2 開発協力の発信に向けた取組
(1)情報公開、国民の理解と指示の促進に向けた取組
開発協力大綱に基づき、持続的に開発協力を実施していくに当たり、外務省およびJICAは、国民の理解・支持を深めるため、開発協力に関する議論や対話の促進、開発教育の推進、開発協力の現状についての情報公開や発信を積極的に行っています。また、地方や幅広い層への発信などの方法で、幅広い層の国民が実際の開発途上国支援に直接参加でき、ODAの現場を体験できる機会も提供しています。同時に、外務省およびJICAは、開発課題の多様化・複雑化に適切に対応していくためには、人材育成と知的基盤の強化も重要と認識しています。国際社会において日本の開発協力への理解を広めるべく、在外公館とJICA現地事務所が連携して、現地でのODA広報に力を入れています。
ア.広報・情報公開・情報発信の強化
外務省とJICAは、それぞれODAに関するウェブサイト注9を相互にリンクさせながら正確な情報の公開と発信に努めています。また、外務省はODAメールマガジンを発行し、在外公館の職員やJICA関係者、NGO職員、国際機関職員などによる実際の開発協力の現場での体験談やエピソードなどを紹介しています。
また、外務省は、国民が国際協力について関心を持ち、理解を深められるよう、様々な媒体を利用した広報に取り組んでいます。2018年には、人気アニメ「秘密結社 鷹の爪」を起用し、アニメーション動画「鷹の爪団の 行け!ODAマン」を制作しました。同動画では、ASEAN海上保安事業やケニアでの教育支援事業等、世界各地で行われている開発協力案件をわかりやすく紹介し、東京メトロのトレインチャンネルやBSテレビなどの放映を通じて、幅広い層の人々に届くことを目指す広報を実施しました。
その他、2018年5月中根副大臣(当時)は、お笑い芸人「ペナルティ」を「草の根大使」に任命し、草の根・人間の安全保障無償資金協力の広報活動関連業務を委嘱しました。
毎年「国際協力の日」(10月6日)の前後には、外務省、JICAとJANIC(国際協力NGOセンター)が共催する日本国内最大級の国際協力イベント「グローバルフェスタJAPAN」が開催されています。2018年は、9月29日(土)に東京・お台場のシンボルプロムナードで、NGOや国際機関、在京大使館、企業、関係する省庁など268者が参加し、43,888人が来場しました。
また、海外においても、在外公館はODAを通じた日本の積極的な国際貢献について理解を深めてもらうための広報を行っています。具体的には、開発協力に係る署名式や引渡し式に際してプレスリリース(報道機関に向けて紹介する文書)を出すなど現地の報道機関も活用しつつ情報発信をしています。ほかにも、在外公館では、現地の報道機関関係者による日本の開発協力の現場の視察を企画し、現地の報道において日本の協力が取り上げられる機会をつくるように努めています。さらに、在外公館は、開発協力白書の英語版を駐在国の要人など関係者に渡し、日本の開発協力について紹介しているほか、様々な講演活動、英語・現地の言葉によるホームページや広報パンフレット等の作成も行っています。
イ.ODAの実施・評価に関する情報公開
2010年に、JICAはODA事業の概要や成果等を分かりやすく説明し、ODAに対する国民の理解と支持をさらに高めていくため、「ODA見える化サイト」をJICAホームページ上に設けました。全世界で展開しているODA事業のうち、有償資金協力、無償資金協力、および技術協力の各案件について、写真や事前・事後評価などの情報を随時掲載し、情報の拡充に努めています。
また、外務省のホームページにおいては、草の根・人間の安全保障無償資金協力および文化無償資金協力で実施された案件について効果が現れている案件や十分な効果が現れていない案件などを含む具体的な達成状況や教訓をとりまとめたリストを公表しており、より効果的なODAの実施に努めています。
ウ.開発教育の推進
外務省は、職員を中学校、高校、大学、NGOなどに派遣し、国際協力やODAについての説明や解説を行う「ODA出前講座」を実施しています。また、JICAでも開発教育を支援するため、学校教育の現場などの求めに応じて、JICAボランティア経験者などを講師として紹介し、開発途上国での暮らしや経験談を伝えて異文化理解・国際理解の促進を図る「国際協力出前講座」や、東京、名古屋、札幌にある展示施設「地球ひろば」や国内拠点で学校などの訪問を受け入れる「JICA訪問」への対応を行っています。また、中学生・高校生を対象に「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」を実施しています。さらに、JICAは教員に対して、「開発教育指導者研修」や、開発途上国に派遣し、その経験を授業に活かすことを目的とした「教師海外研修」などを実施しています。
エ.ODAの現場体験
できるだけ多くの人に開発協力の現場を体験する機会を提供し、ODAの実情に触れていただくことは、ODAを理解するために最も効果的な方法の一つです。JICAは教師や地方自治体関係者などの現地視察への派遣支援にも力を入れています。
オ.議論や対話の促進
日本政府は、ODAを活用した中小企業支援等、ODAに関する取組について国内各地で説明会を行うなどの取組を行っています。また、日本政府は国際協力をめぐる動きや日本の取組を紹介する講演やシンポジウムも開催しており、外交やODAのあり方について関心を有している国民の方々と対話する場を随時設けています。
さらにJICAでは、地域にあるセンターや支部などの国内拠点を活用して、地域の産業界や行政関係者あるいは有識者や地元の大学や学校関係者との懇談や講演を行いながら、国際協力を地域から発信するとともに地域の活性化を目指しています。
- 注9 : 外務省ODAホームページ:https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/index.html JICA:http://www.jica.go.jp ODA見える化サイト:http://www.jica.go.jp/oda