2020年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 05

「サンキュージャパン!」
~ジブチ豪雨で被災した小中学校での自衛隊部隊による排水・復旧作業~

ジブチ当局のスタッフとも協力して中学校での排水作業を行う自衛隊部隊(写真:防衛省)

ジブチ当局のスタッフとも協力して中学校での排水作業を行う自衛隊部隊(写真:防衛省)

再開した学校の前で現地の生徒たちと(写真:防衛省)

再開した学校の前で現地の生徒たちと(写真:防衛省)

2019年11月21日、アフリカ大陸の「角」に位置するジブチを襲った豪雨は、同国に大きな被害をもたらしました。ジブチはもともと雨が少ない国ですが、3日間で年間降水量の約3倍の雨が降った結果、洪水被害により約25万人が被災しました。その影響で、市内の道路も寸断され、一部で電気の供給もストップするなどの予期せぬ事態となりました。

こうした状況のなか、ジブチ政府からの要請を受け、ソマリア沖・アデン湾における海賊対処行動のためジブチに拠点を置いている自衛隊部隊の一部による国際緊急援助活動が、11月26日から7日間にわたって実施されました。

活動の主な舞台となったのは、首都ジブチ市内の小中学校でした。排水設備がほとんど整備されていなかった小中学校は、コンクリートの壁に囲まれた敷地内がすべて冠水(かんすい)し、建物内も浸水したため、学校は閉鎖を余儀なくされていました。そこで部隊は、市内4校での被害状況の調査を行った上で、排水・復旧作業を実施しました。作業は、自衛隊拠点の施設保全のために配備していた排水ポンプを利用して行われました。

「自衛隊の拠点で働くジブチ人もおり、参加した隊員は、いつもお世話になっているジブチの人たちに恩返しができればという思いで作業に取り組みました。ただ、これほどの豪雨(ごうう)を想定して用意された機材ではなかったため、限られた条件のもとで、現場でできることを懸命に探りながら作業を進めました。」と当時の様子を、排水作業の指揮を執(と)った野村達也(のむらたつや)1等海尉(かいい)は語ります。

学校の敷地内に溜まった水を抜き切ることを目標に、毎日約20名ずつ交代で作業にあたり、6日間で2校の排水作業を完了しました。排水作業の後には、1日でも早い学校の再開に向け、隊員は教室の清掃作業を手作業で行いました。参加した隊員は延べ約230名。約1,950トンの排水作業を行い、加えて日本政府がJICAを通じて供与したテント、毛布等の緊急援助物資約4.3トンの車両輸送・被災者への配布なども隊員の手によって実施されました。

「作業は、現地水道局のスタッフ、消防および警察などとも協力して行いました。言葉の壁もあり、コミュニケーションがとりにくい場面もありましたが、学校の再開という目的を共有していたので、お互いに身振り手振りでコミュニケーションをとりながら、最後まで一緒に頑張りました。」と野村1尉は語ります。

部隊の活躍が実を結び、学校は12月1日に再開することができました。排水・復旧作業は、地元の子どもたちや住民の方たちが見守る中で行われたことに加え、ジブチの首相や内務大臣も現場を訪れ、作業をしている自衛隊員に直接感謝の言葉が述べられました。

緊急援助活動の終了から数週間が経ち、町に出かけたときには、日本の国旗を付けた自衛隊員の姿を見た住民から「サンキュージャパン!」とたくさんの声援を受けたと、野村1尉は当時を振り返ります。「改めて日本の代表として活動していることを実感し、日本とジブチの友好関係の促進に貢献できたことを誇りに思います。」と野村1尉は締めくくりました。

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