ODA評価年次報告書2025 | 外務省

ODA評価年次報告書2025

外務省ODA評価結果フォローアップ

2024年度提言への対応策

2024年度に実施した6件のODA評価における提言への対応策は以下のとおりです。

「日ASEAN連結性イニシアティブ」を中心としたASEAN連結性支援の地域別評価

提言1:複数国にまたがるインフラ整備の支援の計画および知的支援

日本はこれまでにも東南アジア地域において複数国に裨益する交通輸送インフラ案件を実施してきている。現在は、例えばラオスにおいては、同国とタイ・ベトナムを結ぶ国道9号線を中心とした道路・橋梁維持管理やビエンチャン国際空港整備や、将来的な地域への裨益も念頭にグリッドコード整備及び系統運用体制強化支援を実施している。このような支援を通じた地域の連結性強化は、地域の更なる経済発展のほか、現地に進出する日本企業の活動基盤強化を含め日本の国益にも資するものであり、かかる支援を継続していく。また、地域における物品の取引を円滑化し、もって地域の経済活性化につなげていくとの観点から通関分野での支援は重要と考えており、現在実施中の「メコン地域連結性強化のための税関効率性強化プロジェクト」のほか、被援助国のニーズも踏まえながら今後の支援について検討していく。

提言2:国際輸送ネットワークの制度面の改善支援

開発途上国の連結性強化に当たっては、インフラ整備と併せて、日本の知見・経験を活かした制度整備支援を実施し、各国から「信頼されるパートナー」としての評価を得てきた。特に「標準化・共通化」に係る支援については、例えばベトナムにおいて技術協力「建設事業管理制度構築能力向上プロジェクト」等を実施し、同国における土木工事分野を対象とした積算指針の作成や標準安全管理計画書の省令への反映等が行われた。日本の「信頼されるパートナー」という評価を更に確固なものにする観点からも、今後とも関係国の制度の標準化・共通化に資する支援を検討していく。

提言3:ハードとソフト(人材育成)の組み合わせ支援

ASEAN包括的連結性イニシアティブ等の政策も踏まえながら、有償資金協力や無償資金協力によるインフラ整備(ハード面)に、課題別研修を含む技術協力や留学生を受入れる無償資金協力を始めとする人材育成への支援を組み合わせた協力を継続していく。長期的な高度人材育成支援については本邦大学院等における長期研修やJICA開発大学院連携等を実施していく。

提言4:協働パートナーとして共通の課題への取組

我が国は、2023年に改定された開発協力大綱において重点政策として掲げる気候変動、防災、デジタル等の分野における課題について、日本の知見・技術を活かしながらASEANに対して支援を行っている。また、日本やASEAN各国が直面する共通課題について、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアといった国との協働による第三国支援も実施している。さらに、かかる課題に対応するためのASEANの組織整備を支える観点からは、例えば感染症分野においては、現在、技術協力を通じてASEAN感染症対策センターの設立と能力強化を実施している。また、ASEAN事務局やメコン河委員会と連携して防災に資する広域案件を実施している。こういった支援を通じて、ASEAN各国と協働しながら、地域の共通の課題の解決に取り組んでいく。

提言5:ASEANにとってわかりやすい日本の支援の整理・説明・広報

ASEANに対する連結性支援に当たっては、ASEAN側との双方向のコミュニケーションを密にとりながら進めて行く。それを通じ、ASEANが策定する各種の政策文書(MPAC2025やその後継となるべき文書を含む。)を始めASEAN側の考え方やニーズをしっかりと把握するとともに、当該戦略文書にあわせた形で日本側の支援に関する考え方をしっかりと説明し、相互理解を醸成するよう努める。また、人材交流・育成等を通じたネットワークの強化・拡大等によりASEAN各国との相互理解を促進し、効果的積極的な対外発信・広報にも努める。

提言6:ASEANの一体性・中心性の支持・尊重

ASEANに対する支援の実施に当たっては、引き続き、ASEANの一体性や中心性といった原則や基本的な立場、ASEAN側のニーズやオーナーシップを尊重しながら進めていく。

提言7:「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)で普遍的価値を示して国際社会をリード(法の支配や自由貿易)

FOIPとASEAN各国首脳が採択した「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」が本質的な原則を共有していることを念頭に、2023年に打ち出したFOIPのための新たなプランに掲げる各種の取組を含め、海洋協力、連結性、SDGs、経済等の分野においてFOIPの実現に資するODA支援を推進していく。とりわけ、ASEAN包括的連結性イニシアティブは、上記プランにおいて第三の柱として掲げる「多層的な連結性」に沿った取組であると同時に日ASEAN・AOIP協力の重点分野でもあるところ、その点も踏まえて継続・強化していく。

ネパール国別評価

提言1:ネパールの第16次計画と同国のニーズに沿った援助政策の策定と重点3分野への支援継続

次期対ネパール国別開発協力方針の改定が2026年に予定されていることから、ネパールの開発に関する第16次五か年計画(2025年~2029年)の重点目標やネパール側のニーズを踏まえ、現国別開発協力方針の3つの重点分野に対する支援継続の必要性について、外務省、JICA、現地ODAタスクフォースで改めて検討し、効果的な支援方針策定を進める。

提言2:プログラム内のODAスキーム間や多様な主体(パートナー)との連携強化及びナレッジマネジメントの強化

ネパールでのODA事業実施にあたっては、引き続き、事業展開計画の各協力プログラム内でのスキーム間連携や、他ドナー等との連携を強化し、開発効果の最大化を目指す。また、開発協力にかかる二国間政策協議や現地ODAタスクフォースなどの場も活用し、日本側、ネパール側の事業関係者間での知見の共有に努め、より戦略的な事業実施の在り方を不断に検討していく。

提言3:戦略的な人材育成・能力強化と知日派・親日派及び実施機関の積極的な参加促進

ODA実施機関における戦略的な人材育成・能力強化に向けて、過去の優良事例やネパール側の支援ニーズを考慮しながら、日本の知見や強みを活かした協力を継続する。また、帰国研修員同窓会等の取組を通じて、人材育成奨学計画(JDS)やJICA長期研修生など知日派・親日派によるODA事業への積極的な参画を呼びかけ、効果的な事業実施・フォローアップを行い、一層の親日感醸成を図る。

新型コロナウィルス感染症対策支援の評価

提言1:緊急時にも対応できる開発途上国側の保健医療人材の育成を優先課題とする。

保健医療課題別事業戦略(JICAグローバルアジェンダ)のもと、「感染症対策・検査拠点強化クラスター事業戦略」においてサーベイランス体制強化のための人材育成に取り組んでいる。さらに2025年4月に策定した「保健医療サービス提供強化クラスター事業戦略」において、強靱・公平・持続可能なUHCの達成に向けた保健医療サービスの質と量の向上のための戦略として、保健人材育成を重点的に取り組む分野の一つと位置付けており、これらの戦略のもと各国への協力を進めていく。各国での事業実施にあたってはこれまでも他ドナーとの情報共有や連携を進めてきており、引き続き必要に応じた連携も含めて効果的な協力に努める。

提言2:非常時に備える平時の情報収集体制を整える。

在外公館において、平時から現地保健当局とのつながりを築き、現地ベースでの情報収集が行える体制作りを行う。

パンデミックを経て得られた知見を次の非常時に組織として有効活用するとの観点から、情報共有の方法を検討する。
JICAは実施中の技術協力プロジェクトや派遣中の個別専門家、JICA事務所の現地職員のネットワーク等も活用し、情報収集が行える体制づくりに努めており、引き続き強化する。ただし長年の協力と信頼関係に基づき相手国政府や協力機関等から入手し得た現地情報の扱いについては配慮が求められることに留意する。また、新型コロナパンデミックの際の実務における知見の組織内での共有方法について検討する。

提言3:保健医療分野における戦略的なパートナーシップを構築する。

ワクチンや治療薬、診断機器の開発と生産についてはODAの範囲を超えて研究開発機関や民間セクターの主体性とそれに基づく連携が重要となる。幅広い関係者とのコミュニケーションを図る中で、ODAを活用した共同研究にとどまらず、両国の研究機関同士のネットワーク強化や両国の民間企業も含めた情報交換や対話を促進できるような機会の創出に努める。

提言4:地域機関(アフリカCDCやASEAN感染症対策センター(ACPHEED))との協力を推進し、能力強化を図る。

関係省庁と連携し、ASEAN感染症対策センターに対しては専門家派遣を開始しており、技術協力を含めた支援を進めていく。アフリカCDCに対してはTICAD9等の機会を通じて日本の関係機関とも連携を図るなどして関係を強化していく。また、アフリカCDCとのコミュニケーションを通じて、さらなる能力強化支援を含めた今後の協力及び連携の可能性について検討する。

提言5:量よりもタイミングに重きを置き、機を逸しない協力が可能となるよう制度改善する。

ロジスティックスの乱れによる遅延はODAの制度改善で対応可能な範囲に留まるものではない。その上で、外務省実施の無償資金協力では、小規模事業において機材の現地調達を可能とする方式(草の根方式)が既に運用されている。個別の状況を踏まえ、調達機材や事業規模によって最適な方式を選択しながら、適切に対応していく(なお、消耗品の購入は、事業効果の確認が困難であるため行わない。)。

提言6:現地職員のさらなる活用を推進する。

多くの国で現地職員が特定のセクターを長く担当し、その分野の専門的知見や先方政府のカウンターパートとの人的ネットワークを構築してきている。現地職員向けの研修やセクターに関する知見の共有等を通じ、現地職員の能力強化を目指すとともに新規案件形成や実施段階の事業促進などに積極的に能力発揮できるよう努める。

提言7:国際機関との連携において、非常時に柔軟な対応が取れるよう手続を簡略化する。

緊急無償資金協力においては、ODA予算執行にかかる国民への説明責任という観点も考慮しつつ、緊急時において迅速な支援が可能となるよう、関係者間で引き続き努力していく。

提言8:国際機関との連携においては活動と成果をモニタリングし、日本の支援であることが明確となるよう広報を行う。

国際機関と連携した緊急無償資金協力について、活動のモニタリングをより強化できるよう取り組む。広報については、当時はコロナ禍であり平時よりも制約があったという状況を鑑みつつ、今後も効果的な広報に取り組んでいく。

「平成30年度対ジブチ無償資金協力(経済社会開発計画)」の評価

提言1:本事業のフォローアップにおけるJICAとの協力・連携

本事業完工後も事業実施機関であるインフラ設備省道路局(以下、ADR)に対し、JICAによる技術協力や研修事業を通じた支援を実施しており、大使館はJICAジブチ事務所と連携しながら、ADRによるジブチ‐アディス回廊の整備状況と本事業の状況について情報収集に努める。

提言2:事業効果の持続性確保のためのモニタリング(豪雨被害箇所への対策)

豪雨によるカルバート等への被害に対するADRによる対策と維持管理体制を継続して確認する。

提言3:他ドナーとの密接な協議、連携の強化

世界銀行が2024年12月から定期的に開催しているドナー同士の意見交換の場を活用し、ジブチ-アディス回廊に関する情報をドナー間に共有する。

提言4:案件形成にあたっての広域的な視点の重要性

ジブチの主要道路の維持管理に関する技術支援や、現在実施中のパルマレ道路橋梁建設計画による都市交通の改善により、東アフリカ地域の連結性強化に寄与しているほか、運輸交通以外の分野においても、保健セクターを始めとした広域案件の形成・実施を行っており、引き続き近隣国の動向を注視しながら、新たな案件の検討を進めていく。

提言5:より効果的な広報の推進

2024年にインフラ分野の支援例として同案件を紹介する広報動画new windowを作成し、ホームページ及びソーシャルメディアにて公開しており、引き続き外務省・JICA・現地ODAタスクフォースが協力しながら、ホームページやソーシャルメディアを通じ、ジブチにおけるODA事業に関する広報に努める。

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