2018年版開発協力白書 日本の国際協力

開発協力トピックス4

対中ODA40年の回顧

中国に対するODA(対中ODA)は、1979年に開始して以来、中国沿海部のインフラのボトルネック解消、環境対策、保健・医療などの基礎生活分野の改善、人材育成等を中心に活用され、中国の改革・開放政策の維持・促進に貢献するとともに、日中関係を下支えする主要な柱の一つとして強固な基盤を形成しました。日本のODAによる経済インフラ整備を通じて中国経済が安定的に発展したことで、中国における投資環境が改善して日本企業の中国進出を後押しすることにつながり、日中の民間経済関係の進展が実現しました。また、技術協力等を通じて日本にも悪影響を及ぼす越境公害や感染症等の対策が可能になりました。このように、対中ODAは日本も裨益(ひえき)する形で実施されました。

インフラ分野では、石炭産地の山西省から沿岸部への円滑な石炭輸送を可能にして対日石炭輸出にも貢献した北京-秦皇島(しんこうとう)間鉄道拡充事業(有償)や秦皇島港拡充事業(有償)、天安門東駅・西駅を含む北京市中心約13kmを横断する北京市地下鉄一号線建設事業(有償)、2017年に旅客輸送者数がのべ7,000万人を突破した上海浦東(ほとう)国際空港建設事業(技協及び有償)、北京市の下水処理量の4割をカバーする北京市下水処理施設建設事業(有償)等、大型案件を着実に実施してきました。

環境対策分野では、日中友好環境保全センター(無償及び技協)が酸性雨・黄砂・PM2.5といった越境公害対策の拠点となっており、また、13省・自治区等を対象にした植林・森林保全事業(有償、技協及び無償)は中国の森林被覆率向上(1990年16.7%→2015年22.2%)に貢献しました。

保健・医療分野では、病床数1300床の規模を誇り、中国の「100の優秀病院」に選定された中日友好病院(無償及び技協)が、北京五輪指定病院や重症急性呼吸器症候群(SARS)流行時の重症患者受入れ病院に指定されるなど存在感を示していることに加え、ポリオ撲滅やパンデミック対策に貢献した感染症対策(技協、無償及び有償)、2000年から高齢化社会に突入した中国に我が国の経験を共有する日中高齢化対策戦略技術プロジェクト(技協)などを実施してきました。

人材育成分野では、将来の国づくりを担う人材育成を目的に計約5,100人の中国青年を受け入れた青年研修(技協)や、若手行政官等の社会・経済開発政策の立案実施能力強化を目的とした計430人に上る留学生受入れ(無償)を行いました。

この他にも、防災分野では、2008年の四川大地震を受けた緊急援助隊派遣、物資供与及び復興支援(技協)、司法分野では、中国の経済秩序の維持とともに日本企業の円滑な活動支援を目的として独占禁止法制定や会社法、民事訴訟法改正、民法総則制定等を支援(技協)しました。このように対中ODAの対象は多岐にわたり、現時点で総額は約3兆6,000億円に上ります。

四川大地震時における国際緊急援助隊救助チームの活動(写真:JICA)

四川大地震時における国際緊急援助隊救助チームの活動(写真:JICA)

一方、中国の発展に伴い、2006年に一般無償資金協力、2007年に円借款の新規供与が終了するなど、対中ODAは段階的に規模を縮小していきました。そして、2018年10月の安倍総理訪中の際、中国の改革開放40周年を契機に、対等なパートナーとして新たな次元の日中協力を推進すべきであるとの考えの下、対中ODAの終了を発表しました。現在実施中の技術協力が2021年度末に全て完了することをもって、対中ODAはその役割を終えることになります。

これに対し、中国側からは、日本の対中ODAは中国の改革開放及び経済建設において積極的な役割を果たした旨発言があるとともに、安倍総理大臣訪中の際には、安倍総理及び李克強総理が出席の下、これまでの対中ODAを含む日中経済協力を回顧する写真展も開催されました。今後、日中間の新たな協力として、開発分野における対話や人材交流、SDGs、気候変動、海洋プラスチックごみ等、地球規模課題に関する協力の実施などの検討を進めていくことになります。

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