ODA評価年次報告書2019 | 外務省

ODA評価年次報告書2019

2018年度外務省ODA評価結果概要

アンゴラ国別評価 <概要>

(注)下記は評価チーム作成の報告書(和文)本文に基づき、ODA評価室が作成したものです。 全文はこちらからご覧いただけます。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000496681.pdf new window

評価者
(評価チーム)
評価主任 稲田 十一
専修大学経済学部教授
アドバイザー 村尾 るみこ
立教大学 21世紀社会デザイン研究科助教
コンサルタント NTCインターナショナル株式会社
評価対象期間 2006年度~2017年度
評価実施期間 2018年7月~2019年3月
現地調査国 アンゴラ
日本企業が円借款で建設中の橋梁の写真

日本の支援事業における地域住民への地雷回避教育の風景

評価の背景・対象・目的

アンゴラは、2002年の内戦終結以降、安定した国内政情を保ち、国際社会では、ポルトガル語諸国共同体(CPLP)の議長国を務めるなど地域大国としての存在感を高めている。また、同国は石油など豊富な資源を有し、日本の民間企業も関心を示している。本評価は、日本のアンゴラに対するODA政策及び協力実績を全般的に評価し、今後のODA政策の立案や実施のための提言や教訓を得ること、また国民への説明責任を果たすことを主な目的とする。

評価結果のまとめ

● 開発の視点からの評価

(1)政策の妥当性 (評価結果:A 極めて高い)

対アンゴラ開発協力政策は、ODA大綱(2003年)及び開発協力大綱(2015年)などの日本のODA上位政策、アンゴラの開発ニーズ、国際的な優先課題と整合性を有し、きめ細やかで日本の知見や経験を生かした人材育成、複数のスキームを組み合わせた継続的な支援、ポルトガル語を母国語とするブラジル人人材を活用した協力など、日本の比較優位性を発揮している取組が確認された。

(2)結果の有効性 (評価結果:B 高い)

対アンゴラ支援は、二国間及び多国間ドナーによる対アンゴラODA累計額(2006~2016年)の10%を占めて、上位4位に位置しており、支援金額に応じた一定の貢献を果たしている。また、日本国政府は、対アンゴラ国別開発協力方針の各開発課題を着実に支援しており、アンゴラの持続可能な経済成長を支える産業政策や経済・社会インフラ整備の推進、アンゴラの成長を支える多様な人材育成、人間の安全保障に貢献している。

(3)プロセスの適切性 (評価結果:B 高い)

対アンゴラ開発協力政策は適切なプロセスを経て策定され、対アンゴラ支援実施プロセスもおおむね適切であった。なお、ODAの事業形成に至る手続や準備など事業開始までのプロセスの更なる迅速化と、アンゴラの一般国民やアンゴラ政府関係者の中での日本の支援の認知度の更なる向上が望まれる。

● 外交の視点からの評価

(1)外交的な重要性

アンゴラは、CPLPや南部アフリカ開発共同体 (SADC)の議長国を務めるなど、アフリカ地域の大国の1つとして存在感を増しつつある。また、2017年9月に発足した新政権は日本との二国間関係の強化に高い関心を示しており、両国間の外交的な関係の重要性はより一層高まっていくものと考えられる。また、アンゴラは経済面において潜在性を有しており、新政権は特に日本との経済関係を強固にしたい意向を示していることから、経済的な観点からも重要性が高い。更に、紛争後に平和の定着を実現させ、発展を遂げてきているアンゴラの改革努力を後押しすることは、サブサハラ・アフリカ地域の安定の観点から重要な意義があると言える。

(2)外交的な波及効果

二国間関係への波及効果として、ロウレンソ大統領が就任演説で日本を重要なパートナーとして取り上げ、アンゴラ要人が日本の支援を高く評価していることが確認できた。また、日本/日本国民への波及効果として、日本非政府組織(NGO)連携無償資金協力によって本邦NGOが実施した地雷対策支援を通じた親日家の醸成など、社会的側面から一定の効果が見られた。現段階では、日本の対アンゴラ支援による日系企業への経済的な波及効果は確認されないが、新政権が進める汚職撲滅やビジネス環境整備に向けた取組により、今後の日系企業進出や投資活発化が期待される。

評価結果に基づく提言

(1)日本の対アンゴラ国別開発協力方針や事業展開計画への新しい国家開発計画等の反映

2017年のロウレンソ新政権発足後、アンゴラでは新しい国家開発計画が策定されるなど国内状況に大きな変化が起こっている。このため以下に挙げる提言(2)~(4)を対アンゴラ国別開発協力方針や事業展開計画に新たに盛り込むべきである。

(2)地方部における協力の積極化

新しい国家開発計画の重点項目の一つに「地域間の調和のとれた開発」が挙げられており、日本はアンゴラの地方部における協力をより積極的に実施するべきである。

(3)円借款の活用

国民の所得水準が比較的高いアンゴラに対しては、無償資金協力の供与に制約があることから、アンゴラの開発ニーズに合致した多額の資金提供が可能である円借款を有効に活用した支援を行うべきである。

(4)投資環境整備分野の支援

日本の対アンゴラ民間投資/ビジネス進出が停滞している。また、投資環境整備は、ロウレンソ新政権が取り組む重要課題である。こうした状況を踏まえ、投資環境整備分野の日本の支援の可能性を探求すべきである。

(5)現地実施体制の強化

今後、日本の対アンゴラ支援の案件数や金額が増える可能性を見据えつつ、日本の対アンゴラ支援の現地実施体制を強化する必要がある。

(6)日本のODA広報の強化

日本の対アンゴラ支援(JICAの存在も含めて)のアンゴラにおける認知度を高める重要性が本評価で確認されたことから、日本のODA広報の一層の強化が必要である。

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