6 中央アジア・コーカサス地域
中央アジア・コーカサス地域は、ロシア、中国、南アジア、中東、欧州に囲まれており、この地域の発展と安定は、ユーラシア地域全体の発展と安定にとっても大きな意義を有しています。また、この地域には、石油、天然ガス、ウラン、レアメタル(希少金属)などのエネルギー・鉱物資源が豊富な国も含まれることから、日本が資源供給国の多様化を目指して資源・エネルギー外交を展開する上で、戦略的に重要な地域です。この観点から、日本は、これら地域の国々における人権、民主主義、市場経済、法の支配といった基本的価値の広まりを支え、同時にアフガニスタンやパキスタンなど、中央アジアに近接する地域を含む広域的な視点も踏まえつつ、同地域の長期的な安定と持続的発展のための国づくりを支援しています。
●日本の取組

ウズベキスタンの日本人材開発センターでの生産管理コース講義の様子(写真:JICA)
日本は、旧ソ連の崩壊に伴い独立した中央アジア・コーカサス諸国に対し、1991年の独立以来、市場経済体制への移行と経済発展に向けた各国の取組を支援するため、老朽化したインフラ整備、市場経済化のための人材育成、保健医療をはじめとする社会システムの再構築など多彩な分野で支援を行っています。
中央アジア諸国との関係においては、同地域が開かれた地域として安定・発展し、域内国が共通の課題に共同で対処することが重要であるとの考えから、日本は、2004年に「中央アジア+日本」対話の枠組みを立ち上げ、地域協力の「触媒(しょくばい)」としての役割を果たすよう努力してきました。近年は対話にとどまらない、より実践的な協力を進めています。
2019年5月、タジキスタンで開催された「中央アジア+日本」対話・第7回外相会合に参加した河野外務大臣(当時)は、人材育成等も通じ、日本らしいやり方で地域の連結性とインフラの強靱(きょうじん)性が高まるよう協力していく旨を述べました。また、地域安全保障・地域協力については、グローバルな課題であるテロとの闘いや麻薬対策の観点から、中央アジアとアフガニスタンの安定は国際社会全体の安全に密接に関連しており、こうした課題への対処には地域協力が不可欠である旨を指摘するとともに、この認識のもと、日本政府は、中央アジア諸国およびアフガニスタンに対する国境管理強化等の支援を引き続き実施していくことを表明しました。
また、2019年12月、ウズベキスタンのミルジヨーエフ大統領が就任後初めて訪日した機会に、安倍総理大臣と初の首脳会談を東京で行いました。同会談では、伝統的な親日国であるウズベキスタンとの友好関係が改めて確認され、安倍総理大臣の2015年10月のウズベキスタン訪問を機に大きく進展した経済面での協力をさらに後押しするべく、ウズベキスタンの経済発展にとって優先的な課題となっている電力供給の強化および主要産業である農業の高付加価値化や雇用創出に貢献する円借款の供与を決定するなど、同国の発展に向けた日本の貢献が示されました。
コーカサス諸国との関係では、日本は、アジアと欧州をつなぐゲートウェイとして重要な役割を担うコーカサス地域の自立的な発展のための協力を進めたいとの考えのもと、2018年9月の河野外務大臣(当時)によるコーカサス3か国(アルメニア、ジョージア、アゼルバイジャン)訪問の際に、「コーカサス・イニシアティブ」を発表しました。国づくりのための人づくり支援と、インフラ整備やビジネス環境整備を通じた魅力的なコーカサスづくりのための支援を柱とするこの基本方針のもと、日本政府は人材育成等の支援を継続しています。
このほか、日本は中央アジア・コーカサス諸国に対して、2017年までに10,647名の研修員の受入れ、3,463名の専門家の派遣をしており、ほかにも、若手行政官の日本留学プロジェクトである人材育成奨学計画や、日本人材開発センターを通じたビジネス人材育成など、新しい国づくりに必要な人材の育成を支援してきています。

