2019年度外務省ODA評価結果
日本NGO連携無償資金協力の評価<概要>
(注)下記は、評価チーム作成の評価報告書に基づき、外務省ODA評価室が作成したものです。
全文はこちらからご覧いただけます。
評価者 (評価チーム) |
評価主任 | 廣野 良吉
成蹊大学名誉教授 |
アドバイザー | 下澤 嶽 静岡文化芸術大学教授 |
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コンサルタント | (株)国際開発センター | |
評価対象期間 | 原則2016年度~2018年度、統計データ分析に関しては2010年度~2018年度 | |
評価実施期間 | 2019年7月~2020年3月 | |
現地調査国 | ラオス、ミャンマー |

N連による沈下橋の建設及び技術移転事業(受益者が橋を利用する様子)
評価の背景・対象・目的
開発協力大綱においてNGO/市民社会組織との連携を戦略的に強化することが明記されており、NGOとの連携は一層その重要性が増してきているところ、政府とNGOの連携を進める上で中核となる「日本NGO連携無償資金協力」(以下、N連)について「開発の視点」及び「外交の視点」から総合的検証および評価を行い、今後の改善のための提言を得ることを目的とする。
評価結果のまとめ
● 開発の視点からの評価
(1) 政策の妥当性
N連の内容及び目指す方向性は、開発協力大綱や国家安全保障戦略などの日本のODA上位政策、相手国のニーズ、SDGsなど国際潮流・国際的課題との整合性が高い。また、応募者であるNGOの組織戦略、ニーズとの整合性も高い。また、NGOの自主性を尊重しながら開発途上国・地域の経済社会開発事業に資金を供与しており、日本がNGOを通じて支援することの妥当性も高い。(評価結果 : 極めて高い
)(2) 結果の有効性
N連に当初設定された重点課題への貢献度および目標の達成度、波及効果の観点から評価した結果、個別事業レベルでは、総じて高い有効性を発揮している。点としての効果は上がっているが、受入国政府のNGO受容政策の違いや、N連全体の件数・規模の制約もあり、途上国・地域全体の開発への貢献度合は限定的である。(評価結果 : 高い
)(3) プロセスの適切性
事業実施プロセスは、「申請の手引き」に沿って適切に実施されているが、N連の資金総額・件数の増加に伴い、外務省及び在外公館の業務量も増加していることから、現行の実施体制で引き続き質の高い事業の形成・実施支援を行うには、業務のさらなる効率化・標準化を推進する必要がある。情報公開・発信については、NGOと外務省の双方が適切に実施している。(評価結果 : 高い
)(注)レーティング: 極めて高い
/高い /一部課題がある /低い● 外交の視点からの評価
(1)外交的な重要性
我が国の国益にとってN連の重要性は高い。また、国際社会や地域での優先課題・地球規模課題をはじめとする様々の面からも、N連の重要性は高い。
(2)外交的な波及効果
N連を利用した事業は現場レベルにおける親日感情の向上に結びついており、間接的・長期的に日本に対する信頼向上に貢献している一方で、日本の経済活動や企業進出に対する貢献は極めて限られている。また、NGO自身は必ずしも明確に、外交的な重要性や波及効果を認識して活動しているわけではない。
評価結果に基づく提言
(1)政策・戦略レベルの提言
(1)-1 N連の資金総額・件数の継続的な増加
N連は総じて高い評価を得ているが、点としての個別事業の成果のみならず、面としての効果を実現していくことが今後の課題であり、その実現に向けて資金総額・件数を増加させて継続していくべきである。
(1)-2 N連としての戦略性強化の検討
NGOの自主性を尊重し、NGO固有の価値を活かしながらN連が運用されていることは評価できる。一方で、支援対象事業が網羅的になっていることから、N連全体の方向性や重点項目を示す戦略文書の作成を検討すべきである。
(1)-3 N連スキームの2段階化
N連の資金総額・件数の増加を踏まえ、初めて利用する団体を対象とした間口の広さと柔軟性は維持しつつ、利用実績のある団体向けに、外務省の政策実施の観点も勘案しつつ事業規模などで差をつける仕組みを検討すべきである。
(2)事業実施レベルの提言
(2)-1 マニュアル等によるN連業務の標準化
担当者による対応や回答のばらつきを減らし、業務の効率化、対応の標準化の一助とするため、外務省と在外公館との間でN連事業担当者向けのマニュアルを共有するとともに、年度ごとの採択方針のすり合わせを行うべきである。
(2)-2 手続の簡略化等によるN連業務の効率化
N連の資金総額・件数の増加に伴い、外務省側の業務量も増加していることから、複数年度案件の継続契約、変更手続きの簡略化、外部委嘱員の配置などを検討すべきである。また、過去の各種報告書のレビューを通じ、簡略化が可能な点や事業の促進・阻害要因を分析し、分析結果を事前相談や審査に活かすなどの対策も検討すべきである。
(3)NGOに向けた提言
(3)-1 日本の開発協力理念を伝える役割の自覚と、社会変革の触媒としての貢献
N連を利用して活動するNGOは、現地の地域社会において日本の開発協力理念を伝える「日本大使」の役割を担うとともに、社会変革の触媒となる「社会変革エージェント」としての役割も期待されるため、その責任を自覚した上で、現地での他国NGOとの交流など、事業実施以外の活動も視野に入れて活動することが望ましい。
(3)-2 自立発展戦略の検討
N連を利用して活動するNGOは、N連事業を通じて体制強化・人材育成をさらに図りつつ、将来的には公的資金によるN連を活用することなく、どのように自立・発展していくか、団体としての戦略を持つべきである。
(3)-3 世界のNGO全体への知的貢献につながる革新的事業への取組
面としてのN連の効果実現に向け、企業や学術機関との連携も踏まえ、事業の効果の有無を検証(実証実験)し、世界のNGO全体に知見を提供するような革新的な取組みに力を入れるべきである。