5 欧州地域
過去に共産主義体制にあった中・東欧、旧ソ連の欧州地域の多くの国々では、民主化と自由化を達成し、現在は民主的な政権の下で市場経済に基づいた経済発展に取り組んでいます。日本は、これら地域、ひいては欧州全体の一層の安定と発展のため、また、基本的価値(人権、民主主義、市場経済、法の支配等)を共有する関係をさらに強化するため、市場経済化、経済インフラの再建、環境問題などへの取組に対する支援を行っています。
■日本の取組
西バルカン諸国注8は、1990年代に発生した紛争の影響で改革が停滞していましたが、ドナー(援助国)や国際機関などの支援および各国自身による改革の結果、復興支援を必要とする段階を卒業しました。現在は、持続的な経済発展に向けた支援が必要な段階にあります。日本は、2004年にEU(欧州連合)と共同で開催した西バルカン平和定着・経済発展閣僚会合で確認された「平和の定着」、「経済発展」、「域内協力」の3本柱を重点分野として開発協力を展開し、2018年には、安倍総理が西バルカン諸国との協力促進および社会経済改革を目的とする「西バルカン協力イニシアティブ」を発表しました。引き続き、日本は、西バルカン諸国において、特に「持続可能な経済成長の促進」を重点方針として支援しています。
旧ソ連諸国であるウクライナやモルドバは、ロシアとEUの間に位置し、地政学上重要な位置にあります。これらの国々の安定と持続的な発展は、欧州全体の安定にとって、なくてはならないものです。民主主義が根付き、市場経済を確立させるための努力を支援する必要があります。日本は、2014年以降のウクライナ情勢の悪化を受け、国別では最大規模となる約18.6億ドルの支援を表明し、保健医療分野、民主主義の回復、財政、経済基礎インフラなどの幅広い分野において、ウクライナの国内改革を後押しする支援を行うと同時に、情勢が悪化したウクライナ東部に対しては、避難民等への水・衛生分野の支援、シェルターの提供、子ども、女性、障害者および高齢者など最も脆弱(ぜいじゃく)な人々のための社会ケア機関の修復、地雷除去、住居修復等の支援を着実に実施しています。日本は、資金供与以外でも、技術協力を通じた行財政改革支援、汚職対策支援、メディア支援を含む民主化支援等を実施しています。
欧州地域内の経済発展の格差を踏まえ、日本は、EUに加盟した国々に対し、援助対象国から卒業したものとして支援を段階的に縮小させるとともに、ドナー国として欧州地域の開発途上国に対する開発協力に一層積極的に取り組むことを促していきます。
- 注8 : 西バルカン諸国:アルバニア、コソボ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア旧ユーゴスラビア共和国、モンテネグロ。