外務省ODA評価結果フォローアップ
2022年度提言への対応策の実施状況
2022年度の第三者評価から得られた提言に対する対応策の実施状況(2024年5月時点)は以下のとおりです。(2022年度評価報告書へのリンク)
ラオス国別評価
提言1:日本の援助事業の成果を外交力として活用するための広報の強化
大使館・JICAラオス事務所からのホームページやソーシャルメディアにおける発信に加え、新聞・ラジオといった現地メディアや、現地メディアの持つソーシャルメディアが引き続き有効であるが、ラオスの現地メディアは公的媒体であり、バランスよく取材・掲載すべく調整が行われていると見受けられる。そのため、掲載頻度を増やせるよう引き続き積極的に機会を追求するだけでなく、大使館及びJICA事務所においては、経済協力関係の行事には可能な限り日本側政府高官の出席を調整するとともに、大使及び大使館員・職員が挨拶の際にラオス語で直接語りかけるなど、行事参加者やメディア視聴者等にインパクトのある、より国民に受け入れ易い広報となるよう、質の向上に向けて工夫しながら取り組んでいる。予算の制約があるが、評価結果を参考にしつつ、一層効果的な広報を検討し取り組んでいく。
新たな現地広報活動には予算的な制約がある状況であるが、他方で実施中の経済協力案件(不発弾除去支援)で訪日研修を行う際に、日本のテクノロジーの導入をはじめとした取組について国際開発ジャーナルに記事にしてもらうなど、現地から日本国内における広報についても働きかけを行った。
外務省においては、ラオスに限らずこうした広報活動の手段としてプレスツアーや動画、バナー等作成スキームを有しているが、今後とも国内外における広報活動のさらなる充実に向けて検討していく。
また、JICAによる国内広報については、事業の節目での広報に加え、事業概要のみならず、インタビュー等を通じて事業に従事する「人」や背景を含めたストーリーを伝えるよう留意した構成としている。また、2025年が日・ラオス外交樹立70周年であるため、この機会を捉え、JICA海外協力隊の活動を含め、これまでの事業と事業の効果が伝わるよう、Webページやソーシャルメディアでの投稿、また、セミナー等を有機的に組み合わせた広報を行う予定。
提言2:財政安定化に向けた知的支援の強化
財務省に対しては債務管理に関する助言を行う債務管理アドバイザーを派遣しているほか、歳入向上のための税務行政能力向上の助言を行う専門家を派遣し、計画投資省に対しては公共投資管理を強化するための技術協力を継続している。
ガバナンス及びマクロ経済に関するRTP(Round Table Process)においては引き続きメンバーとして参画しているほか、全体の開発の方向性を計画投資大臣の下で各ドナーとともに協議するRTIM(Round Table Implementation Meeting)においても積極的な関与を続けている。例えば、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)をはじめ他ドナーが一様に、たばこ・アルコール・贅沢品に課する税率アップや、付加価値税(VAT)の税率アップなどを提案する中、我が国からはこれらの点も十分に重要と理解しつつも、他ドナーとは異なる側面から、公共投資管理(非効率な支出削減、優先度付けした歳出)の重要性を提起した。今後ともJICAを通じた財政安定化にかかる協力を実施予定であり、同協力にて派遣される専門家等の現地業務を通じた知見や見解を踏まえて、大使館及びJICAラオス事務所から継続的にRTPに参画をしていく予定。債務管理アドバイザーを中心に、JICAラオス事務所においても世界銀行、ADB、IMFやその他機関と個別に協議を行っており、同アドバイザーの活動の他、歳入面で財務や税関分野への協力を軸に各ドナーとの協議を行っている。引き続き他援助機関と協力・連携して財政安定化に向けた支援を強化する。
他方で、RTPにおけるドナー会合の既存の枠組みと、ガバナンスやマクロ経済にかかるセクターワーキンググループ共同議長の取組を尊重しつつ、窓口役を新たに買って出るのではなく、メンバーとして積極的に役割を果たすこととしたい。(日本は保健、インフラ等他のセクターWGにおいて調整役を担っている。)
提言3:中国の援助との実質的な相乗効果を戦略的に追求
2024年3月に公開したJICA国別分析ペーパー(JCAP)の策定においては、ラオスの開発状況、ADB等の主要ドナーの開発動向、これまでの我が国の取組を踏まえて、協力の方向性について分析を行った。JCAPの文書は以下に公開している。
https://www.jica.go.jp/overseas/laos/__icsFiles/afieldfile/2024/09/24/jcap_la.pdf
今後検討する次期国別開発協力方針においても、引き続き、この点について取扱いを考慮していく予定。
タジキスタン国別評価
提言1:国際機関連携無償案件におけるモニタリングの強化
在タジキスタン大使館及びJICAタジキスタン事務所は実施中及び実施予定の国際機関連携案件の現状を整理した。現在実施中の案件については、国際機関から定期的に進捗状況にかかる報告を受けており、特段問題は発生していない。また、近年終了した大使館実施案件で、残余金があったものについては、外務省の担当課と協力し、手続きを完了した(平成27年度「ハトロン州国境安全強化計画(国連連携/UNODC実施)」、平成28年度「災害リスク軽減及び対応能力強化計画(UNDP連携)」、令和3年度「気候に起因する災害への自然を基盤にした解決策を用いたコミュニティの回復力の強化(UNDP連携)」)。さらには、これまで実施した大使館及びJICAの国境管理案件が多数あり混乱することがあったため、改修した施設等のマッピングを行った。
国際機関には、アウトカム・インパクトを意識した報告をするよう、随時伝えており、タジキスタンで実施されている国際機関連携無償案件については、四半期報告やステアリングコミッティでの公式な意見交換の他に、担当ベースでは情報共有を通じて案件監理に注意を払い、課題や問題意識の共有を図っている。
提言2:保健分野における日本の案件と保健システム改革との相互補完性
JICAタジキスタン事務所は、保健社会保護省へ定期的に実施中案件の進捗を確認するなど緊密なモニタリングを行うことで、円滑な案件実施に不可欠な信頼関係の維持を図っている。
また、JICAタジキスタン事務所は、月例ドナー会合やドナー開催のセミナーに積極的に参加し、JICA案件と戦略についてドナーへの情報提供を図っている。特に、プライマリーヘルスケア(PHC)分野には世界銀行、WHO、USAID等複数ドナーが参画しており、JICAは「PHCの質の改善プロジェクト」の実施にあたり、他ドナーと意見交換し、支援対象施設を調整するなど等、ドナー全体で政府の保健システム改革に貢献するよう連携している。
トルコ国別評価
提言1:防災関連協力の継続
復旧・復興に向けた協力として、(1)がれき処理や、医療機材・重機等の供与を目的とする総額50億円の無償資金協力の実施(うち38億円は実施に向けて準備中。)、(2)被災地の復旧・復興を支援するための800億円の円借款の供与、(3)これら資金協力と連携した、(ア)復興計画の策定支援、(イ)公共建築物の耐震補強技術支援、(ウ)がれき処理を含む震災廃棄物の管理能力強化支援など、我が国の知見を活かした技術協力を実施。
提言2:気候変動対策関連の協力の強化
製鉄セクターの温室効果ガス削減やエネルギー効率向上に向けた技術協力(専門家派遣)を実施予定(事業実施期間:2024年4月~2025年10月)。また、廃棄物管理技術分野の国別研修を2024年度から2025年度に実施予定。
提言3:人的交流(本邦研修)の促進
技術協力による本邦研修と帰国研修員同窓会によるセミナー等の活動を引き続き実施。その他、技術協力の実施機関である自治体連合を通じ、2023年2月トルコ・シリア震災の被災地の市長を含む訪問団の受け入れを2023年7月に実施し、阪神淡路大震災の経験を共有した。関西センターからの防災分野研修のフォローアップ調査により帰国研修員とのネットワークの維持にも努めた。
提言4:トルコとの三角協力プログラムの連携拡大・促進
2023年2月にアゼルバイジャンを対象に下水道分野の第三国研修を実施(2024年度も継続実施予定)。その他、2024年秋、トルコ国際協力調整庁(TIKA)と連携し、アフガニスタン災害管理庁の行政官をトルコに招き、防災分野に係る第三国研修を実施予定。
提言5:現地での広報活動の強化
大使館員のテレビでの発言、交換公文の署名式、大使のODA案件の実施後サイト訪問など各種ODA案件の節目にソーシャルメディアを活用した広報を実施しているほか、2023年2月に発生したトルコ南東部地震に係る日本の支援をまとめた動画を作成し、震災1周年を契機にソーシャルメディアに投稿するなど、広報活動を継続・強化している。また、本年2024年は日トルコ外交関係樹立100周年であり、これまでのODAでの取組の理解を促す視察ツアー(プレスツアー)を実施予定。
提言6:開発協力方針の改定時期の再考
2023年11月にトルコの第12次開発計画が公表・施行されたことを踏まえ、2025年度に対トルコ共和国国別開発協力方針の改定を予定。
提言7:JICA現地事務所の専門性強化に向けた方針の検討
JICA本部インフラ技術業務部調達監理課の国際協力専門員の出張等、専門部署の確認等を経ながら円借款の調達の手続き等、専門性の高い分野の手続きを実施。また、ナショナルスタッフ(現地職員)の本邦出張の機会を捉えた研修やオンラインによる研修を実施。加えて、これらについてトルコ側にも周知しつつ、円滑なコミュニケーションを継続している。
平成28年度対キューバ無償資金協力「経済社会開発計画」の評価及び
平成29年度対キューバ無償資金協力「経済社会開発計画」の評価
提言1:交換部品の調達による機材の継続的な運用
キューバ政府に対しては、交換部品の調達に対して優先的な外貨配分をするよう、日本側から政府高官による働きかけを行っている。
キューバ政府における部品の調達の制約に鑑み、本事業の継続的な効果発現のために実施可能な方策について引き続き検討する。
提言2:廃棄物減量と新最終処分場の確保についての周辺国の経験を踏まえた検討
キューバ政府が課題別研修等を通じて得た同分野に係る知見を最大限活用するよう、日本側から政府高官による働きかけを行っている。
また、既に近隣諸国等においてJICAが実施中/実施済の廃棄物管理能力向上にかかる技術協力※によって得た知見・経験をキューバで活用できるための方策を検討する。
※ロールモデルとなり得るプロジェクト
・カリブ地域海洋プラスチックごみ対策アドバイザー業務(2021-2024)
・エルサルバドル国地方自治体廃棄物総合管理プロジェクト(2005-2009)
・スリランカ国西部州における廃棄物管理計画(マスタープラン)策定支援プロジェクト(2019-2023)
提言3:キューバの国際収支をめぐる状況の改善に資する支援の検討
キューバの経済改革の重要な柱の一つである中小零細企業振興政策に対して、政策立案面での日本の知見、経験を共有する技術協力案件を進めている。
キューバの債務返済状況を注視しつつ、キューバの国際収支状況の改善を図る包括的な支援として何ができるかを引き続き検討する。