(9)資源・エネルギーへのアクセス確保
世界で電力にアクセスできない人々は、2017年時点で約8.4億人、特に、サブサハラ・アフリカでは、約5.7億人以上(同地域人口の約2人に1人以上)に上るといわれています。同地域では、2030年においても、9億人近くが調理用のエネルギーを木質燃料(木炭、薪など)に依存すると予想されており、それに伴う屋内空気汚染は、若年死亡の要因の一つにもなっています。また、電気やガスなどのエネルギー供給の欠如は、産業発達の遅れや、雇用機会の喪失を引き起こし、貧困をより一層深めるといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要は、アジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。
●日本の取組

風力発電システム整備計画によりトンガに設置された可倒式風車(写真:JICA)
日本は、途上国の持続可能な開発を確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備も支援しています。たとえば、日本はケニアにおいて、クリーンかつ天候に左右されない安定的な電力供給のため、円借款により、オルカリア地熱地帯における地熱発電所の建設・改修などを支援しており、合計で約400メガワットの発電に貢献しています。また、国土が狭くかつ散在し、気候変動の影響に脆弱(ぜいじゃく)な太平洋島嶼(とうしょ)国地域において、日本は、「ハイブリッド・アイランド構想」のもと、エネルギー安全保障および気候変動対策の観点から、温室効果ガスと化石燃料の消費削減などを目的として、ディーゼル発電所の効率化とグリッド接続型の再生可能エネルギーの主流化に向けた支援を行っています。
2018年7月、外務省は、パリ協定の発効を契機として脱炭素化に向けた国際的な取組が本格化している中で、供給面および需要面の双方において世界的に大きな変化が起きていることを踏まえ、世界のエネルギー情勢およびエネルギー転換に対応するエネルギー外交を進めていく旨を表明しました。また、2019年2月に開催した「エネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議」では、外務本省関係者に加え、在外公館職員、他省庁関係者、各種機構や民間企業関係者、有識者を交え、日本の資源の安定供給確保における課題や対策などについて議論を深めました。同会議では、昨今のエネルギー情勢のもとで、各国のエネルギー政策が周辺国・地域のみならず、世界全体のエネルギー情勢に直接的かつ間接的な影響を与えていること、また、国際エネルギー情勢を取り巻く環境が多様化し、不確実性が高まっている中、長期的な見通しを念頭に置きながら、短期的な変化にも迅速に対応できる体制にするため、各在外公館が各国およびその周辺地域のエネルギー政策や需給状況などに関する現状を正確に把握することが必要であることなどの認識が共有され、日本のエネルギー・資源外交の一層の強化が図られました。
また日本は、石油・ガス・鉱物資源などの開発において、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みである「採取産業透明性イニシアティブ(EITI)」を支援しています。採取企業は資源産出国政府へ支払った金額を、その政府は受け取った金額をそれぞれEITIに報告し、資金の流れを透明化しており、52の資源産出国と、日本を含む多数の支援国に加え、採取企業やNGOが参加して腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる、責任ある資源開発の促進を目指しています。