2019年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス1

ODA計上における「贈与相当額計上方式」の導入
~新方式で日本のドナー努力をより正しく評価~

OECD開発援助委員会(DAC)は、メンバー国からの報告をもとに、メンバー国が1年間に供与したODAの実績額を取りまとめてインターネット上などで公開しています。また、何がODAに該当するかや、メンバー国がどのようにODAの実績額を算出し、報告を行うかについてルールを定めています。2018年の統計からは、従来の「純額(ネット)方式」に代えて「贈与相当額計上方式(Grant Equivalent System:GE方式)」がODAの実績額の算出方式として導入されました。

この新方式の特徴は、有償資金協力(円借款等)の計上額の計算方法にあります。これまでの計算方法であった純額(ネット)方式では、新たに供与した額がプラスの実績額として計算される一方、返済された額はマイナスの額として計算されていました。そのため、ある円借款プロジェクトについて、最終的に返済が完了した際には、実施されたプロジェクトへの支出額が実績としてプラス・マイナスでゼロになってしまうことになります。

これに対して、新たな「GE方式」は、有償資金協力がどれだけ緩やかな条件で供与されているかに着目し、供与額のほかに、利率、返済されるまでの期間などの供与条件や、援助をより必要とする後発開発途上国や低所得国に向けられた援助であるかといった要素も考慮して、有償資金協力で供与される総額のうち、贈与に相当する額(grant equivalent)をODAの実績額として計算します。そのため、これまでの方式とは異なり、円借款が返済されても、実績額が減ることはありません。GE方式では、供与条件が緩やかであればあるほど、贈与相当額として計算される実績額が大きくなるため、ドナーの努力がより正確に反映されます(図1参照)。

図1 ODA計上方式の比較

日本の場合、開発途上国に有利な条件で多額の有償資金協力を行っているため、2018年のODA実績として計算される額は、これまでの純額方式に比べ、約4割増えました(図2参照)。これにより、これまでの純額方式のもとであれば第5位となっていたDACメンバー国の中での日本のODA実績の順位が、GE方式のもとでは第4位になりました。また、国民総所得(GNI)に対するODA実績額の比率についても、日本は、純額方式では0.20%(DAC加盟29か国中第20位)になりますが、GE方式では0.28%(同第16位)となりました。

図2 贈与相当額計上方式と純額方式によるODA計上額比較(2018年実績DACメンバー上位10か国)

DACでは近年、ODAを時代に合ったものに改善するため、いわゆる「ODAの現代化」の議論が行われており、日本も積極的に議論に参加しています。GE方式の導入は2014年のDACハイレベル会合で決定されたもので、「ODAの現代化」の成果の一つと言えます。DACの会合では、論点によってはメンバー国間で意見が大きく異なり、調整が難航することもありますが、2014年の決定以降、2018年からのGE方式の本格導入に向け、新方式における具体的な計算方法のルールの技術的な問題が、メンバー国間の議論を通じて一つひとつ解決されてきました。2015年からは、新方式でのDACへのODA実績値の報告の試行も始まりました。

開発協力を巡る状況は、時代と共に大きく変化しています。SDGs達成への貢献、インフラ整備などの膨大な開発資金需要を満たすための資金動員、地球規模課題の解決といった現在の課題への取組を効果的に行っていくため、ODAをはじめとする開発資金のルール作りやデータ収集について、国際的な議論と試行錯誤が日々続けられています。


*贈与相当額計上方式の導入に伴い、本白書に掲載される図表にも、同方式による実績値が用いられています。具体的には以下のとおりです。

①贈与相当額を追加:図表Ⅰ-1参考統計2(1)のうち卒業国向け援助を除く実績

②2018年実績については贈与相当額を使用:図表Ⅰ-3図表Ⅰ-4図表Ⅰ-5図表Ⅰ-6

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