2019年版開発協力白書 日本の国際協力

8 アフリカ地域

アフリカは豊富な天然資源と約13億の人口を背景に、大きなポテンシャルを有していますが、近年、国際資源価格の下落や脆弱(ぜいじゃく)な保健システム、テロ・暴力的過激主義の台頭など、様々な問題にも直面しています。こうした課題に対応するため、2015年のアフリカ連合(AU)首脳会合において、アフリカ自身の新たな開発アジェンダである「アジェンダ2063」が採択され、国連でも同年、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が新たに採択されるなど、アフリカ自身の取組と密接に結びついた国際社会による新たな取組も開始されています。

●日本の取組

ザンビアの女性の健康づくりプロジェクトの一環で、妊産婦への産前健診の聞き取りを行うNGO団体ジョイセフの職員と現地スタッフ(写真:JOICFP)

ザンビアの女性の健康づくりプロジェクトの一環で、妊産婦への産前健診の聞き取りを行うNGO団体ジョイセフの職員と現地スタッフ(写真:JOICFP)

JICAの協力を受け、「平和と社会的結束」のスローガンのもと、南スーダンの首都ジュバで開催された第4回全国スポーツ大会での女子陸上競技800M決勝の様子(詳細は「開発協力トピックス」を参照)(2019年1月)(写真:JICA)

JICAの協力を受け、「平和と社会的結束」のスローガンのもと、南スーダンの首都ジュバで開催された第4回全国スポーツ大会での女子陸上競技800M決勝の様子(詳細は「開発協力トピックス」を参照)(2019年1月)(写真:JICA)

上記のようなアフリカ自身の取組を後押しする枠組みとして、国際社会との協調のもと、日本は、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)と共に、アフリカ開発会議(TICAD(ティカッド))を継続的に開催しています。2019年8月に横浜で開催されたTICAD7では、①経済、②社会、③平和と安定を3本柱として議論が行われました。日本は、これら3つの分野について、以下のような取組を実施していきます。

①経済については、たとえばABEイニシアティブ3.0などを通じて、これまでアフリカにおけるビジネスの推進に資する産業人材の育成を行っていきます。日本はTICAD V以降、JICAを通じてアフリカから1,200人以上を受け入れています。ほかにも、連結性の強化に向け、三重点地域注10を中心とした質の高いインフラ投資の推進にも取り組んでいきます。

②社会については、たとえば、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の拡大に向けた取組を一層推進していくとともに、300万人の基礎医療アクセスや衛生環境を改善し、健康保健を普及させていきます。日本はガーナにおいて「母子手帳を通じた母子継続ケア改善プロジェクト」、ケニアにおいて「アフリカ保健システム強化パートナーシップ・フェーズ2」といった技術協力を実施しています。また日本は、理数科教育の拡充や学習環境の改善により、300万人の子どもたちに質の高い教育を提供していきます。

③平和と安定については、TICAD7において、安倍総理大臣が、「アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(NAPSA」を提唱しました。日本は、NAPSAのもとで、アフリカ主導の紛争解決努力を支援するとともに、紛争やテロの根本原因にアプローチすべく、制度構築などの支援を行っていく考えです。

その一環として、日本はTICADプロセスを通じ、アフリカの平和と安定のため、2008年以降、アフリカ15か国内のPKO訓練センターが裨益(ひえき)するプロジェクトに対して約1億ドルの支援を行い、延べ60名の日本人講師を派遣し、研修の実施などを支援しています。また、サヘル地域においては、TICAD7の機会に開催された「サヘル地域の平和と安定に関する特別会合」にて、日本は、今後3年間でG5サヘル注11諸国の制度構築に携わる1,000人の人材育成を行うことや、若者の職業訓練・教育機会の提供、PKO人材の育成強化、マリ、チャド、ブルキナファソおよびモーリタニアに対する治安対策機材の供与に加え、難民・国内難民・ホストコミュニティへの支援の継続を通じて、同地域の平和と安定に貢献していく旨を表明しました。

また、南スーダンにおいても、2011年の独立以来、日本は、JICAや国際機関を通じて、インフラの整備、代替産業育成、基礎生活分野の改善、ガバナンスの向上などの分野で同国の国づくりを支援しており、南スーダンで治安が悪化した2013年以降は、国際社会と協力し、東アフリカの地域機構である「政府間開発機構(IGAD)」を通じて、南スーダンの平和の定着を後押ししています。2018年3月には、日本はIGADに360万ドル規模の支援を実施し、同支援は、2018年9月に署名に至った「再活性化された衝突解決合意」に関する協議の開催や、同合意事項の履行のために活用されました。

さらに、日本は、南スーダン自身の平和イニシアティブである国民対話プロセスへの支援も行っています。国民対話への支援は、公共財政管理、警察能力の強化、税関能力向上等の人材育成支援、食糧援助を含めた人道支援といった支援と並んで、南スーダンにおける平和と安定の回復に大きな役割を果たしています。このほか、2017年5月、5年以上にわたって国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に派遣されていた自衛隊の施設部隊は活動を終了しましたが、司令部要員の派遣を通じて日本のUNMISSの活動への貢献は引き続き行われています。今後も、平和の定着を同国の国民が実感し、再び衝突が繰り返されないように、国際社会が協力して、南スーダンの平和の定着を支援していくことが重要です。

コートジボワール

日本・コートジボワール友好交差点改善計画
無償資金協力(2015年6月~2019年12月)

工事中の日本・コートジボワール友好交差点(写真:JICA)

工事中の日本・コートジボワール友好交差点(写真:JICA)

コートジボワール最大の経済都市アビジャンでは、急激な人口増加や主要産業の集中等により、市街地が無秩序に拡大し、慢性的な交通渋滞をはじめとする都市問題が発生しています。そこで日本は、アビジャンが持続可能な都市として発展するよう、2013年2月から2014年11月にかけて、技術協力「大アビジャン圏都市整備計画(SDUGA)策定プロジェクト」を実施しました。同プロジェクトによって策定された大アビジャン圏都市計画は、2030年のあるべき都市利用方針や都市交通計画などの優先プロジェクトを示したものです。コートジボワール政府は、2016年3月、大アビジャン圏都市計画を同国の正式な都市計画と位置付けました。また、同計画は、コートジボワールに加え、他のドナー国や国際機関からも高い評価を受けており、米国、フランス、アフリカ開発銀行(AfDB)等の様々な開発ドナーが優先プロジェクトを実施しています。

日本はその後も、同計画の実現に向けた支援を行っており、無償資金協力プロジェクト「日本・コートジボワール友好交差点改善計画」はその一つです。本プロジェクトは、空港・港・ビジネス街をつなぐ交通の要衝(ようしょう)に位置する同交差点を立体交差化するものです。2017年から本格的に工事が始まり、2019年末には第1期工事が終了します。さらに第2期工事にて立体交差を双方向化することを計画しており、より多くの車両の通行を可能にすることで、市中心部と郊外を往来する交通の円滑化を進める予定です。

本計画により、渋滞が大幅に緩和されることで、アビジャンの西アフリカのハブとしての役割が強化され、経済活動がさらに活発になることが期待されます。

用語解説
アフリカの平和と安定に向けた新たなアプローチ(NAPSA:New Approach for Peace and Stability in Africa)
2019年8月に横浜で開催されたTICAD7において、安倍総理大臣が提唱した新たなアプローチ。アフリカのオーナーシップの尊重および紛争やテロの根本原因に対処するとの考えのもと、アフリカ連合(AU)や地域経済共同体(RECs)などによる紛争の予防、調停、仲介といったアフリカ主導の取組、制度構築・ガバナンス強化、若者の過激化防止対策や地域社会の強靱(きょうじん)化に向けた支援を行うもの。
日本の国際協力の方針 アフリカ地域(サブサハラ地域を含む)の重点課題
図表Ⅲ-9 サブサハラ・アフリカ地域における日本の援助実績

  1. 注10 : 東アフリカ・北部回廊、ナカラ回廊、西アフリカ成長の環にわたる3地域。
  2. 注11 : サヘル地域の5か国(チャド、ニジェール、ブルキナファソ、マリ、モーリタニア)をメンバーとするグループ。2014年2月にモーリタニアのヌアクショットで開催された5か国首脳会議で設立が決定した。
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