ODA評価年次報告書2024 | 外務省

ODA評価年次報告書2024

2023年度外務省ODA評価結果

バングラデシュ国別評価

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評価者
(評価チーム)
評価主任:西野 桂子 関西学院大学総合政策学部総合政策研究科教授
アドバイザー:池田 恵子 静岡大学グローバル共創科学部教授
コンサルタント:アイ・シー・ネット株式会社
評価対象期間 2018年度~2022年度
評価実施期間 2023年4月~2024年2月
現地調査国 バングラデシュ人民共和国

評価の背景・対象・目的

外務省は、外務省組織令と開発協力大綱に基づくODA評価のうち、政策やプログラム・レベルの評価の一環として国別評価を実施している。バングラデシュに対する近年の日本の援助政策や重点分野に基づく支援を評価することにより、今後の日本の対バングラデシュ援助政策の立案や実施のための提言や教訓を得ることを目的として、バングラデシュ国別評価を実施する。また、評価結果を公表し、国民への説明責任を果たす。

過去5年間(2018~2022年度)の日本のバングラデシュに対する援助政策及び同政策に基づく支援を基本的な評価対象とする。具体的な評価対象案件については、外務省と調査チームが調整した結果、以下のように選定した。

すなわち、最新のバングラデシュの事業展開計画(2020)に記載された事業に加え、当該事業展開計画に記載されていない、「2018年度の終了案件」及び「2021、2022年度」に採択された案件を評価対象事業とする。さらに、評価期間や評価リソースの制約に鑑み、上記の評価対象事業のうち重要度の高いものを「主要事業」として抽出し、特にインプット・アウトプットやアウトカムの発現状況を詳細に確認した。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1) 政策の妥当性

評価期間に実施された事業は、日本の上位政策(開発協力大綱と国別開発協力方針)、バングラデシュの展望計画と五か年計画に示された同国や国民の開発ニーズ、さらには、MDGs/SDGsほか国際的な優先課題のいずれの視点から見ても整合性は非常に高い。また、実施機関や他ドナーへの聞き取りにより、実施事業における日本の比較優位性の高さも明確に確認された。
(評価結果: 極めて高い)

(2) 結果の有効性

日本のODAが主要ドナーの一つとしてバングラデシュの社会・経済発展に寄与していることには疑いがない。特にインフラ分野、電力及び運輸セクターでの貢献は大きい。また、人間開発分野では、教育・保健分野における日本の貢献度の高さがドナーへの聞き取りで確認された。事業展開計画に記載された他分野の事業の実績も押しなべて良好である。

評価項目別にみると、バングラデシュ支援におけるインプットは必要とされる分野に適切に投入されており、アウトプットもおおむね期待された成果が実現し適切であった。さらにアウトカム(各事業の目標)もおおむね期待した成果が実現している。
(評価結果:高い)

(3) プロセスの適切性

国別開発協力方針など援助政策は、相手国や関係者との豊富な意見交換を通じて策定されており、そのプロセスは適切である。政策実施プロセスも、相手国のニーズの把握度合い、事業レベルでの緻密なモニタリングの実施状況などからみて適切である。援助実施体制には特に問題がなく、他ドナー、国際機関、民間、NGOなど多様な援助主体ともよくコミュニケーションを取り、連携が取れている。さらに、事業実施においても相手国の特徴・特性を踏まえた配慮・工夫がなされている。
(評価結果:高い)

(注)レーティング: 極めて高い/高い/一部課題がある/低い

● 外交の視点からの評価

(1) 外交的な重要性

日本の対バングラデシュ支援は、MDGs/SDGsとの関連性が強く、国際社会においても重要性の高い支援である。日本の過去50年にわたる支援は、バングラデシュの発展に貢献しており、最大の二国間開発パートナーとしての評価を受け、二国間関係は極めて親密である。また、バングラデシュ政府のテロに対する厳しい姿勢は在留邦人の安全確保につながっており、近年実施されている日本の技術協力も両国民の安全に寄与している。

(2) 外交的な波及効果

日本の継続的なバングラデシュへの支援は、同国による国際社会における日本への支持や連帯という形で便益につながっている。また、各種事業の実施によるさまざまなレベルでの両国間の人材交流は、事業自体の成功とも相まってバングラデシュ国内での日本への親近感や友好的感情の醸成に寄与している。さらに同国に対するODA事業は、日本の平和・安全及び日本国民の安全確保に貢献し、日本経済への波及効果をもたらしている。

評価結果に基づく提言・教訓

<提言>

(1) 低所得層がより厚く裨益し、全国民が受益可能な経済成長を加速するため、質の高い経済基盤の拡大・整備を継続するとともに、経済成長に伴う産業・雇用の高度化・多様化を支援する。

(2) 中央省庁におけるコミットメントとオーナーシップの強化と地方への展開の基盤強化(システムと予算の手当て)により、中央レベルでの行政能力・システムの強化という成果を全国に普及させる。

(3) より積極的に女性のエンパワーメントを通じたジェンダー格差の縮小に向けた貢献ができるよう、案件形成段階でジェンダー平等の達成に貢献する方向で活動内容を精査し、モニタリングを強化する。とりわけ、雇用やガバナンス分野における女性のエンパワーメントを強化する。

(4) プログラムの評価の導入は有意義であり、かつ可能である。また、実際の評価にあたって、プログラムのスコープを日本の「事業展開計画」の協力プログラムに限定せず、各ドナーが参加するセクター・プログラムをとりあげることも効果的である。今後はプログラムの計画段階で分野ごとのToC (Theory of Change) を作成し、当該分野における個々の案件の位置付けを確認し、指標を策定するなど、手法の更なる開発・発展が望まれる。

<教訓>

(1) 質の高いインフラ建設と質の高い保守能力による施設の長寿化

(2) 受益者が利用しやすい包括的な女性の経済的エンパワーメント支援

(3) 都市部の道路と地方の道路の連結による相乗効果の発揮

(4) 日本のNGOとJICA事業の連携による相乗効果の発揮

(5) 小規模農家への融資と技術指導による支援による農家収入の拡大

 

全国送電網整備事業:バングラデシュ全域における変電所及び送電線の新設・増設の写真。

全国送電網整備事業:バングラデシュ全域における変電所及び送電線の新設・増設
(出典:JICA、ODA見える化サイト)

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