外務省ODA評価結果フォローアップ
2021年度提言への対応策の実施状況
2021年度の第三者評価から得られた提言に対する対応策の実施状況(2023年4月時点)は以下のとおりです。(2021年度評価報告書へのリンク)
東ティモール国別評価
提言1:「質の高い」ODA供与による、東ティモール経済の離陸支援
防災分野においては、無償資金協力「災害リスク軽減及び復旧のための機材整備計画」や「洪水被害インフラ復旧計画」を通じて、2021年4月に東ティモールで発生した大規模な洪水からの復興実現や事前の防止を図る他、技術協力プロジェクト「洪水リスク削減能力向上プロジェクト」と連携する形で洪水被害を受けた施設の復旧及び災害に強く魅力的な街づくりに向けた取組を進める等、日本の防災技術や知見を生かした支援を実施している。また、東ティモール政府の災害リスク削減作業部会立ち上げを全面的にサポートする他、無償資金協力によるプロジェクト成果物の持続的活用を確保すべく、東ティモール国立大学工学部支援を始めとする技術協力にも引き続き力を入れている。
提言2:LDC 卒業を見据えた環境インフラへの支援拡充
東ティモールは、LDCの卒業基準を満たした場合には、STEPを活用した譲許性の高い円借款による整備は検討に値するものの、依然LDCを卒業しておらず、STEPは対象外。他方、新規の円借款案件について、先方政府からの期待が高い。円借款は現時点では国道整備案件のみであるが、今後東ティモールの発展度合いや債務持続性、グレーターサンライズ油田開発の問題も考慮しながら、新規案件の可能性も引き続き検討していく。現地レベルでは、引き続き4半期に1回開催される開発パートナー会合に加え、先方政府とも協議を重ね、円借款を含めた先方政府のニーズを調査していく。
なお、環境インフラとしては、国際機関連携で2023年3月に「気候に対して強靱な発展及びネット・ゼロに向けた太平洋地域におけるGX推進計画」を開始。
提言3:外国人技能実習制度と連携した、職業人・産業人の育成
東ティモールは2022年11月のASEAN首脳会議でASEANへの原則加盟が認められ、2023年中の正式加盟を目指している。ASEANへの正式加盟も見据えて、人材育成支援を強化していく。2023年から日本への技能実習生5〜7名(農業分野)の派遣も開始を予定している。
提言4:「投資先として選ばれる国」づくりのための環境整備と観光資源の開発推進
東ティモールの産業多角化を見据え、農業や水産分野での農業開発アドバイザーや産業開発アドバイザーの派遣や人材育成を行っている。また、技術協力を通じた法整備支援を継続中。産業多様化に資する支援としては、専門家派遣による観光商工省を対象とした産業基本法を含めた法規制への支援や水産分野における今後の協力に向けたパイロットプロジェクトを実施中。
また、法制度整備については法務省が長年支援を行ってきており、現地日本大使館もこれを補助していく。
なお、ガバナンス支援としては、UNDPと連携してコロナ禍でも自由で公平な選挙を実施するための支援「東ティモールにおけるコロナ禍の選挙実施体制強化計画」を行っており、2022年の大統領選挙や2023年の議会選挙実施に貢献している。
提言5:「強靭なインフラ」づくりのためのインフラセクター全体を俯瞰した政策的貢献
インフラ分野においては、プレジデンテ・ニコラウ・ロバト国際空港の整備をはじめ、2021年に発生した大規模な洪水を受けて防災インフラ支援の強化を図った。また、道路インフラ品質管理アドバイザーによる協力を継続中。無償資金協力「プレジデンテ・二コラウ・ロバト国際空港整備計画」ではオーストラリア及びアジア開発銀行(ADB)と連携し、国際空港の改修を実施中。現地で開催されているインフラ分野を含む各分野のドナーラウンドテーブル会合への定期的な参加や、他ドナーを招へいしたJICA主催セミナー(防災、道路維持管理、港湾開発等)の実施等を通じて、世銀やADBも含め関係機関との意見交換も実施している。
なお、現地では、インフラセクター全体を俯瞰するため、主要ドナー国及び国際機関と定期的に会合を開き、プロジェクトの重複の回避や相乗効果の確保のための調整を実施。特にオーストラリアとは空港などのクリティカル・インフラにおいて緊密に協力。また、本年3月から、国際機関連携の枠組みで「地域社会インフラ整備計画」を開始。
提言6:東ティモールの統治能力を強化するための日本のODA の戦略的拡大
東ティモールの地政学的重要性も踏まえ、統治能力強化に資する案件の形成を引き続き検討する。
ペルー国別評価
提言1:基本方針「持続的経済発展への貢献」の維持
次回国別開発協力方針を改定する際に、2023年に改定された開発協力大綱との整合性に留意しつつ、基本方針「持続的経済発展への貢献」の維持の適切性につき、提言を踏まえ検討する予定。
提言2:「選択と集中」:3つの重点分野への各種ODA スキームによる支援の継続
2022年3月に改訂したJICA国別分析ペーパー(JCAP)において、都市部と地方部の格差是正に重点を置き、地方部においては農業に限定せず経済全般的なアプローチを図る方針とした。次回国別開発協力方針を改定する際に、新たな開発協力大綱との整合性に留意しつつ、3つの重点分野「経済社会インフラの整備と格差是正」、「環境対策」、「防災対策」に対する支援を継続する必要性につき、提言を踏まえて検討する予定。
提言3:多様な主体の資金・活動との連携強化
2012年度円借款事業「固形廃棄物処理計画」(フェーズ1、米州開発銀行との連携)により建設された福岡方式による最終処分場の運営維持管理技術の能力強化を図り、もって廃棄物管理改善に資するべく、2023年度新規技術協力案件として技術協力プロジェクト「最終処分場運営能力強化プロジェクト」を採択済み。また、2023年2月、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し、対ブラジル及びペルー無償資金協力「ベネズエラ難民・移民に対する保護、人道支援及び社会経済的包摂確保計画」(供与額4.86億円)の交換公文署名済み。引き続き国際機関等との連携や効果的なODAスキーム間の連携について積極的に可能性を追求していく。
提言4:長期的な人材育成につながる技術協力の継続の必要性
2022年度対ペルーSATREPS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)案件として「バナナ萎凋病の警戒・診断システムと発病制御戦略の構築と実装プロジェクト」(研究機関:東京農工大学及びラ・モリーナ国立農業大学)を採択済みであり、引き続き官学連携を深化させることに資する案件を実施していく。また、SDGsグローバルリーダーを通じた人材育成、TSUBASA/官民連携事業等を通じた日ペルー間の民間アクター連携を促進しつつ、産学官連携を見据えたスタートアップ・エコシステムアクターへのアプローチを開始する。
提言5:日系人社会との連携の維持
2023年度新規技術協力(第三国研修)として、「社会経済開発のための日系社会・日系校の連携強化」を採択済みであり、ペルー日系人協会およびラ・ウニオン日系校が実施機関となって、中南米各国の日系団体関係者を招いた日本語指導等のセミナーの開催等を実施することで、日本語指導に関する技術と学習方法の習得・普及を図る予定。また、2023年度日系社会連携調査団の受入れの機会を活用し、日系社会を介した(乃至は連携した)民間連携促進を始めとした日系社会との連携可能性を引き続き追求していく。
提言6:ペルーの自然環境及び気候変動の影響を踏まえたインフラニーズへの対応
直近のインフラ支援としては、2022年3月に固形廃棄物処理計画(フェーズ2)の交換公文署名を行った。この計画は、フェーズ1で衛生埋立処分場が新設されたペルーの地方各都市において、これまで使用されていたオープン ・ダピング・サイトを閉鎖するため、覆土等の土木工事や、ガス抜き施設、排水施設等の設置を行うもので、環境社会配慮の適切な実施に配慮して実施中。
マラウイ国別評価
提言1:日本の中小企業やNGOの進出、投資環境の整備に資する措置を強化
マラウイへの海外からの企業の進出には、制度上の障壁以前に、同国のマクロ経済状況の悪化や外貨準備不足により、ガソリンや一般消費財の不足、価格の高騰などの課題もあり進出には慎重にならざるを得ない状況が続いているものの、企業・NGOの進出や投資の参入障壁につき検証中。
「ABEイニシアティブ」の選考基準について、民間含め幅広い視点で、適切な選考を継続している。
提言2:留学生・研修員の人材バンクを設置し、ネットワーク構築と活用を強化
元留学生を活用して意見交換を実施しており、親日家による日本の取組の発信と共に、ネットワークイベントなど、同窓会の活動促進を検討している。
ABEイニシアティブに係る「ネットワーキングイベント」や、帰国研修員の活動報告及び帰国報告会・ネットワーキングイベント等のプログラムの企画を継続している。
提言3:JICA海外協力隊とマラウイ側中核人材の戦略的・継続的活用を図る
マラウイのシニア海外協力隊員や専門家選考において、同国での協力隊経験が有用と判断されるポストについては、協力隊経験を考慮している。
提言4:マラウイの一般市民に向けた外交広報戦略の強化を図る
JICA現地事務所において、発信力のある元マラウイ研修員・留学生の特定、彼らに対するSNSなどでの情報発信依頼の可能性を検討中。
インフルエンサーやアーティストの活用を含め、ケースバイケースで効果的な情報発信のあり方につき検討中。PRコンサルタントを2023年4月から活用する予定であり、インフルエンサーとしてミュージシャンが想定されている。
教育協力政策の評価
●日本の教育協力政策内容への提言
提言1:重要分野の優先順位付け
2022年8月に開催された第16回国際教育協力連絡協議会にて、本評価について紹介し、提言を受けた事項への対応について意見交換を行った。次回の国際教育協力連絡協議会などを通じて引き続き関係者と意見交換を予定。
提言2:期間・目標の設定
次回の国際教育協力連絡協議会などを通じて関係者と意見交換を予定。
提言3:政策内容(目的・対象分野の表記、他アクター・事業との連携推進、他)
JICA基礎教育分野では、日本政府の政策に合わせてJICA課題別事業戦略が策定され、2023年3月には詳細な「教科書・教材開発を中心とした学びの改善」や「コミュニティ協働型教育改善」などのクラスター事業戦略が作成され、協力の目的や対象分野、モニタリング、バイ・マルチなど他の開発パートナーとの連携について明文化された。
●日本の教育協力政策内容への提言
提言4:政策策定時の既存のプラットフォームの有効活用
2022年12月に、JICAと教育協力政策改定に関する意見交換を実施。右は、次回の国際教育協力連絡協議会で、大学、関連省庁、有識者などを含めて、同政策改定について議論する前に、外務省・JICA間での擦り合わせを目的として実施したもの。
提言5:政策実施の点検における既存のプラットフォームの有効活用
2022年8月に連絡協議会を実施し、本件評価について共有し、提言の実施等について初歩的な意見交換を行った。
JICAでは新たに2023年9月に実務者レベルで①知見の共有・共創、②公共財の発信、③人材の発掘育成・活躍の場創出、④具体的連携の4つの機能を盛り込んだ「教育協力プラットフォーム」を形成し、2023年以降毎年開催する予定。
提言6:文部科学省の知見・協力の取り込み
2022年12月に、JICAと教育協力政策改定に関する意見交換を実施。2023年以降、文部科学省とも意見交換予定。
JICAでは、日本を冠する大学、エジプト日本科学技術大学(E-JUST)、日越大学等においてODA以外のスキームとの連携、科学技術政策との整合性の確保、国際頭脳循環等の新たな取組に向けた情報共有・相談が重要になることから文部科学省と連携している。加えて、高専など日本国内でのリソース確保が課題となっている分野の案件形成は前広に相談しながら進めている。
提言7:リーダーからの発信とODA 実施機関への継続的周知
改定後の同政策についても、これまでと同様に、適切なタイミングで発信し、加えて、省内、在外公館、JICAへの継続的な周知を検討する。
提言8:個別案件のモニタリングにおける外交の視点
個別案件の採択段階から日本の政策や方針との整合性を確認している。また、教育分野における2022年度評価対象案件においては、相手国実施機関に対して、学校で行われている活動をモニターし、データを収集し、その効果を社会に対してアピールすることを提言している評価事例もあり、外交的重要性や波及効果を意識した評価を実施している。
平成29年度スリランカに対する経済社会開発計画の評価
●プロジェクトへの提言
提言1:大使館員による現地モニタリングの早期実施
新型コロナウイルス感染状況の落ち着きや、経済危機による燃料供給状況の改善等を踏まえて、2023年2月17日に大使を含む大使館員がトリンコマリーへ出張し、引渡し式を実施した。これにより、供与した機材が良好な状態で稼働している事が確認できた。
提言2:トリンコマリー港周辺の開発支援に向けた戦略の検討
スリランカ北東部地域においては、これまでトリンコマリー港の支援に加えて、保健や農業、環境といった分野での支援を行ってきているが、スリランカにおける2022年4月の経済危機発生以降、日本は食品、医薬品、肥料、燃料などの必需品の不足に対する支援をスリランカ全土に対して行ってきた。
また、今後は国際通貨基金(IMF)の経済改革に資する中長期の視点に立った、包摂性に配慮した質の高い成長の促進につながる支援も重要となることから、トリンコマリー港を含むスリランカ北東部地域への支援についても、IMFの改革や当地の経済状況を踏まえて引き続き検討を進めていく。
●外務省が実施する無償資金協力(経済社会開発計画)への提言
提言3:プロジェクトに関するより積極的な情報発信
2023年2月17日に行った引渡し式は、大使館やスリランカ港湾、海運及び航空省、スリランカ港湾局がSNSやホームページにより積極的に情報発信し、報道でも大きく取り上げられ、当事業について広く国民に周知された。
提言4:プロジェクトの目的や効果発現に向けたロジックの明確化
同国の「経済社会開発計画」の案件形成に際し、目的や効果発現に向けたロジックを明確化するために、目的に適い得る調達候補品目について、可能な限り前広に絞り込みの上、その組合せや期待される効果について検討を行った。
本省においては、案件の目的、外交政策上の位置づけをしっかりと確認した上で、供与機材の必要性、機材配置計画、先方政府の当該機材の維持管理能力の有無、既存機材との重複等に留意し、期待される効果が得られるよう関係各課で前広に検討するよう努めている。