2018年版開発協力白書 日本の国際協力

3 開発協力の適正性確保のための取組

日本の長年にわたるODAは、開発途上国の開発、成長に様々な形で貢献してきただけではありません。ODAは、日本と開発途上国との間の友情と信頼の確かな絆(きずな)を築くとともに、日本の国際社会における地位の向上に、ひいては日本自身の平和と繁栄をより確かなものとすることに大いに役立ってきましたが、課題や困難に直面したこともありました。ODA事業に際して、不正が行われたことや、不測の事態によって十分な援助効果が上げられなかったり、遅れが生じたりしたこともあります。また、環境や地元コミュニティに予期せぬ影響が出たり、累積債務問題が生じたりしたこともあります。さらに、日本政府の開発協力は、日本の顔が見えにくい、援助目的が達成されていないといったご意見をいただくこともあります。

日本政府としては、こうした経験を一つひとつ無駄にせず、将来への教訓とすべく、評価の仕組みを整え、透明性の向上に努め、市民社会を含む幅広い関係者の方々との対話を行うといった努力を続けてきました。こうしたことを通じて、日本は、開発途上国の人々に真の豊かさをもたらすよう、「非軍事的協力による平和と繁栄への貢献」という、平和国家としての日本にふさわしい開発協力を推進する方針の下、環境・気候変動への影響、特に貧困層や女性、少数民族、障害者などの社会的に弱い人々に配慮しながらのODAを行っています。また、不正を防ぐ仕組み、受入国側との丁寧な対話と調整、さらには、きめ細かい事業の維持管理やフォローアップのプロセスも整えてきました。日本政府は、今後もより効果的で適正な開発協力の実施に向けた努力を不断に続けていきます。

(1)不正腐敗の防止

日本のODAは、国民の税金を原資としていることから、ODAに関連した不正行為等が行われることは、開発協力の適正かつ効果的な実施を阻害するのみならず、ODAに対する国民の信頼を損なうものであり、絶対に許されるものではありません。

しかしながら、ODAを巡る不正行為は今日においても後を絶たず、厳しい対応が求められているところです。このような不正行為を防止するには、たとえば、不正行為を行ったとしても、いずれ見破られ、厳しいペナルティが課されることを認識させる必要があります。そこで、外務省およびJICAは、過去に発生した不正行為も踏まえつつ、これまで、監視体制の強化として「不正腐敗情報に係る窓口の強化」、「第三者検査の拡大」等を行い、ペナルティの強化として「排除措置期間の上限引上げ」、「違約金の引上げ」、「重大な不正行為を繰り返した企業に対する減点評価の導入」等を行いました。さらに、2018年には、外務省およびJICAは、措置に係る基準を改正し、「排除措置対象の拡大」(措置対象者の企業グループ等への措置、措置期間中の者から事業譲渡等を受けた者への措置を可能とした。)等を行いました。

日本政府は、ODAに関連した不正行為は断じて許さないという強い決意の下、JICAと連携し、引き続き、不正行為の防止に向けた対応について、しっかりと取組んでいきます。

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