2018年版開発協力白書 日本の国際協力

国際協力の現場から 04

国際機関で活躍する日本人職員の声
~地雷被害の根絶に向けて~

一般的に地雷対策というと対人地雷を除去する活動を思い浮かべる方も多いと思いますが、実際に市民、難民、避難民が影響を受ける危険は地雷だけでなく、紛争で使われたあらゆる種類の不発弾、また住宅やインフラ施設に仕掛けられた即席爆発物(IED)など多岐にわたり、それに対応するための活動も幅広くなってきています。これらの地雷や不発弾の除去のみならず、回避教育も重要な活動のひとつです。また仮に地雷や不発弾などの除去が完了しても、被害者への支援は不可欠であり、特に被害者に若年層が多い地域などでは長期的な支援が求められています。

スーダンのハルツーム郊外の避難民キャンプにて子どもたちに地雷回避教育を行ったときの様子(筆者中央)(写真:UNMAS)

スーダンのハルツーム郊外の避難民キャンプにて子どもたちに地雷回避教育を行ったときの様子(筆者中央)(写真:UNMAS)

地雷対策は紛争のいずれの段階でも重要な活動のひとつであり、活動の成果は平和維持活動、紛争後の復興、平和構築、開発などに貢献します。また、除去された地雷の数だけ将来の被害者を防ぐことが出来るという人道的、予防的な成果のみならず、住宅地、農地、学校、病院、浄水場などを再び使用できるようになるという社会経済的な効果も多大です。

2002年にアフガニスタンに赴任してから約16年間、これまで20か国以上の国連の地雷対策事業に関わり、この仕事を通して感じたのは、自分の仕事が様々な意味で人の命につながっている事実、現場で命を懸けて活動している人たちをサポートできる充実感、そして自分達の国の将来に対する現地の人々の想いであり、それが日々の活動のモチベーションになっています。

アフガニスタン、カブールにて地雷除去活動を視察(筆者右端)(写真:UNMAS)

アフガニスタン、カブールにて地雷除去活動を視察(筆者右端)(写真:UNMAS)

イラクでは、ISILが撤退した村の住宅に仕掛けられたIEDの中に、子供がぬいぐるみを動かすと爆発するようなひどいものもあり、これらを除去する活動をしている同僚の勇気に頭が下がるとともに、自分の娘が同じ状況に置かれたらと考えると胸が痛くなる思いがしました。

アフガニスタンに赴任中の2003年、カブール郊外で技術的にも大変難しい地雷原があり、その対応のために予算獲得の努力をしたり、現場に足を運んで報告書の作成をしたりと駆け回っていました。約10年後に再び出張で同じ場所を訪れた際、住宅が建ち並び、子供たちが走り回っている姿を見て、胸が熱くなったのを覚えています。

2018年末には、西ダルフール(スーダン)のクルブスという地域で、既存の不発弾の除去完了式典に本部を代表して参加する機会がありました。クルブスはダルフール紛争が激しかった地域のひとつで、住民に回避教育を実施しながら大量の不発弾を処理するのに1年1か月かかりましたが、この成果により約32,000人の住民と避難民の安全が確保されました。式典での住民の笑顔を見ながら、この地域ではまた紛争が起きない限り、被害者が出ることなく紛争後の復興に進んでいけるのだと思うと、微力ながら平和が作られていく過程に貢献することが出来たという達成感を感じました。

現在は、ニューヨークの国連本部の地雷対策サービス部事業管理セクションの次長として17か国での活動を統括しています。今まで以上に現場で見たり感じたりしたことを仕事に反映できればと日々思っています。

国連PKO局地雷対策サービス部(UNMAS)

プログラム管理次長 久保 拓人(くぼ たくと)

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