ODA評価年次報告書2025 | 外務省

ODA評価年次報告書2025

外務省ODA評価結果フォローアップ

2023年度提言への対応策の実施状況

2023年度の第三者評価から得られた提言に対する対応策の実施状況(2025年5月時点)には以下のとおりです。(2023年度評価報告書へのリンク)new window

タイ国別評価

提言1:新興ドナーとなる中進国支援の新しい在り方を検討する。

2024年9月に更新した「対タイ国別開発協力方針」の基本方針では引き続き、「包括的・戦略的パートナーシップに基づく現代的課題への対処および地域開発を牽引する協力の推進」を大目標に掲げている。JICAでは、タイ国際協力機構(TICA)及びタイ周辺国経済開発協力機構(NEDA)それぞれに対し、連携案件の進捗状況・今後の連携方針について定期協議を実施している。中進国となったタイが抱える課題の解決及びこの経験を活用した周辺国への支援に関しては、技術協力や第三国研修等を活用し、取組を進めている。また、タイによるボランティア派遣(Friends From Thailand)については、2022年度から累計5名を受け入れており、2024年2月から、新たに釧路市にて1名が活動している。2023年度に受け入れて北杜市に派遣した観光ボランティアの活動は、タイからの観光客誘致にもつながり、国内メディアの取材を通じて、地方自治体における外国人受け入れの関心を高めるきっかけとなった。

提言2:広報の在り方を改善する。

在タイ日本国大使館のFacebookにおいて、ODAに係るイベント情報やODAマップ等を定期的に発信している。また、2024年度には現地プレスツアーnew windowを開催し、インフルエンサーを含むプレス関係者を招き現地の大型ODA案件の視察を実施した。プレスツアー実施後に報道された件数は20件近くに及び、日本のODAの実績について効果的にタイ国民の認識を高めることができた。

提言3:第三国研修のモニタリング評価を改善する。

第三国研修にかかるテーマ別評価については、2025年度にTICAと合同で実施中。同評価で得られた内容については、TICAとも協議の上で対外的な情報発信を行う予定。

提言4:タイへの今後の開発協力の方向性:より良いガバナンス実現に向けた支援を強化する。

タイのOECD加盟に向け「公的機関の効率と透明性の向上」など、OECDやタイ外務省と議論を重ねている。加えて、TICAを始めとしたタイ政府関係者と、周辺国に対するよりよいガバナンス実現に向けた方策について検討中。2025年度からは第三国研修「メコンと南アジア諸国の投資競争力向上に向けた持続可能なビジネス環境整備」を実施予定。

バングラデシュ国別評価

提言1:低所得層がより厚く裨益し、全国民が受益可能な経済成長を加速するため、質の高い経済基盤の拡大・整備を継続するとともに、経済成長に伴う産業・雇用の高度化・多様化を支援する。

2024年8月に発足した暫定政権との間でも産業基盤強化(多角化・高付加価値化)、都市の機能強化・環境改善、社会脆弱性の克服等を重要協力分野とする方針を確認し、実施中案件のフォローに加え、新規案件の検討・形成に努めている。具体的には、貧困率が高くかつ気候変動に脆弱なハオール地域の洪水対策・生計向上を目的とした円借款(フェーズ2)の調査や、産業多角化・投資環境改善(含む経済特区のサービス向上やスタートアップ振興、産業人材育成強化)及び気候変動対策強化に向けた政策アクション達成を受けて財政支援を行う円借款の案件形成を実施。また、若手行政官等向けの日本留学プログラムにおいても、当該分野における政策立案能力の向上を意識した人選を図っている。

提言2:中央省庁におけるコミットメントとオーナーシップの強化と地方への展開の基盤強化(システムと予算の手当て)により、中央レベルでの行政能力・システムの強化という成果を全国に普及させる。

地方行政強化を目的に実施中の円借款の継続案件(フェーズ2)形成にあたり、中央政府(現暫定政権)の改革方針を郡自治体のガバナンスや制度に反映する方法について中央・地方の両行政官と定期的に議論・検討を重ねることで、中央のコミットメントとオーナーシップを引き出しつつ郡自治体の能力向上を図っている。また、検討の結果、地方自治体の包括的な行政能力向上に必要とされた支援については、新規技術協力の形成を進めている。

提言3:より積極的に女性のエンパワーメントを通じたジェンダー格差の縮小に向けた貢献ができるよう、案件形成段階でジェンダー平等の達成に貢献する方向で活動内容を精査し、モニタリングを強化する。とりわけ、雇用やガバナンス分野における女性のエンパワーメントを強化する。

全案件において従来以上にジェンダー主流化の推進を意識した計画策定を行うとともに、事業評価までの各実施段階でのジェンダー格差縮小の観点からのフィードバックを次の取組や継続案件形成にいかす対応を行っている。例えば、食品安全にかかる円借款では、施設設計・建設・実施段階等でジェンダー主流化に資する施策をまとめたアクションプランを作成した。また、実施中のマイクロ保険提供能力強化に係る技術協力では、ジェンダー視点を取り入れた調査手法によるモニタリング・評価を行い、セクター横断的なジェンダー配慮や女性の裨益割合拡大等の成果を、実施中の活動内容や後続案件の計画に反映している。その他、ジェンダーに基づく暴力対策に係る国別研修等を通じ、本邦研修への女性の参加割合の向上を図っている。

提言4:プログラムの評価の導入は有意義であり、かつ可能である。また、実際の評価にあたって、プログラムのスコープを日本の「事業展開計画」の協力プログラムに限定せず、各ドナーが参加するセクター・プログラムをとりあげることも効果的である。今後はプログラムの計画段階で分野ごとのToC(Theory of Change)を作成し、当該分野における個々の案件の位置付けを確認し、指標を策定するなど、手法の更なる開発・発展が望まれる。

「ODA評価ハンドブック」(2025年1月改訂)に、一定の前提条件を満たす場合には、対象国政府の取組や他ドナー・国際機関などの支援も含めた効果の実現過程を明らかにすることにより、対象国のセクター全体への日本のODA事業の貢献度を評価するべくプログラムの評価の実施も検討する旨記載している。
JICAは2021年度にテーマ別評価「セオリー・オブ・チェンジを用いた開発効果調査」を実施(https://www.jica.go.jp/Resource/activities/evaluation/tech_ga/after/ku57pq00001cdfnb-att/202110_01_ja.pdfnew window)。セオリー・オブ・チェンジ(ToC)に関する関係者の理解が深まるよう、本調査結果も踏まえて教材を開発し、JICA関係者向けの研修等を随時実施している。直近では専門家向け赴任前研修やPCM(プロジェクトサイクルマネジメント)全体研修でToCセッションを実施している。

エジプト国別評価

提言1:日本の比較優位分野へ継続的支援を実施すること

① 日本式教育については、エジプト日本学校(EJS)及び一般公立校において特活が持続可能な形で継続・展開されるよう、面的な数の拡大のみならず、さらなる質の向上との両立を目指し、プロジェクト・マネジメント・ユニット(PMU)を中心に運営体制の強化を図っている。

② エジプト日本科学技術大学(E-JUST)については、2025年2月に開始した「E-JUST・日本・アフリカ科学技術イノベーションネットワークプロジェクト」において、同大学と日本・アフリカ大学の学術研究ネットワーク構築を進めるべく、共同研究の促進支援等を図っている。

③ 大エジプト博物館(GEM)正式開館は 2025年11月1日とエジプト政府が決定した。これと時期を一にして、2025年第一四半期からGEM運営支援と教育活動展開に係る新たな技術協力を開始するとともに、第2四半期からは展示された遺物の維持・管理体制を強化、エジプト学・文化遺産の保存修復展示等に係る研究発信と内外の人材育成の地域拠点化を支援する技術協力を開始予定。

提言2:情報公開の在り方への工夫の必要性

日エジプト開発協力70周年においては、広報動画の作成や担当閣僚の日本への招へい、寄稿や講演といった政策発信機会を捉えて2024年一年間を通じて対外発信を行った。特にGEMの開館に向けては、2025年4月のGEM館長招へいの機会を捉え日本国内での広報に努めるとともに、在エジプト大使館やJICAのFacebookページを始めとする広報媒体を通じた広報に努め、エジプト社会からの好意的な評価について対外発信していく。また、実施中協力、特にGEMとの連携協力に係るMOUを持つE-JUSTやEJS・エジプト日本高専(EJ-KOSEN)・就学前の教育と保育の質向上プロジェクト、JICAボランティアと連携した広報活動展開も検討する。

提言3:債務持続性に関するリスク管理を引き続き行う必要性

円借款事業の検討においては、引き続き、IMF、世銀等からの情報も踏まえ、厳密な審査を行っている。また2025年4月の世銀・IMF総会において国際開発金融機関(MDBs)をはじめ幅広い関係者からエジプトのマクロ経済見通し等について情報収集を行った。

提言4:ODA以外の政府資金(OOF)を含めたオールジャパン支援による日本企業の進出環境を整えること

日本側各機関の間で緊密に意思疎通を行いつつ、エジプト側とは計画・経済開発・国際協力大臣を長とするハイレベル政策対話や投資・貿易大臣を長とするビジネス投資促進委員会を実施し、日本企業のビジネス環境改善に資する意見交換や働きかけを実施する。個別セクターとしては、技術協力を実施中のエジプト国税庁(ETA)が行っている税制改革につき、同事業の関係を活用し日本企業との対話促進に努める。

提言5:円借款・本邦技術活用条件(STEP)制度が日本企業やカウンターパートにとって使いやすいように、運用上の柔軟性を高めるべき

STEPについては、導入以降、本邦調達比率における原産地ルールを含め、不断の改善に取り組んでいる。しかしながら、STEPは通常の円借款よりも更に譲許的な条件で融資する制度であり、本邦調達比率は、資機材メーカー等幅広い分野の日本企業に裨益する条件を設定する必要がある。そのような点も考慮しつつ、STEPの更なる改善に向けて検討していく。

難民及び難民受入れ国支援の評価

提言1:日本にとってのHDPネクサス(人道・開発・平和の連携)の明確化と、より戦略性をもった支援の実施

難民を多く受け入れているウガンダの国別開発援助方針の目標にHDPネクサスの推進を含むとともに、事業展開計画にHDPネクサス推進に資する案件が含まれることをフォローしている。また、HDPネクサスのマルチ・ステークホルダー・プレッジのリード国として、HDPネクサスに係るラウンドテーブルを5回ジュネーブにて開催し、ホスト国のニーズや課題を共有するとともに効果的に支援を実施するための議論を実施。外務省及びJICA本部レベルでの情報共有も定期的に実施しているほか、国際機関連携無償等のスキームを通じた現場での国際機関との連携強化も推進している。

JICA平和構築室にて、HDPネクサスや難民支援に係る戦略を策定中。また、事業関係部や事務所との勉強会等を不定期に実施し、戦略を現場での実施に反映できるよう取り組んでいる。また、「東アフリカ・大湖地域と人の移動と難民に係る情報収集・確認調査」を2024年に開始し、難民出身国における「平和(P)」につながる帰還に向けた環境整備も含めて、当該地域における難民問題の課題解決に向けた方策を整理しており、2025年半ばに結果を取りまとめる予定。

提言2:HDPネクサスの強化に向けた、多様なアクター間の連携、及びそのための体制整備

外務省及びJICA本部のHDPネクサス担当者を中心に、グローバル難民フォーラム(GRF)のプレッジ実施状況フォローアップ等において担当部署や難民を多く受け入れている国に所在する在外公館及びJICAの担当者と緊密に連携している。
JICAは難民・避難民支援やHDPネクサス推進のための政策アドバイザーを新たに2025年5月にケニア、バングラデシュに派遣し、現場レベルで多様なアクターとの連携を強化している。また、ウガンダには2021年からアドバイザーの派遣を継続中。

提言3:迅速性、柔軟性ある制度運用

柔軟な拠出にかかる取組として、日本は国際連合中央緊急対応基金(CERF)や国際連合国別プール基金(CBPF)への拠出を継続している。JICAは難民・避難民対応に向けたJICA内担当者向けのガイダンス・ノートを策定し、迅速かつ効果的な実施に向けた取組を推進している。

提言4:生計向上支援の重視

バングラデシュにおいて、コックスバザール県の避難民キャンプとバシャンチャール島の避難民、ホストコミュニティを対象に、生計手段確保に向けた職業訓練を含む包括的な支援を国際機関連携無償資金協力を通じて実施。

JICAは、引き続きアフリカの農業分野での協力において、難民を裨益対象者に含めた協力を展開中。今後は、より民間企業も巻き込む形で、難民の経済包摂を推進していく方針。ウガンダでは、技術協力「持続的なコメ振興プロジェクト」を2024年に開始し、難民及びホストコミュニティの生計向上への寄与が期待されている。

提言5:日本の難民支援の全体像、特に国際機関を通じた支援の「見える化」

UNHCR日本事務所と外務省の共催により、日本グローバル難民フォーラム・ネットワーク会合を2回開催し、国際機関、NGO、民間企業・団体等との連携を深めた。

JICAは、日本のNGOとのHDPネクサスに係る意見交換会を不定期に実施しているほか、関西万博におけるビジネスアイデアコンテストの実施を企画するなど、民間企業との連携も強化中。

提言6:難民支援・HDPネクサスに関する人材育成と登用・配置

難民支援を担当するポストの人材募集の際には、JICAのウェブサイト等を通じて広く募集を行っている。

JICAは、国連ボランティア(UNV)における難民・避難民支援分野の海外協力隊の帰国隊員派遣を引き続き強化している。

提言7:日本国内の難民受入れの継続・強化

日本政府の方針の下で、JICAは、今後もシリア平和への架け橋・人材育成プログラム(JISR)を通じたシリア人留学生の受け入れに関し、丁寧な支援を行っていく。

「平成26年度対ヨルダン無償資金協力(地方産機材ノン・プロジェクト無償資金協力)」の評価

提言1:引渡し式の実施と効果的な広報活動

令和6年8月に令和2年度経済社会開発計画案件の引渡し式を実施し、引渡し式実施後にはプレスリリース、ソーシャルメディアに式の様子を投稿しており、広報効果の最大化に努めた。式典に関する記事は国営ペトラ通信、アル・ガド紙、ヨルダン・タイムズ等主要メディアに掲載された。

提言2:文書記録の保存

案件形成過程において、内容の大幅な変更等が生じた場合は、記録を残すように努めている。在外公館においては、事業内容の大幅な変更や決定事項が生じた場合を含め、後の案件の教訓となる文書や先方政府とのやり取り等を保存・記録することに取り組んでいる。

 

「平成28年度対ヨルダン無償資金協力(経済社会開発計画)」の評価

提言1:維持・保守管理費の支援

案件形成過程において、相手国のオーナーシップの確保を促すために、実施機関に対して、維持管理費用の確保を含めた体制構築に努めるよう促している。

提言2:調達手続実施要領(ガイドライン)の見直し

令和6年12月に無償資金協力(調達代理方式)に係る調達手続実施要領を公表した。

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