ODA評価年次報告書2023 | 外務省

ODA評価年次報告書2023

2022年度外務省ODA評価結果

ラオス国別評価

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評価主任 廣野 良吉
成蹊大学名誉教授
アドバイザー 湊 直信
国際通貨研究所客員研究員
コンサルタント 株式会社国際開発センター
評価対象期間 2017年度~2021年度
評価実施期間 2022年5月~2023年2月
現地調査国 ラオス

評価の背景・対象・目的

ラオスは、インドシナ半島の中央に位置し、メコン地域の要衝を成す重要国であり、同国の安定と発展は、メコン地域、ひいては東南アジア諸国連合(ASEAN)全体の安定と繁栄に直結する。ラオスは、鉱物資源の輸出入や水力発電における売買などによる経済力強化などを背景として、着実な経済発展を遂げてきたものの、社会・経済開発に関する未解決の問題は多く残されている。

本評価は、ラオスに対する近年の日本の援助政策や重点分野に基づく支援を評価することにより、2024年度に改定予定である対ラオス国別開発協力方針の立案や実施のための提言や教訓を得ること、また、評価結果の公表を通じて、国民への説明責任を果たすことを目的とする。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1)政策の妥当性

日本の対ラオス援助政策は、ラオスの開発政策・開発ニーズ、日本の上位政策、国際的な優先課題とそれぞれ整合している。日本を含めた主要な援助国・機関はラオスの国家社会経済開発計画(NSEDP)に沿った支援政策を策定し、ラオスの後発開発途上国(LDC)脱却という国家目標の達成を共に目指すパートナー関係にあることも確認された。日本の対ラオス援助政策は、多様な援助スキームを組み合わせて、ソフト面からハード面、さらには政策策定レベルからコミュニティレベルまで幅広い活動を計画している点、さらに多様なセクターにおける長期的な支援を通じて蓄積された経験や知見を活かした支援となっている点において、日本の比較優位性をいかした政策と言える。以上より対ラオス援助政策の妥当性は「極めて高い」と判断した。
(評価結果: 極めて高い)

(2)結果の有効性

最初に、対ラオス国別開発協力方針に沿って計画された各事業の投入と活動は、おおよそ当初計画どおりに財・サービスが生み出されたと評価できる。次に、日本の投入を通じて、「開発課題(小目標)」はどの程度達成され、「重点分野(中目標)」の達成にどの程度貢献したかについては、大きな達成があったと評価できる。特に、ガバナンス強化(主に法整備支援の部分)、交通・運輸網、電力供給、基礎教育、都市環境整備(廃棄物処理)、保健医療サービスなどで直接的な大きな貢献があったと評価できる。また、ラオス政府関係者からも高く評価されていることが確認できた。これらを通じて、対ラオス開発協力方針に示された4つの中目標の進捗に貢献したと評価できる。最後に、「最終アウトカム」(大目標レベル)は、「LDC脱却を目指した経済社会基盤の強化」という大目標の達成に向けて、日本の開発協力(援助)は、それぞれの分野である程度の貢献があったと評価できる。

留意点としては次のことが挙げられる。最大規模のドナーと目される中国による交通網整備(ラオス中国鉄道とビエンチャン・ボーテン高速道路(整備中))の今後の経済的効果は大きいと見込まれるが、現在は新型コロナウイルス感染症による自粛の影響で効果はまだ限定的であることが確認された。ラオス側からは、日本は人材育成・社会インフラ整備・民間投資促進などへの援助により、こうした中国の援助との相乗効果を最大限にすることが今後の支援に求められるのではないかという意見があった。一方で、中国政府からの借入による対外債務の急増が大きな課題となっている。
(評価結果: 極めて高い)

(3)プロセスの適切性

日本の対ラオス援助政策は、ラオスの開発ニーズを十分に反映し、既定の手順に沿って適切に策定されている。実施面においても、在ラオス日本国大使館、及びJICAラオス事務所には多様なセクターに対応する各種の体制が組まれており、政策協議、ラウンドテーブルプロセス、セクター別会合などを通し、両国関係者間、及び開発パートナーとの緊密なコミュニケーションが図られている。また、技術協力、無償資金協力、有償資金協力、ボランティア事業など様々なスキームを組み合わせ、援助効果を高める取組が実施されていることが確認された。コロナ禍においても、オンライン環境を整備し、ラオス側のカウンターパートとの連絡手段を確保したり、現地スタッフを活用したりといった柔軟な対応がとられ、各案件のモニタリングが継続された。さらに、他ドナー・援助機関との援助協調に加え、民間企業、NGOなどの多様な援助主体との連携も幅広い分野で確認された。以上より政策の妥当性や結果の有効性が確保されるようなプロセスが適切に取られている。一方で外交の視点からの評価でも指摘されているように、日本の有効なODAの成果を国際社会に周知する広報活動が限られており、ODAの成果を外交力にいかすために改善の余地があると言える。以上のことから、プロセスの適切性は「高い」と判断した。
(評価結果:高い)

(注)レーティング: 極めて高い/高い/一部課題がある/低い

● 外交の視点からの評価

(1)外交的な重要性

ラオスに対する日本のODAは、次の点から重要と言える。(1)ラオスはいわゆる「メコン地域」の中で地理的に中心に位置している。(2)ラオスは国際場裡での選挙・投票で、日本の立場および日本の候補者を支持することが多いという実績がある。(3)ラオスはベトナム・中国などと国境を接しており、国際社会及びASEAN地域において重要な役割を担う可能性がある。また、現在の日本の外交方針の一つとも位置づけられる「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)に、日本の対ラオス支援は合致しており、各種の行動計画を策定・合意している。さらに、日本の国益の一つである国際公共益の維持発展を掲げて「法に基づく支配」を理念としている。

(2)外交的な波及効果

国際社会における日本外交に及ぼす波及効果としては、(ア)国際社会での日本への支持取り付けの波及効果、(イ)中国・ロシアの世界情勢への影響に対抗するための波及効果、(ウ)日本が目指す普遍的な価値やルールの普及という波及効果、(エ)ASEAN構成国の関係進化と発展への貢献への波及効果などがある。日本とラオスの二国間関係への波及効果としては、(ア)親日派、知日派の拡大、訪日人数の拡大、(イ)日本の危機(緊急災害時など)への支援、(ウ)経済関係への波及効果(「呼び水効果」)、(エ)波及効果を生み出す広報(ラオスから国際社会へ向けて)などが指摘できる。

評価結果に基づく提言

(1) ODAの成果を外交力としていかすために広報について明確な広報戦略と仕組みを検討する。

(2) 財政安定化に向けた知的支援を強化する。

(3) 中国の援助と競争するのではなく、産業支援や教育支援を強化して、相乗効果を目指す。

東西経済回廊沿線地域の人・物の流通の円滑化および経済発展に貢献している写真。

メコン川においてラオスとタイを結ぶ1,600メートルの第2メコン国際橋。東西経済回廊沿線地域の人・物の流通の円滑化および経済発展に貢献している。

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