ODA評価年次報告書2021 | 外務省

ODA評価年次報告書2021

2020年度外務省ODA評価結果

モンゴル国別評価

評価主任 林 薫
文教大学国際学部教授
アドバイザー 湊 邦生
高知大学地域協働学部教授
コンサルタント 一般財団法人 国際開発機構
評価対象期間 2010年度~2019年度
評価実施期間 2020年8月~2021年3月
現地調査国 モンゴル(オンライン遠隔調査)

評価の背景・対象・目的

モンゴルは、中国とロシアという大国に挟まれた地政学的に重要な国である。モンゴルの安定的な成長・発展は、地域の安定と繁栄に資するのみならず、我が国との関係 発展にとっても重要である。

本評価は、過去10年間(2010~2019年度)の日本のモンゴルODA政策を評価し、今後の日本の対モンゴルODA政策の立案や実施のための提言や教訓を得ること、評価結果の公表を通じて国民への説明責任を果たすことを主な目的とする。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1) 政策の妥当性

日本の対モンゴルODA政策は、モンゴルの開発政策・開発ニーズ、日本の上位政策、国際的な優先課題と整合し、他ドナーの支援政策とは相互補完的な役割を果たしていることが確認された。また、大気汚染対策への支援といった日本の比較優位性が生かされている例がある一方、日本の対モンゴル支援は、他ドナーとの棲み分けやモンゴルの開発ニーズ・実施体制などを総合的に勘案しながら決定されていることが確認された。 (評価結果:極めて高いA) 

(2) 結果の有効性

日本の対モンゴルODAは、2010年から2018年の9年間における二国間支援金額合計の47.7%を占め、トップドナーとしてモンゴルの開発に大きく貢献している。

対モンゴル国別開発協力方針の各開発課題に対する支援を通じ、モンゴルの財政能力向上、産業多角化のための基盤構築、都市環境問題への対処、障害者の社会参画促進等における成果が確認された。一部当初の目標の未達事項があったものの、総じて日本の対モンゴル支援の効果は高い。 (評価結果:高い B) 

(3) プロセスの適切性

日本の対モンゴルODA政策は、外務省がモンゴル側の開発ニーズを十分に反映し、規定の手順に沿って適切に策定されている。支援の実施においても、日頃からモンゴル政府機関、国際機関などと緊密にコミュニケーションをとっているほか、技術協力プロジェクトにおける他ドナーとの連携、複数のプロジェクトの連携やスキーム間の連携など、支援効果を高めるアプローチが取られていることが確認された。また、プロジェクト実施中に発生した課題に対し在モンゴル日本国大使館及びJICAモンゴル事務所は、迅速かつきめ細やかなフォローを行っている。 (評価結果:極めて高いA) 

(注)レーティング: 極めて高い A/高い B/一部課題がある C/低い D

● 外交の視点からの評価

(1)外交的な重要性

日本の対モンゴルODAは、アジア太平洋地域の安全保障環境の改善、普遍的価値やルールに基づく国際秩序の強化、グローバルな安全保障の改善、ひいては平和で安定した繁栄する国際社会の構築に貢献し得る。さらに、日本の資源安全保障のためにもモンゴルと長期的に安定した協力関係を維持することは重要であり、日本が対モンゴルODAを実施する意義は大きい。

過去の二国間首脳会談や外相会談時には、そのほとんどにおいて日本のODAに対する謝意がモンゴル側から示されており、対モンゴルODAは、日本とモンゴルの二国間関係強化において重要なツールであると言える。

(2)外交的な波及効果

国際社会におけるモンゴルによる日本の立場の支持、モンゴルにおける日本のプレゼンス強化、モンゴルへの日本企業の進出や経済関係強化、友好関係の促進、モンゴル国民の日本に対する理解度のいずれにおいても、日本の対モンゴルODAは一定程度の波及効果をもたらしたと言い得る。

評価結果に基づく提言

(1)モンゴルの持続可能な経済成長と社会の安定的発展に向けたより明確な地域開発戦略と事業計画の策定

次期国別開発協力方針の改訂においては、モンゴルの持続可能な経済成長と社会の安定的発展を目指し、支援効果をさらに高めるためには、5年の政策策定スパンにおいて、より明確な地域開発戦略と事業計画を策定することが望ましい。

(2)頻繁な人事異動に対するリスク軽減の取組強化

プロジェクト実施中のモンゴル側関係者の頻繁な人事異動や転職により、プロジェクトの遅延、人材育成のやり直し、技術移転内容が残らないことなど、進捗や効果の定着に影響した案件が散見された。ODA事業を実施する際には、あらかじめ支援対象となるモンゴル側の組織内に情報共有の仕組みを導入しておくことが望ましい。

(3)省庁再編が頻繁に発生する国における取組強化

モンゴルにおけるODA事業実施時には、省庁再編が頻繁に起こり得る国であることを十分に認識することが重要である。選挙のタイミングにおいては、支援先の組織に影響を及ぼす可能性について事前に情報を収集し、複数の対応策を準備することが有用である。また、過去に選挙後の省庁再編を経験した専門家から情報共有や助言を得ることは効果的である。

(4)複数の省庁が関係する事業における関係者の役割分担の明確化

複数の省庁が関与する事業においては、事前に関係省庁の果たす役割を把握し、必要な予算や人員の確保の確認や関係者による意見交換・情報共有の場を設けることが望ましい。相手国の慣習と各省庁の所管に配慮しつつ、事業における各省庁の責任を明確化することが有用である。

新ウランバートル国際空港運営事業として行われた、自動チェックインの訓練実施中の写真。

新ウランバートル国際空港運営事業:自動チェックインの訓練(NUBIA社提供)

日モ病院においてICU開院前にシュミレーションを実施している写真。

日モ病院におけるICU開院前のシミュレーションの様子

オルホン県地域診断治療センター(RDTC)の研修医主体で勉強会を実施している様子の写真。

オルホン県地域診断治療センター(RDTC)の研修医主体で実施している勉強会

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