびG20での合意を踏まえつつ、国レベルの債務持続可能性等を含むインフラ・ガバナンスの強化等の要素を新たに盛り込みながら、インフラ投資がもたらす経済、環境、社会および開発面における正のインパクトの最大化を掲げる原則の策定に向け、議論を重ねました。その結果、2019年6月に開催された大阪サミットにおいて、①開放性、②透明性、③ライフサイクルコストから見た経済性、④債務持続可能性といった要素を盛り込んだ「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が、今後の質の高いインフラ投資に関する共通の戦略的方向性と志を示すものとして、新興ドナーを含むG20の首脳間で承認されました。このG20原則を普及させるために、各国が政策を立案し、実施する際に考慮すべき事項を纏(まと)めた文書「質の高いインフラ投資に関するグッド・プラクティス集」がOECDにより作成されました。また、2020年11月には日本とOECDの共催で、グッド・プラクティス集の完成を記念するイベントを開催し、中西外務大臣政務官から質の高いインフラ投資の重要性について発信しました。質の高いインフラ投資の重要性については、その後も二国間会談や様々な多国間会議の場において確認されてきています。

こうした中、2020年11月の日ASEAN首脳会議では、2兆円規模の質の高いインフラプロジェクトを中心とする「日ASEAN連結性イニシアティブ」を立ち上げ、インフラ整備を通じて陸海空の回廊(かいろう)による連結性を強化し、3年間で1,000人の人材を育成していくことを発表しました。

日本政府は今後も、世界の質の高い成長のため、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」を国際社会全体に普及させ、アジアを含む世界の国々や世界銀行、アジア開発銀行(ADB)、OECD等の国際機関と連携し、「質の高いインフラ投資」の実施に向けた取組を進めていく考えです。

インド

包括的成長のための製造業経営幹部育成支援プロジェクト
技術協力プロジェクト(2013年4月~実施中)

訪日研修の学びから着想したインドの廃棄物管理のビジネス計画について発表を行い、全体で意見交換を行う研修参加者(写真:JICA)

訪日研修の学びから着想したインドの廃棄物管理のビジネス計画について発表を行い、全体で意見交換を行う研修参加者(写真:JICA)

インド政府は、インド経済のさらなる成長のため、製造業の強化を重視していますが、その際の課題の1つとして、製造業において経営幹部となり得る人材が不足していることが指摘されています。近年は、環境汚染や省資源化への対応、貧困層を対象とするビジネス展開など、製造業において対応すべき新たな社会的なニーズも生まれており、こうした新たな変化にも応えていくことができる経営幹部の育成は、製造業の持続的・包括的な発展にとって重要となっています。

本プロジェクトは、2007年から2013年の間に日本が実施した「製造業経営幹部育成支援プロジェクト」で確立された経営幹部育成プログラムの枠組みを基礎としています。これまでに、日本のものづくりの経験を活かしながら、1,000社を超える企業に対する人材育成や、1,200人以上の上・中級経営幹部の育成など、製造業をリードする人材の育成をインド全土で進めてきました。

また、日本から専門家を派遣し、商品の部品などを供給する企業とその下請けとなる企業間の連携の向上などに関する専門的知識や技術の指導を実施しているほか、環境配慮と誰も取り残さない成長といったテーマを盛り込んだ研修も行っています。さらに、日本流のものづくりの精神と経営手法を伝えるべく、日本における研修も実施しており、ものづくりの現場視察や、日本の社会文化についての研究・発表を通じて、参加した経営幹部候補の意識改革にも貢献しています。

本プロジェクトは、インド政府からの評価も極めて高く、引き続き日本流の経営手法を普及することにより、インドの製造業の基盤が強化されることが期待されています。


*上級・中堅管理者を対象とした「上級経営幹部コース」、製造業経験者の中堅管理者候補を対象とした「中級経営幹部コース」(大学院での学位認定プログラム)、下請け中小企業を対象とした「中小企業育成コース」から構成されている。

…貿易・投資環境整備
日本の有償資金協力により整備されたミャンマーのティラワ港。日本の官民が参画するティラワ工業団地(SEZ)の玄関口であり、ミャンマーと諸外国との間を多くの貨物が行き来している。(写真:JICA)

日本の有償資金協力により整備されたミャンマーのティラワ港。日本の官民が参画するティラワ工業団地(SEZ)の玄関口であり、ミャンマーと諸外国との間を多くの貨物が行き来している。(写真:JICA)

「東部アフリカ地域における貿易円滑化及び国境管理能力向上プロジェクト」において、タイの税関を訪問し、プロジェクト専門家から話を聞く東アフリカ税関職員(写真:JICA)

「東部アフリカ地域における貿易円滑化及び国境管理能力向上プロジェクト」において、タイの税関を訪問し、プロジェクト専門家から話を聞く東アフリカ税関職員(写真:JICA)

日本は、ODAやその他の公的資金(OOF)を活用して、開発途上国内の中小企業の振興や日本の産業技術の移転、経済政策のための支援を行っています。また、日本は途上国の輸出能力や競争力を向上させるため、貿易・投資の環境や経済基盤の整備も支援しています。

2019年8月に横浜で開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、ビジネスの促進が議論の中心となり、6つの全体会合の1つとして、「官民ビジネス対話」が実施されました。本会合はTICAD史上初めて民間企業を公式なパートナーと位置づけ、アフリカの官民と日本の官民が直接対話する場となり、日・アフリカ間の貿易投資拡大のための具体的な提案がなされたほか、直接投資の拡大や現地における人材育成を含む日本によるアフリカの民間セクター育成支援への強い期待が表明されました。また、安倍総理大臣(当時)からは、過去3年間で200億ドル規模だった対アフリカ民間投資が今後さらに大きくなるよう、政府として全力を尽くす旨表明しました。

2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で海外への渡航が困難となり、日・アフリカ間のビジネスは一時停滞しました。当初は、アフリカにおける感染爆発が危惧(きぐ)されていたものの、アフリカ各国が水際対策・国内の移動制限を早期に強化したことなどから、感染拡大は比較的緩やかで、死亡率も低く留まっています。こうした状況の中、2020年秋には、多くの国で定期航空便が再開されるとともに、日本企業の駐在員がアフリカへ帰任する動きが見られました。現地で活動する日本企業も新型コロナ対策を講じながら、ウィズ・コロナ、ポスト・コロナのビジネスを模索している最中です。日本政府としてもその流れを後押しすべく、産業人材育成やイノベーション・投資の促進を通じて、引き続き日本企業のアフリカ進出を全力で支援していきます。

また、世界貿易機関(WTO)では、途上国が多角的な自由貿易体制に参加することを通じて開発を促進することが重視されています。日本は、「貿易のための援助(Aid for Trade)」に特化した国際機関である国際貿易センター(ITC)などに拠出し、途上国が貿易交渉を進め、国際市場に参入するための能力を強化すること、およびWTO協定を履行する能力をつけることを目指しています。

日本市場への参入に関しては、日本は途上国産品の輸入を促進するため、一般の関税率よりも低い税率を適用するという一般特恵関税制度(GSP)を導入しており、特に後発開発途上国(LDCs)に対しては特別特恵関税制度を導入し、無税無枠措置をとっています。また日本は、経済連携協定(EPA)や投資協定を積極的に推進しており、貿易・投資の自由化および保護を通じたビジネス環境の整備を促進することにより、日本企業の途上国市場への進出を後押しし、ひいては、途上国の経済成長にも資することが期待されます。

こうした日本を含む先進国による支援をさらに推進するものとして、WTOやOECDをはじめとする様々な国際機関等において「貿易のための援助(AfT)」に関する議論が活発になっています。日本は、途上国が貿易を行うために重要な港湾、道路、橋などの輸送網の整備や、発電所・送電網などの建設事業への資金の供与、および税関職員、知的財産権の専門家の教育などの貿易関連分野における技術協力を実施しています。

これらの協力のうち、途上国税関への支援に関しては、ASEAN諸国を中心に、日本の税関の専門的知識や技術などの共有を通じて、途上国税関の能力向上を目的とした支援を積極的に行っています。また、世界税関機構(WCO)への拠出金を通じて、WCOが実施する能力構築支援活動に貢献し、WCOのツールやベスト・プラクティスの導入・普及の促進を通じた国際貿易の円滑化および安全確保の両立等のための支援を実施しています。さらに、日本の税関出身のJICA長期専門家を、ASEAN6か国注2に派遣し、個別分野のニーズに応じた支援を実施するとともに、アフリカではJICA/WCO合同プロジェクトのもと、各国税関で指導的役割を担う教官を育成するプログラムを実施しています。

さらに、途上国の小規模生産グループや小規模企業に対して、「一村一品キャンペーン」への支援も行っています。また、途上国へ民間からの投資を呼び込むため、途上国特有の課題を調査し、投資を促進するための対策を現地政府に提案・助言するなど、民間投資を促進するための支援も進めています。このほか、2017年2月に発効した「貿易の円滑化に関する協定(TFA)」の実施により、日本の企業が輸出先で直面することの多い貿易手続の不透明性、恣意(しい)的な運用等の課題が改善し、完成品の輸出のみならず、サプライ・チェーンを国際的に展開している日本の企業の貿易をはじめとする経済活動を後押しすること、また、途上国においては、貿易取引コストの低減による貿易および投資の拡大、不正輸出の防止、関税徴収の改善等が期待されます。

…国内資金動員支援

開発途上国が、自らのオーナーシップ(主体的な取組)で様々な開発課題を解決し、質の高い成長を達成するためには、途上国が必要な開発資金を税収等のかたちで、自らの力で確保していくことが重要です。これを「国内資金動員」といいます。国内資金動員については、国連、OECD、G7、G20、国際通貨基金(IMF)、および国際開発金融機関(MDBs)等の議論の場において重要性が指摘されている分野であり、「持続可能な開発のための2030アジェンダ(2030アジェンダ)」においても取り上げられています。

日本は、国際機関等とも協働しながら、この分野の議論に貢献するとともに、関連の支援を途上国に対して提供しています。たとえば、日本は、途上国の税務行政の改善等を目的とした技術協力に積極的に取り組んでおり、2020年には、税務調査、税源浸食と利益移転(BEPS)、審理事務注3などの分野について、ミャンマー、フィリピン、インドネシアへ国税庁の職員を講師として派遣しました。このほか、日本は、租税条約注4や多国籍企業に対する税務調査のあり方など、税制・税務執行に関する途上国の理解を深めるために、それらの分野における専門家を途上国に派遣してセミナーや講義を行う、「OECDグローバル・リレーションズ・プログラム」の展開を20年以上支援してきています。また、IMFやアジア開発銀行(ADB)が実施する国内資金動員を含む税分野の技術支援についても、人材面・知識面・資金面における協力を行っており、アジア地域を含む途上国における税分野の能力強化に貢献しています。

また、近年、富裕層や多国籍企業が国際的な課税逃れに関与することに対する世論の視線は厳しいものになっています。この点、たとえば世界銀行やADBにおいても、民間投資案件を形成する際に、実効的な税務情報が明確でないなど、税の透明性が欠如していると認められる地域を投資経由地として利用する案件について、案件形成の中止も含めて検討する制度も導入されています。国際開発金融機関(MDBs)を通じた投資は途上国の発展にとって重要な手段の一つであり、開発資金の提供の観点からも、途上国の税の透明性を高める支援の重要性は増しています。

さらに、2012年にOECD租税委員会が立ち上げた、多国籍企業等による過度な節税対策の防止に取り組むOECD/G20 BEPSプロジェクトの成果も、途上国の持続的な発展にとって重要です。このプロジェクトの成果を各国が協調して実施することで、企業活動や行政の透明性は高まり、経済活動が行われている場所での適切な課税が可能になります。途上国は、多国籍企業の課税逃れに適切に対処し、自国において適正な税の賦課(ふか)・徴収ができるようになるとともに、税制・税務執行が国際基準に沿ったものとなり、企業や投資家にとって、安定的で予見可能性の高い、魅力的な投資環境が整備されることとなります。現在、BEPSプロジェクトで勧告された措置を実施する枠組みには、途上国を含む139以上の国・地域が参加しています。

…金融

開発途上国の持続的な経済発展にとって、健全かつ安定的な金融システムや円滑な金融・資本市場は必要不可欠な基盤です。金融のグローバル化が進展する中で、新興市場国における金融システムを適切に整備し、健全な金融市場の発展を支援することが大切です。

こうした考えのもと、金融庁は、2020年2月に、アジア等の途上国の証券監督当局の職員を招聘(しょうへい)し、日本の証券分野の規制・監督制度や取組等について、金融庁職員等による研修事業を実施しました。

用語解説

その他の公的資金(OOF:Other Official Flows)
政府による途上国への資金の流れのうち、開発を主たる目的とはしない、条件の緩やかさが基準に達していないなどの理由でODAには当てはまらないもの。輸出信用、政府系金融機関による直接投資、国際機関に対する融資などを指す。
後発開発途上国(LDCs:Least Developed Countries)
国連による開発途上国の所得別分類で、途上国の中でも特に開発の遅れており、2014~2016年の1人当たりの国民総所得(GNI)が平均で1,025ドル以下などの基準を満たした国々。2020年現在、アジア7か国、中東2か国、アフリカ33か国、中南米1か国、大洋州3か国の46か国が該当する。
無税無枠措置
後発開発途上国(LDCs)からの輸入産品に対し、原則無税とし、数量制限も行わないとする措置。日本はこれまで、同措置の対象品目を拡大してきており、全品目の約98%を無税無枠で輸入可能としている。
経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)
特定の国や地域の間で物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)に加え、投資、人の移動、知的財産の保護や競争政策におけるルール作り、様々な分野での協力の要素等を含む、幅広い経済関係の強化を目的とする協定。このような協定によって、国と国との貿易・投資がより活発になり、さらなる経済成長につながることが期待される。
貿易のための援助(AfT:Aid for Trade)
途上国がWTOの多角的貿易体制のもとで、貿易を通じて経済成長と貧困削減を達成することを目的として、途上国に対し、貿易関連の能力向上のための支援やインフラ整備の支援を行うもの。
一村一品キャンペーン
1979年に大分県で始まった取組で、地域の資源や伝統的な技術を活かし、その土地独自の特産品の振興を通じて、雇用創出と地域の活性化を目指すものであり、海外でも活用している。一村一品キャンペーンでは、アジア、アフリカなど、途上国の民族色豊かな手工芸品、織物、玩具をはじめとする魅力的な商品を掘り起こし、より多くの人々に広めることで、途上国の商品の輸出向上を支援している。
貿易の円滑化に関する協定(TFA:Trade Facilitation Agreement)
貿易の促進を目的として通関手続の簡素化、透明性向上等について定める協定で、2017年2月に発効した。WTO設立(1995年)以降、初めて全加盟国が参加して新たに作成した多国間協定。WTOによれば、TFAの完全な実施により、加盟国の貿易コストが平均14.3%減少し、世界の物品の輸出が1兆ドル以上に増大する可能性があるとされている。
国際開発金融機関(MDBs:Multilateral Development Banks)
開発途上国の貧困削減や持続的な経済・社会的発展を、金融支援や技術支援、知的貢献を通じて総合的に支援する国際機関の総称。一般的にMDBsと言えば、全世界を支援対象とする世界銀行グループ(World Bank Group)と、各所轄地域を支援するアジア開発銀行(ADB:Asian Development Bank)、米州開発銀行(IDB:Inter-American Development Bank)、アフリカ開発銀行(AfDB:African Development Bank)、欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)の4つの地域開発金融機関を指す。
OECD/G20 BEPSプロジェクト
BEPS(Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転)とは、多国籍企業等が租税条約を含む国際的な税制の隙間・抜け穴を利用した過度な節税対策により、本来課税されるべき経済活動を行っているにもかかわらず、意図的に税負担を軽減している問題を指す。BEPSプロジェクトは、こうした問題に対処するため、2012年6月にOECD租税委員会(2016年末まで日本が議長)が立ち上げたもので、公正な競争条件を確保し、国際課税ルールを世界経済および企業行動の実態に即したものとするとともに、各国政府・グローバル企業の透明性を高めるために国際課税ルール全体を見直すことを目指している。2021年2月現在、「包摂的枠組」には、139以上の国・地域が参加しており、2020年12月現在、「税源浸食および利益移転を防止するための租税条約関連措置を実施するための多数国間条約(BEPS防止措置実施条約)」を93か国・地域が署名、日本を含む59か国・地域が批准書等を寄託している。

  1. 注1 : ここでいう「開発協力」とは、政府開発援助(ODA)や、それ以外の官民の資金・活動との連携も含む「開発途上地域の開発を主たる目的とする政府および政府関係機関による国際協力活動」を指す。
  2. 注2 : カンボジア、フィリピン、マレーシア、ミャンマー、ラオス、タイの6か国。
  3. 注3 : 事案の課税内容についての事実認定の当否や法令、通達に適合しているかどうかを適切に判断する事務。
  4. 注4 : 所得に対する租税に関する、二重課税の除去、脱税および租税回避の防止のための二国間の条約。
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