ODA評価年次報告書2019 | 外務省

ODA評価年次報告書2019

 2018年度 外務省ODA評価 全体の紹介

ODA評価のまとめ

外務省が2018年度に、外部の評価者に委託して実施した第三者評価の概要を開発の視点及び外交の視点からとりまとめました。

開発の視点からの評価

開発協力政策と日本のODAの上位政策、国際的な優先課題、被援助国のニーズとの整合性を検証する政策の妥当性については、おおむね高い評価結果となりました。また、開発の効果がどこまで現れているかを検証する結果の有効性においても、被援助国がかかえる開発課題に対し日本の支援が一定の貢献を果たしていることが確認され、おおむね高い評価となりました。開発協力政策の妥当性や有効性が確保されるようなプロセス(手続き)が取られていたかを検証するプロセスの適切性については、「一部課題がある」とされた評価案件が2件あり、記録の整備、情報公開の体制、広報分野において改善の余地があることが伺われます。

● レーティング

2017年度評価案件から、国民に対して評価結果をよりわかりやすく伝えるために、「開発の視点からの評価」のレーティングの表現を一部見直し、A~Dの段階評定も合わせて記載しています。レーティングは評価結果をわかりやすく伝える一方で、評価対象の個別事情や背景などが考慮されずに結果だけが一人歩きする恐れがあるため、評価結果概要をあわせてご確認ください。

開発の視点からの評価レーティングの表

(注1) レーティング基準
A 極めて高い:すべての検証項目で極めて高い評価結果であった。
B 高い:ほぼすべての検証項目で高い評価結果であった。
C 一部課題がある:複数の検証項目で高い評価結果であった一方、一部改善すべき課題が確認された。
D 低い:複数の検証項目において低い評価結果であった。

(注2)コスタリカ・ニカラグア国別評価については、ニカラグアの情勢が悪化したため現地調査は実施せず、文書や聞き取り調査によって評価を実施。コスタリカとニカラグアのそれぞれに別個に評価結果を出しているが、レーティング結果が同一であるため便宜上分けずに記載。また、提言については評価の結果に基づく「教訓」とし、二か国共通の教訓も導き出している。

外交の視点からの評価

開発協力大綱(2015年)で「開発政策は外交を機動的に展開する上で最も重要な手段の一つ」と位置づけられて以降、すべての外務省ODA評価案件において、日本の国益への影響を測る「外交の視点からの評価」を実施しています。

これは、国民への説明責任を一層果たすために、①評価対象のODAが日本の国益にとってなぜ重要と言えるのか(外交的な重要性)、②評価対象のODAが日本の国益の実現にどのように貢献したのか(外交的な波及効果)の2点を明らかにするために実施するものです。

2018年度については、外部の有識者の意見を踏まえ、より具体的な検証項目を示したことで、前年度に比べ内容・量と共に改善が見られましたが、評価案件ごとにばらつきも見られました。

外交的な波及効果が確認された例としては、ODA事業や官民関係機関の相互連携がビジネス環境整備に繋がった例(インドネシア)、JICAの専門家やボランティアによる地域に密着した協力を通じ、親日感情の醸成及び友好関係の促進に繋がった例(コスタリカ)などが挙げられます。

「外交の視点からの評価」は他国でも少しずつ類似の試みが始まっています。国際社会においては評価手法がまだ確立されていないため試行錯誤が続きますが、ODAに対する国民の理解が得られるよう、評価の一層の充実化を図っていきます。

提言への対応策

2018年度に実施した4件のODA評価のそれぞれの提言を一概に比較することはできませんが、いくつかの共通点が確認できます。今回、その共通点として次の3 分野を抽出し、その対応策をまとめました。

地方部活性化支援の更なる強化

支援対象国の開発計画において地域格差是正が掲げられている場合、都市部のみならず地方部における協力事業やより広範囲に成果が波及するような支援をすることが望ましく、国全体として底上げされるような支援についても検討することが重要であるとの提言がなされました。

「アンゴラ国別評価」では、アンゴラの新たな国家開発計画の重点項目の一つに「地域間の調和のとれた開発」が掲げられており、日本はアンゴラの地方部における協力をより積極的に実施するべきとの提言がなされました。外務省は、アンゴラ側からの要請やニーズ、目に見える日本の支援かどうかや治安情勢も踏まえて、地方部における案件の形成も検討することとしました。

「コスタリカ・ニカラグア国別評価」のうち対コスタリカ支援に関しては、これまで一部の地域に限られていた活動を、今後は全国的に成果が波及するよう支援を強化するべきとの提言がなされました。具体的には、農村地域における生活改善支援制度の構築や首都圏で実施してきた中小零細企業振興支援を全国的に普及させることが有効との指摘です。外務省は、格差是正に資する支援の実施に引き続き努め、生活改善支援については、コスタリカ側の自助努力を中核に据えた展開を検討することとしました。また、中小零細企業振興支援については現在、コスタリカ側関係者の指導能力向上を支援しています。

広報の強化

支援相手国における日本の支援の認知度を高めるため、相手国国内において日本の支援を広く広報することの重要性が指摘されました。現地大使館において、若年層を主なターゲットとした広報等、限られた予算の範囲内で、更に戦略的な広報の工夫をすることが望ましいとの示唆がなされました。

「コスタリカ・ニカラグア国別評価」のうち対コスタリカ支援に関しては、日本のODAについて、事業関係者以外の間でも認知度を高めるような広報戦略が必要との提言がなされました。例えば、日本の広報戦略をコスタリカ側と共有し、事業実施者や受益者の協力を得て、具体的な広報活動を協働で進めることが肝要であり、また、若年層を含めた幅広い年齢層に届くようにソーシャルメディアを使うなど、よりインパクトのある広報を実施すべきとの指摘です。外務省は、現地大使館において、様々な手段による広報を行うとともに、マスコミへの個別の働きかけも続けており、今後も、若年層も含めた幅広い年齢層に届くよう、広報活動に努めていきます

「2013年度トーゴに対するノンプロジェクト無償資金協力の評価」では、日本の大使館職員が常駐していない国に対する日本の支援に関する協議・広報を強化すべきであるとの提言がなされました。具体的には、日本のすべてのODA情報共有に寄与するイベントなどの定期的な実施や知日派人材育成のための研修コースの枠を日本の大使館職員が常駐していない国に留意して配分する等の施策を検討することが有効であろうとしています。外務省は、日本の大使館職員が常駐していない国への支援方法及び更なる広報の強化について、先方政府やODA関係者と協議し、先方政府のニーズ等様々な要素を考慮しながら対応していきます。

日本の支援実施体制強化と他の支援主体等との連携強化

ODAを呼び水とした民間投資の促進に繋がる支援や特定分野において比較優位を持つ民間機関、NGOとの効果的な連携により相乗効果が高まるようなODAの実施に向けて更なる工夫が重要であることが示唆されました。

「インドネシア国別評価」では、インドネシアに対する開発協力は今後民間セクターが主体となり実施されていくと見られることから、ODA関係諸機関との連携強化を更に推進することを開発協力方針に明記するべきとの提言がなされました。外務省は、インドネシア国別開発協力方針の次回改定時に民間セクター等関連機関との連携強化を記載するとしています。また、現地タスクフォースを中心に、包括的に日本のODAを通じた協力について協議する定期会合を開催するべきとの提言がなされました。外務省では、現地大使館、国際協力機構(JICA)だけではなく、国際協力銀行(JBIC)や日本貿易振興機構(JETRO)も参加した対インドネシアの開発協力の全体像を俯瞰する現地ODAタスクフォースを実施する方針です。

「アンゴラ国別評価」は、今後日本の対アンゴラ支援が増大する可能性を見据え、現地実施体制を強化する必要があるとの提言がなされました。これを受けて、JICAは、2018年7月にJICAアンゴラフィールドオフィスを事務所に格上げしました。また、今後の事業量等を踏まえつつ、現地実施体制の更なる強化の可能性を検討することとしました。

「コスタリカ・ニカラグア国別評価」では、日本が単独で実施するよりも、米州開発銀行との協調によって、より規模の大きな協力の実施、事業形成・実施の円滑化、経済的負担や作業負担の軽減等が可能となり、協調の有効性が高いことが教訓として確認されました。現在、コスタリカで2件、ニカラグアで1件の米州開発銀行との協調融資案件を実施中であり、外務省は、今後も協調融資の可能性があれば、積極的に実施を検討していきます。

個別事情を踏まえた提言(教訓)への対応策例

アンゴラでは、2017年のロウレンソ政権発足後、新しい国家開発計画が策定される等、国内状況に大きな変化が起こっています。このため、「アンゴラ国別評価」報告書において、評価結果に基づき提言された対応策を対アンゴラ国別開発協力方針や事業展開計画に新たに盛り込むべきとの提言もなされました。外務省は、被援助国の開発政策等に重要な変化等があった場合には、5年を目処に改訂する国別開発協力方針ではなく、より機動的な対応が可能な事業展開計画への反映を検討することとしました。また、国別開発協力方針の次回改訂時には、アンゴラの最新の開発計画を踏まえた内容とする考えです。

また、「コスタリカ・ニカラグア国別評価」では、多様なODA援助形態を戦略的に組み合わせて協力を行うことは、協力成果を一層拡大・定着させるとともに、効率性も高いとの教訓が導かれました。外務省は、効果的な援助形態間における連携について、引き続き積極的に可能性を追求することにしています。

「2013年度トーゴに対するノンプロジェクト無償資金協力の評価」では、調達品の納品から販売・活用までのモニタリングと記録の改善についての提言がなされました。外務省は、被援助国政府の意向等を可能な限り具体的に聴取し、確実にフォローしていきます。

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