8 アフリカ地域
サハラ砂漠より南に位置するサブサハラと呼ばれる地域は、豊富な天然資源と12億の人口を背景に大きなポテンシャルを有していますが、近年、国際資源価格の下落、脆弱(ぜいじゃく)な保健システムやテロ・暴力的過激主義の台頭など新たな問題にも直面しています。こうした課題に対応するため、2015年のアフリカ連合(AU)首脳会合において、アフリカ自身の新たな開発アジェンダである「アジェンダ2063」が採択され、国連でも同年「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が新たに採択されるなど、アフリカ自身の取組と密接に結びついた国際社会による新たな取組も開始されています。
■日本の取組
国際社会との協調の下で、上記のようなアフリカ自身の取組を後押しする枠組みとして、日本が国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)と共に継続的に開催している、アフリカ開発会議(TICAD:ティカッド)があります。2016年にケニアのナイロビで開催された第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)では、①経済多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進、②質の高い生活のための強靱(きょうじん)な保健システム促進、③繁栄の共有のための社会安定化について議論が行われ、その成果として、アフリカ開発の方向性を示す「ナイロビ宣言」がまとめられました。
これを受けて、日本政府は、TICAD VIの取組として、2016年から2018年の3年間で、日本の強みである質の高さを活かした約1,000万人の人材育成をはじめ、官民総額300億ドル規模の質の高いインフラ整備や強靱な保健システム促進、平和と安定の基盤づくりなどのアフリカの未来への投資を行う旨を発表しました。こうした取組の中には、約3万人の産業人材の育成、基礎的保健サービスにアクセスできる人数をアフリカ全体で約200万人増やすこと、約5億ドル以上の支援により約30万人の命を救うことなどが含まれています。第7回アフリカ開発会議(TICAD VII)は、2019年に横浜で開催予定です。
日本の対アフリカ外交にとっての重要課題の一つは、平和構築です。日本はTICADプロセスを通じ、アフリカの平和と安定のため、2008年以降、アフリカ15か国内のPKO訓練センターが裨益(ひえき)するプロジェクトに対して約1億ドルの支援を行い、延べ56名の日本人講師を派遣し、平和構築にかかる研修・策定を支援してきました。また、南スーダンにおいても、2018年9月に「再活性化された衝突解決合意」に関係者が署名するなど、平和と安定の回復に向けた大きな進展がありました。平和の定着を同国の国民が実感し、再び衝突が繰り返されないように、国際社会が協力して、南スーダンの平和の定着を支援していくことが重要です。
南スーダンの独立以来、日本は、JICAや国際機関を通じて、インフラの整備、代替産業育成、基礎生活分野の改善、ガバナンスの向上等の分野で南スーダンの国づくりを支援してきています。一方、南スーダンで治安が悪化した2013年以降、日本は、国際社会と協力して、東アフリカの地域機構である「政府間開発機構(IGAD)」を通じて、南スーダンの平和の定着を後押ししてきています。2018年3月には、日本はIGADに3,600万ドル規模の支援を実施し、「再活性化された衝突解決合意」に関する協議の開催や、合意事項の履行のために活用されました。また、日本は、南スーダン自身の平和イニシアティブである国民対話プロセスへの支援も行っています。国民対話への支援は、公共財政管理、警察能力の強化、税関能力向上等の人材育成支援、食料援助を含めた人道支援といった支援と並んで、南スーダンにおける平和と安定の回復に大きな役割を果たしています。
このほか、2017年5月、5年以上にわたって国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)に派遣されていた自衛隊の施設部隊は活動を終了しましたが、司令部要員の派遣を通じて日本のUNMISSの活動への貢献は引き続き行われています。
●タンザニア
タザラ交差点改善計画
無償資金協力(2016年2月~2018年10月)
タンザニア最大の都市であるダルエスサラームは、同国の交通の要衝であるばかりでなく、アフリカの内陸諸国にとっても、流通の起点として重要な役割を担っています。しかし、人口増加や、経済活動の活発化による交通量の増加から、交通渋滞は年々悪化し、タンザニアおよび近隣諸国の経済活動にも影響が出ていました。
このため、日本は、無償資金協力プロジェクト「タザラ交差点改善計画」により、ダルエスサラーム市内で最も混雑の激しい2大幹線道路が交わるタザラ交差点の立体交差化を支援しました。タンザニア初の立体交差点は、3年弱の年月をかけ、日本式安全管理を導入した建設により、無事故で完成しました。
2018年9月27日、マグフリ大統領と後藤駐タンザニア日本国大使をはじめとする多くの関係者が出席して、開通式が行われました。大統領は、本式典において、この素晴らしい成果を踏まえ、さらなる立体交差点の建設を検討したいと述べました。
この立体交差点の完成により、交通渋滞は大幅に緩和され、物流が発展し、ダルエスサラームの商業都市としての価値が高まることが期待されています。また、この立体交差点は、タンザニア経済に大きく貢献するとともに、日本とタンザニアの長年の友好関係を象徴するものとして、ダルエスサラーム市内のみならず、タンザニア全国で高く評価されています。