コラム
新型コロナウイルス感染症とODA評価
新型コロナウイルス感染症の拡大は、世界全体に非常に大きな影響を与えており、これまで当たり前のように思っていた多くのことが、当たり前ではなくなっています。
ODA評価についても、2020年度はこれまでとは異なる工夫が必要となりました。外務省が実施するODA評価(第三者評価)では、外部の第三者としての有識者とコンサルタントにより構成される評価チームが対象国へ渡航し、協力現場を視察し、相手国政府関係者や協力現場周辺の住民などに聞き取り調査を実施して直接情報収集をしてきましたが、2020年度は現地への渡航調査は実施できませんでした。
このため、評価チームは、現地への渡航調査の代替手段としてオンライン会議システムを使った現地関係者へのインタビューや、現地コンサルタントによる現地視察・聞き取り調査などを実施し、できる限り信頼できる現地の情報を収集するように努め、評価を実施しました。評価チームからは、現地渡航調査が実施できない場合、現地関係者のインターネット環境が整っていなかったり、顔を合わせて直接インタビューするのに比べると率直な意見交換が難しかったりといった理由で、評価に必要な情報収集が十分にできず、現地渡航調査を実施した場合と同じ水準の評価は困難という意見もありました。
評価チームが現地に渡航して調査を行い、直接情報収集をした方が望ましいのは言うまでもなく、実際に現地に赴いての調査を完全に代替できる手段はありません。一方、今回の経験から、オンラインでのインタビューや書面による質問票送付による聞き取り調査を通じた調査であっても、一定の情報収集は可能であることが確認できました。ただし、このような代替手段による現地調査で必要な情報を広く収集するためには、信頼できる現地コンサルタントの有効活用をはじめ、更なる試行錯誤が必要になります。
2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響で、これまでは渡航できた国についても、現地渡航調査なしでの評価を行うことになりましたが、このような形でもある程度信頼できる情報を収集でき、その情報に基づいて一定の評価ができる方法が確立できれば、これまで治安上の問題で評価チームによる現地渡航調査ができず、ODA評価を見送ってきた国々についても、評価実施の可能性が広がります。
新型コロナウイルス感染症により、日本が世界各地で実施しているODAの事業も少なからず影響を受けましたが、このような状況の中でも、日本は支援の継続に向けて尽力し、特に保健・医療分野での支援を中心に、開発途上国のコロナ対策のための様々な支援を強化しています。ODAの実施状況・効果を確認し、より効果的・効率的なODA実施につなげることを目的としたODA評価も、今回の経験から得た教訓に基づいた工夫をしつつ実施していきます。