(4)債務問題への取組
開発途上国が債務として受け入れた資金を有効に利用する限りにおいては、債務は経済成長に役立つものです。しかし、返済能力が乏しく、過剰に債務を抱える場合には、債務は途上国の持続的成長を阻害する要因となり、大きな問題となります。
債務の問題は、債務国自身が改革努力などを通じて、自ら解決しなければならない問題ですが、過大な債務が途上国の発展の足かせになってしまうことは避けなければなりません。2005年のG8グレンイーグルズ・サミット(英国)では、重債務貧困国(HIPCs)が、IMF、国際開発協会(IDA)およびアフリカ開発基金に対して抱える債務を100%削減するとの提案が合意されました(マルチ債務救済イニシアティブ(MDRI:Multilateral Debt Relief Initiative))。最貧国の債務問題に関しては、これまでに39か国が重債務貧困国に対する既存の国際的な債務救済イニシアティブをさらに拡充し、債権の100%削減などを行うこととした、拡大HIPCイニシアティブ注7の対象となっています。経済・社会改革などへの取組が一定の段階に達したという条件を満たした結果、2017年度末には、そのうち36か国で包括的な債務削減が実施されています。
また、重債務貧困国以外の低所得国や中所得国の中にも、重い債務を負っている国があり、これらの負担が中長期的な安定的発展の足かせとならないよう、適切に対応していく必要があります。2003年、パリクラブ注8において、「パリクラブの債務リストラに関する新たなアプローチ(エビアン・アプローチ)」が合意されました。エビアン・アプローチでは、重債務貧困国以外の低所得国や中所得国を対象に、従来以上に債務国の債務持続可能性に焦点を当て、各債務国の状況に見合った措置が個別に検討されます。債務の持続可能性の観点から見て、債務負担が大きく、支払い能力に問題がある国に関しては、一定の条件を満たした場合、包括的な債務救済措置がとられることになりました。
■日本の取組
円借款の供与に当たっては、日本は、被援助国の協力体制、債務返済能力および運営能力、ならびに債権保全策等を十分検討して判断を行っており、ほとんどの場合、被援助国から返済が行われていますが、例外的に、円借款を供与する時点では予想し得なかった事情によって、返済が著しく困難となる場合もあります。そのような場合、日本は、前述の拡大HIPCイニシアティブやパリクラブにおける合意等の国際的な合意に基づいて、必要最小限に限って、債務の繰延注9、免除、削減といった債務救済措置を講じています。2017年末時点で、日本は、2003年度以降、33か国に対して、総額で約1兆1,290億円の円借款債務を免除しています。なお、2016年に引き続き、2018年も円借款債務の救済実績はありませんでした。
- 注7 : 1999年のケルンサミット(ドイツ)において合意されたイニシアティブ。
- 注8 : 特定の国の公的債務の繰延に関して債権国が集まり協議する非公式グループ。フランスが議長国となり、債務累積国からの要請に基づき債権国をパリに招集して開催されてきたことから「パリクラブ」と呼ばれる。
- 注9 : 債務の繰延とは、債務救済の手段の一つであり、債務国の債務支払の負担を軽減するために、一定期間債務の返済を延期する措置。