(9)資源・エネルギーへのアクセス確保
世界で電力にアクセスできない人々は約9億人以上(世界の人口の13%に相当)、特に、サブサハラ・アフリカでは、約6億人以上(世界人口の約57%に相当)に上るといわれています。また、同地域では、9億人近くの人口が調理用のエネルギーを木質燃料(木炭、薪など)に依存しており、それに伴う屋内空気汚染は、若年死亡の要因の一つにもなっています。電気やガスなどのエネルギー・サービスの欠如は、産業の発達を遅らせ、雇用機会を失わせ、貧困をより一層深めるといった問題につながります。今後、世界のエネルギー需要はアジアをはじめとする新興国や開発途上国を中心にますます増えることが予想されており、エネルギーの安定的な供給や環境への適切な配慮が欠かせません。
■日本の取組
日本は、開発途上国の持続可能な開発およびエネルギーを確保するため、近代的なエネルギー供給を可能にするサービスを提供し、産業育成のための電力の安定供給に取り組んでいます。また、省エネルギー設備や再生可能エネルギー(水力、太陽光、太陽熱、風力、地熱など)を活用した発電施設など、環境に配慮したインフラ(経済社会基盤)整備も支援しています。
世界のエネルギー情勢に大きな変化が起きていることを踏まえ、2018年7月、外務省は、河野外務大臣による政策スピーチ「進化するエネルギー外交─エネルギー転換と日本の未来」を発表しました。本スピーチにおいては、パリ協定の発効を契機として脱炭素化に向けた国際的な取組が本格化している中で、供給面および需要面双方の大きな変化を踏まえ、外務省として、世界のエネルギー情勢およびエネルギー転換に対応するエネルギー外交を進めていく旨を表明しました。
また、2018年2月に開催した「エネルギー・鉱物資源に関する在外公館戦略会議」では、外務本省関係者に加え、在外公館職員、他省庁関係者、各種機構や民間企業関係者、有識者を交え、我が国の資源の安定供給確保における課題や対策等について議論を深めました。本会議では、第一命題である我が国へのエネルギー・資源の安定供給確保、世界のエネルギー安全保障にトータルで貢献する姿勢の提示、我が国の技術力を世界市場での競争力につなげるエネルギー外交の展開、持続的な開発目標(SDGs)への貢献を含む国際機関との重層的な連携の強化等の重要性が参加者で共有され、日本のエネルギー・資源外交の一層の強化が図られました。
また日本は、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)を積極的に支援しています。EITIは、石油・ガス・鉱物資源等の開発において、資金の流れの透明性を高めるための多国間協力の枠組みです。採取企業は資源産出国政府へ支払った金額を、その政府は受け取った金額をそれぞれEITIに報告し、資金の流れを透明化します。51の資源産出国と日本を含む多数の支援国、採取企業やNGOが参加し、腐敗や紛争を予防し、成長と貧困削減につながる責任ある資源開発を促進することを目指しています。