ODA評価年次報告書2024 | 外務省

ODA評価年次報告書2024

外務省ODA評価結果フォローアップ

2023年度提言への対応策

2023年度に実施した6件のODA評価における提言への対応策は以下のとおりです。

タイ国別評価

提言1:新興ドナーとなる中進国支援の新しい在り方を検討する。

タイ周辺国の社会課題解決に対し、タイとのこれまでの協力関係・経験を活かした支援をタイを介して行うことで、新興ドナーとしてのタイを後押しする。また、タイの外務省(TICA)やタイ周辺諸国経済開発協力機構(NEDA)との協働的な取組や、これらの機関の能力強化に貢献するような支援の在り方を検討する。

他方で、中進国となったタイが抱える少子高齢化、産業の高付加価値化、都市と地方の格差是正については、引き続き解決に向けて取り組み、この経験を周辺国への支援にも活用する。また、タイによるボランティア派遣の受入れ等を通じて、日本国内の課題解決にも還元する。

提言2:広報の在り方を改善する。

外務省・JICA・現地ODAタスクフォースが協力しながら、現地メディアを対象としたプレスツアーの実施、ウェブページやソーシャルメディア(Facebook、動画配信等)を通じた広報にこれまでも努めているところであるが、効果的に日本の「顔が見える」広報の在り方について更に検討する。

また、多くの人が知り、興味を持つ効果的な広報をしていくために、発信者の選定についてインフルエンサーや社会的地位の高い人物に依頼するなどの工夫をする。現地のメディアとも協力しながら、日本だけでなく、現地での広報に努める。

提言3:第三国研修のモニタリング評価を改善する。

今回の提言を踏まえ、タイとの間での第三国研修にかかるテーマ別評価の実施を検討中。これらの取組等を通じた情報発信に努める。

提言4:タイへの今後の開発協力の方向性:より良いガバナンス実現に向けた支援を強化する。

タイにおいては、所得水準のみにとらわれず、地域全体の支援にも貢献する観点から、ガバナンス強化に資する公務員向けの研修を継続・強化する。

また、タイだけではなくメコン地域のより良いガバナンス実現に向け、タイや周辺国と協力しながら連携案件を検討する。他方で、タイや周辺国側の意向をしっかりと踏まえ、対等なパ-トナーとしての協力関係となるよう十分に留意する。

バングラデシュ国別評価

提言1:低所得層がより厚く裨益し、全国民が受益可能な経済成長を加速するため、質の高い経済基盤の拡大・整備を継続するとともに、経済成長に伴う産業・雇用の高度化・多様化を支援する。

低所得層が裨益する形での全体的な経済成長の推進を念頭に、対バングラデシュ国別開発協力方針の重点分野に産業基盤強化(多角化・高付加価値化)、都市の機能強化・環境改善、社会脆弱性の克服等を盛り込むことを検討し、これらに資する支援策は各協力プログラムの中で、着実な支援の実行を推進していく。

提言2:中央省庁におけるコミットメントとオーナーシップの強化と地方への展開の基盤強化(システムと予算の手当て)により、中央レベルでの行政能力・システムの強化という成果を全国に普及させる。

ガバナンス強化と行政手続きの透明性・効率性等向上のため、中央政府の能力強化を含めた地方自治体の行政能力強化等の支援を行っている中、右提言内容も踏まえ、効果的な支援を展開する。

提言3:より積極的に女性のエンパワーメントを通じたジェンダー格差の縮小に向けた貢献ができるよう、案件形成段階でジェンダー平等の達成に貢献する方向で活動内容を精査し、モニタリングを強化する。とりわけ、雇用やガバナンス分野における女性のエンパワーメントを強化する。

ジェンダー格差の縮小を含めジェンダー主流化の推進は分野横断的な取組として推進する。基本的には、事業のすべての段階(計画、実施、モニタリング・評価)で、ジェンダー主流化の視点を取り入れるべく検討する。また、過去の協力アセットの活用、分野横断課題に資する案件発掘等を積極的に推進していく。

提言4:プログラムの評価の導入は有意義であり、かつ可能である。また、実際の評価にあたって、プログラムのスコープを日本の「事業展開計画」の協力プログラムに限定せず、各ドナーが参加するセクター・プログラムをとりあげることも効果的である。今後はプログラムの計画段階で分野ごとのToC (Theory of Change)を作成し、当該分野における個々の案件の位置付けを確認し、指標を策定するなど、手法の更なる開発・発展が望まれる。

外務省「ODA評価ハンドブック」において、本件バングラデシュ国別評価におけるプログラムの評価の事例を記載し、今後の外務省が実施するODA評価(第三者評価)において、評価可能かつ有意義な場合には、プログラムの評価の実施も推奨する。また、プログラムの評価のツールとして提案のあったセオリーオブチェンジ(TOC)に関する関係者の理解が深まるよう、教材や研修の検討等を通じた評価手法の更なる開発・発展に努める。

エジプト国別評価

提言1:日本の比較優位分野へ継続的支援を実施すること

これまでの資機材供与、施設建設等のハード面の協力に加え、今後は運営・維持管理への関与、制度構築や人材育成を含めたソフト面での協力展開を検討する。また、共創の中で、新たに生じた社会的な価値や解決策も活用しつつ、十分な開発効果が得られるよう、引き続き日本の知見や強みを活かした協力実施を追求する。

具体的には、①日本式教育について、EJS(エジプト日本学校)及びエジプト一般校における「特活」の持続可能な形での更なる展開を支えるため、エジプト側の運営体制と人材育成への支援を通じて、「数」と「質」の両面での特活教育の充実を図る、②エジプトで一番の大学としての地位を築いたE-JUST(エジプト日本科学技術大学)を、アフリカ全体の科学技術のセンター・オブ・エクセレンス(Center of Excellence)として発展させるべく、科学技術イノベーション分野における日・アフリカ間の学術ネットワークの強化支援を図る、③大エジプト博物館(GEM)の開館後も、運営面と学術・遺跡修復の両面でのGEMへの支援を通じ、GEMが文化遺産・観光の拠点として円滑かつ持続的な運営を行われることを後押しし、また、遺跡修復にかかる知見の蓄積を第三国でも生かせるような支援の検討を行う。

提言2:情報公開の在り方への工夫の必要性

外務省及びJICAのODAホームページやソーシャルメディア等を活用し、エジプトの円借款・無償資金協力・技術協力など、複数のスキーム間の案件の相互のつながりを意識し、一般国民にわかりやすい発信・広報に努める。なお、日エジプト開発協力70周年(2024年)や今後見込まれる大エジプト博物館(GEM)の開館等、不断に機会を捉え、日エジプト開発協力の幅広い支援内容と併せて、エジプト国民及び日本国民への裨益、日本の開発協力に対する現地での好意的な評価などの諸点も、積極的に発信していく。

提言3:債務持続性に関するリスク管理を引き続き行う必要性

円借款やOOF(ODA以外の政府資金)の供与の検討においては、IMF等によるエジプトの債務持続性の評価を含むエジプトのマクロ経済見通しや、現地大使館及びJICAからのエジプト国内の情報も勘案しつつ、引き続き日本政府(財務省、経済産業省、外務省)で連携の上、厳密な審査を実施する。

提言4:OOFを含めたオールジャパン支援による日本企業の進出環境を整えること

現地日本企業やエジプト政府関係者、他国際ドナー等からの情報を引き続き活用しつつ、日本企業の進出の障害となるビジネス環境・制度改善の支援や、民間セクター開発に求められる支援のあり方をオールジャパンで検討する。

具体的には、今後も在エジプト日本大使館、JICA、JBIC、NEXI、JETRO、現地日本商工会(JBA)などを交え、エジプト政府(投資庁、計画・経済開発・国際協力省)との大臣・長官等との協議を定期的に実施し、引き続き投資環境整備の取組促進を図る。日本側関係機関間の連携をよりきめ細かく行い、日本企業のニーズの吸い上げに努め、ODAやOOFなどの資金的協力の機会を活かし、日本企業にとっての投資環境改善に結びつけられるよう、働きかけに工夫する。

提言5:円借款・本邦技術活用条件(STEP)制度が日本企業やカウンターパートにとって使いやすいように、運用上の柔軟性を高めるべき

我が国企業の優れた技術やノウハウを活用するという制度趣旨を踏まえつつ、更なる制度改善に向けていかなる対応が可能か検討する。

難民及び難民受入れ国支援の評価

提言1:日本にとってのHDPネクサス(人道・開発・平和の連携)の明確化と、より戦略性をもった支援の実施

今後、人道支援方針を改定する際には、日本が取り組むHDPネクサスの方向性をより明確化する。また、難民を多く受け入れている国の国別開発協力方針が見直される際には、HDPネクサスを念頭においた目標等を含めることが可能か検討し、戦略的に望ましいと判断される場合には含める。改訂された国別開発協力方針にHDPネクサスが含まれる場合には、事業展開計画にHDPネクサスを念頭においた案件があるかフォローするとともに、HDPネクサスのマルチ・ステークホルダー・プレッジに参画している政府や機関に対して働きかけを行う。これらも踏まえ、引き続き、HDPネクサスを意識した国際機関への拠出を検討する。

JICAにおいては、平和構築室がHDPネクサスの規範作りや支援戦略の策定(例:KAERUモデルの深化や普及)をリードし、事業関係部や事務所との対話を強化し、現場での事業計画策定に繋げていく。本部レベルでは外務省緊急・人道支援課との意見交換や情報共有も定期的に行い、現場においてはODAタスクフォースを活性化し、国際機関への拠出とJICA事業が相乗効果を出せる工夫を行っていく。なお、「平和(P)」については、今後、JICAにおける基礎調査などを通じ、難民出身国での事業と難民受入国での事業形成を戦略的に行うための方策を検討する予定。

提言2:HDPネクサスの強化に向けた、多様なアクター間の連携、及びそのための体制整備

外務省とJICA本部には難民やHDPネクサスを扱う部署が複数にまたがることから、関係者間で担当者を改めて認知することにより、多様なアクター間の連携やそのための体制整備を行う。また、第三国から難民を多く受け入れている国をアフリカから1、2か国選定し、該当国の在外公館やJICA事務所において、難民関連案件の担当者を指名する。

JICAでは、複数国における難民・避難民支援やネクサス推進にかかるアドバイザーの派遣を実施・予定しており、現地レベルでの連携強化に貢献することができる。

提言3:迅速性、柔軟性ある制度運用

柔軟な拠出に向けて、国連の国別プール基金(CBPF)や中央緊急対応基金(CERF)といった基金の活用についても引き続き検討を行う。

NGOを通じた支援等において、期間、予算に係る提言を踏まえ、制度運用のあり方につき検討を重ねる。

なおJICAでは、既存案件における難民・避難民対応に資する協力部分に各種スキームを活用することで、迅速かつ効果的に支援を展開できる事例がこれまでにも確認されており、引き続き迅速な実施方法を検討していく。

提言4:生計向上支援の重視

HDPネクサスの観点を踏まえ、難民の生計向上支援や強靱性(レジリエンス)強化に貢献するような案件を検討する。JICAは、長期化する難民問題に対し、難民自身の能力向上や生計手段の確保の支援は受入れ側の負荷軽減に繋がり、出身国への帰還後の復興に資する人材ともなるため、生計向上支援は非常に重要な分野と考え、難民を含む裨益者を対象に稲作農家への技術普及を通したコメの生産量増加支援を行ってきているが、今後も重点的に取り組む方針。

提言5:日本の難民支援の全体像、特に国際機関を通じた支援の「見える化」

難民支援を行っている国際機関や日本のNGO、企業や地方自治体等と連携しつつ、日本の難民支援について広報するようにする。JICAでは開発を通じた難民支援に関するパンフレット(日本語・英語)を作成しており、周知に努めるほか、民間企業やNGOとの意見交換の機会も強化する。

提言6:難民支援・HDPネクサスに関する人材育成と登用・配置

JICAや外務省において、難民支援を担当するポストの人材募集がある際には、JICAや国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの国際機関、NGOなどに広く募集を送るようにする。JICAでは国連ボランティア(UNV)と連携し、UNVにおける海外協力隊の帰国隊員枠を確保しているが、近年難民・避難民支援分野のポストへの派遣を強化している。

提言7:日本国内の難民受入れの継続・強化

将来的な第三国定住により受け入れる難民の人数や受入れ体制の在り方等については、難民対策連絡調整会議の下で検討が行われる。また、引き続き、シリア平和への架け橋・人材育成プログラム(JISR)を継続し丁寧な支援を行っていく。

平成26年度対ヨルダン無償資金協力(地方産機材ノン・プロジェクト無償資金協力)の評価

提言1:引渡し式の実施と効果的な広報活動

今後実施する経済社会開発計画(旧ノン・プロジェクト無償資金協力)案件のうち、複数回にわたって調達が行われるような案件については、供与対象となる団体・施設への納入などの段階ごとに複数回引渡し式を実施することを検討し、引渡し式の実施後には現地報道がなされるようにプレスリリースを発出するとともに、大使館のソーシャルメディアに式の様子を投稿するなど、広報効果を最大化することに努める。

提言2:文書記録の保存

交換公文(E/N)締結以前の相手国政府との協議に関しては、公的な文書を交わすことはなく、公文書としての記録はないものの、今後の類似案件では、支援内容の大幅な変更等が生じた場合は、記録を残すように努める。また、事後評価の実施を念頭に当該文書の保存期間の見直しを検討する。事後フォローアップにおいて、大使館の所見・教訓にかかる記録の徹底に取り組む。

平成28年度対ヨルダン無償資金協力「経済社会開発計画」の評価

提言1:維持・保守管理費の支援

指摘の点について留意しつつ、今後の類似案件では、相手国のオーナーシップの確保を促すために、実施機関に対して、維持管理費用の確保を含めた体制構築に努めるよう促す。

提言2:調達手続実施要領(ガイドライン)の見直し

調達手続実施要領(ガイドライン)については、更新するべく作業を行っている。

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