ODA評価年次報告書2021 | 外務省

ODA評価年次報告書2021

2020年度外務省ODA評価結果

ルワンダ国別評価

評価主任 稲田 十一
専修大学経済学部教授
アドバイザー 武内 進一
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授/現代アフリカ地域研究センター・センター長 
コンサルタント NTCインターナショナル株式会社
評価対象期間 2010年度~2019年度
評価実施期間 2020年8月~2021年2月
現地調査国 ルワンダ(オンライン遠隔調査)

評価の背景・対象・目的

ルワンダは、経済成長・貧困削減・雇用創出を柱とする開発を積極的に進めており、著しい経済成長を遂げている。内戦からの復興・経済成長のモデル国ともいえるルワンダを日本が支援することは、平和の定着及びアフリカ大湖地域の安定のために意義が大きい。本評価は、過去10年間(2010~2019年度)の日本の対ルワンダODA政策及びそれに基づく支援を評価し、今後の日本の対ルワンダODA政策の立案や、実施のための提言や教訓を得るとともに、評価結果の公表を通じて国民への説明責任を果たすことを主な目的とする。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1) 政策の妥当性

日本の対ルワンダODA政策は、ルワンダの開発ニーズ、日本の開発上位政策(アフリカ開発会議(TICAD)の宣言含む)及び国際的な優先課題(持続可能な開発目標(SDGs)等)との整合性を有している。また、他ドナーとの関連でも相互補完的な支援を行っている。日本が比較優位性を発揮している取組として、運輸交通及び貿易円滑化の分野における3スキームの組み合わせによる相乗効果の発揮や、技術教育・職業訓練やICT分野における現地の実態に即した実践的な協力を確認できた。 (評価結果:極めて高いA) 

(2) 結果の有効性

日本の対ルワンダODAは、他ドナーと比較すると投入量がやや小規模ではあるものの、各案件が当初設定した目標達成への貢献度は高く、対ルワンダ国別開発協力方針の各開発課題に対して着実に支援を実施し、貢献を果たしている。また、日本がODAを供与する主要分野において、日本の供与額の割合は他ドナーと比較すると小規模であるが、一定の貢献を果たしている。 (評価結果:高いB) 

(3) プロセスの適切性

対ルワンダ国別開発協力方針は、おおむね適切なプロセスを経て策定された。また、ODA実施プロセスについて、基本的な実施体制の整備・運営、ニーズ把握、重点分野に基づく個別案件の実施、モニタリング・評価、他開発アクターとの協調・連携、社会性・民族性及び環境への配慮につきおおむね適切なプロセスが確認された。他方、一部案件の情報については公開が不十分であること、ODA政策策定や実施に際してアフリカ大湖地域等の事情をどのように考慮しているのか必ずしも明確に示されていないことなど、改善が望まれる点があった。 (評価結果:高いB) 

(注)レーティング: 極めて高い A/高い B/一部課題がある C/低い D

● 外交の視点からの評価

(1)外交的な重要性

日本の対ルワンダODAは、「国家安全保障戦略」に合致した取組である。TICADの基本原則と歩みを共にし日本との二国間関係を深化させているルワンダは、日本にとって外交上重要な国である。アフリカ大湖地域の安定やルワンダにおける平和の定着、日・ルワンダ経済関係等の観点からも、外交的意義を有する。

(2)外交的な波及効果

日本の対ルワンダODAを通じ、親日家/知日派の醸成、経済・友好関係促進等の外交的波及効果が確認できる。また、貿易円滑化支援による地域の発展や、ルワンダ国内の難民や元戦闘員を含む障害者への支援を通じたルワンダにおける平和の定着、ひいては地域の安定への貢献が期待される。

評価結果に基づく提言

(1)貧困層が裨益する開発の継続的な推進

ルワンダにおいて、貧困からの脱却が難しい地域・社会階層は無視できない規模で存在する。日本は、貧困層等が裨益する基礎的社会サービスへの支援や、農業分野の支援のほか、セーフティーネットを形成する観点からも、貧困層も含めた収入創出・雇用創出支援を引き続き重視すべきである。

(2)アフリカ地域の情報通信技術(ICT)分野等の知識ハブを目指すルワンダの後押し

日本の技術教育・職業訓練やICT分野における専門家派遣、また技術協力プロジェクトを通じた現地の実態に即した実践的な協力は、ルワンダ側から評価されている。これまでの日本の協力経験を生かし、民間セクターと連携・協力しつつ、アフリカ地域への波及を含めた支援展開を検討すべきである。

(3)日本企業等の多様なアクターとの連携促進

ABEイニシアティブを通じた日本の大学への留学や日本企業でのインターンは、ルワンダの人材育成に貢献するほか、日本の対ルワンダビジネスの促進にもつながっている。また、ICT分野支援において両国企業の協働機会を設けているが、日本企業からの学びの機会や、将来的なビジネスパートナーとなり得る日本企業とのネットワーキングの機会について、ルワンダからの期待は大きい。このような日本企業等の多様なアクターとの連携促進について、引き続き重視することが肝要である。

(4)東アフリカ共同体(EAC)地域全体の経済連携支援の強化

ルワンダは地理的に小国であり内陸に位置するため、ルワンダの開発を考える場合、一国のみならず地域として捉えることが重要である。日本は、貿易円滑化に向けて、道路、国際橋、ワンストップ・ボーダーポスト(OSBP)施設の整備を支援し、EAC5か国の税関・国境管理能力向上を支援してきており、こうした地域の発展に貢献する事業をさらに推進すべきである。

(5)EACやアフリカ大湖地域等地域事情のより積極的な考慮と情報公開

ルワンダは、近隣諸国との間に複雑な政治的・歴史的関係を有していることから、対ルワンダ支援アプローチの構想にあたっては、地域的な観点からも検討することが必要である。日本の対ルワンダ国別開発協力方針において、「開発協力のねらい」として対ルワンダ支援は「大湖地域の安定」や「平和の定着」の観点からも意義が大きいと言及があるが、ODA政策や案件の検討に際してどのように大湖地域の事情を考慮しているか必ずしも明確に示されていない。こうした地域事情については、ODA政策や案件の検討に際して、より積極的に考慮し、可能な限り対外的に公表すべきである。

(6)国際機関拠出金や草の根・人間の安全保障無償に関わる情報公開促進

国際機関拠出金の案件名・実施機関・金額・支援内容や、草の根・人間の安全保障無償の支援内容に関する情報について、分かりやすい形で情報が公開されていない。日本のODAの広報促進のため、外務省HPや在ルワンダ日本国大使館HPでの掲載が望まれる。

日本企業・株式会社さくら社の算数ソフトを活用して、子ども達が授業を受けている写真。

【ICT を活用した教育支援】日本企業・株式会社さくら社の算数ソフトを活用した授業の様子(さくら社提供)

同上
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