ODA評価年次報告書2018 | 外務省

ODA評価年次報告書2018

コラム

SDGs時代の評価のあり方について議論(第15回ODA評価ワークショップに参加して)

世界中の先進国と途上国が協力して持続可能な開発目標(SDGs)を達成するに当たって、評価の役割はますます重要になっています。アジア・大洋州諸国の政府関係者や専門家の評価能力の向上を目的として、2001年度から外務省によって開催されてきた「ODA評価ワークショップ」は、今回で第15回を迎えました。今年度は、「持続可能な開発目標(SDGs)の時代における評価能力開発」と題して、外務省とスリランカ国家政策経済省との共催により、2018年2月7日から8日にかけてスリランカのコロンボで開催されました。これまでは、日本(東京)、またはマレーシア、フィリピン等アセアン諸国で開催されてきましたが、今回は初めて南アジアでの開催となり、日本、スリランカを含むアジア大洋州の15か国のODA評価担当機関から42名が参加しました。

私にとっては、今回が初めての同ワークショップ参加でした。全体を通して、外務省の側面支援を受けつつ、スリランカ政府が、コロンボ大学及びスリランカ評価協会と連携して、スリランカ国としてリーダーシップをもってワークショップを進めていること、そして、参加者全員が熱心に議論に参加されていることが非常に印象的でした。

ODA評価ワークショップの第1セッション「ODA評価の役割と国際的潮流」では、国際機関の国連開発計画(UNDP)及びアジア開発銀行(ADB)から、SDGs指標への取組やモニタリング評価の重要性について発表があり、これを受けて、スリランカ政府から、同国における機能重視・参加型評価を重視する取り組みについて発表が行われ、続く議論を通して評価における国際的な協働強化の重要性が確認されました。

私は、第2セッション「SDGsへの対応と取組」において、「『SDGsの計画・運営促進に係る情報収集・確認調査』からの学びと題して、インドネシアにおけるSDGsの進捗状況について報告させていただきました。「インドネシア政府はSDGs達成への行動計画を策定し、モニタリング評価体制も整えつつあるものの、地方レベルのデータ収集体制や民間との連携のあり方などが今後の課題である」と発表したところ、インドネシア政府参加者からは、同国では地域格差等を重視して「誰一人取り残さない」ことを念頭に対応を進めていること、スリランカ評価協会のコメンテーターからは、「インドネシアは他国より一歩進んでいることは分かったが、ジェンダーや不平等に関する指標をローカライズするに当たってはよりオープンな議論が必要であろう」という、貴重なコメントをもらいました。

第3セッション「各国におけるSDGsへの対応と取組」では、外務省が事前に行なった参加各国へのSDGsへの対応と取組に関する質問票調査とりまとめ結果の発表があり、SDGs指標のデータ収集・管理が課題であることが確認されました。第4セッション「ODA評価の多様性」では、JICAからプロセス評価の有用性、外務省からは政策レベル評価における外交の視点からの評価の取組事例が発表され、援助機関において評価から得られる学びをより実質的なものとするための改善策とその成果が共有されました。

上述の通り、ワークショップ全体を通して有意義な議論がなされ、私にとって大きな学びとなりました。同時に、これまでのODA評価ワークショップを通して、参加各国の間に、評価の役割とその改善へ向けての連携の重要性に対する共通認識と信頼関係が醸成されていることを強く感じました。日本やアセアンの中進国に加えて、南アジアのスリランカが開催国を務めてリーダーシップを発揮したことも有意義な成果の一つだったと思います。

特定非営利活動法人日本評価学会 副会長
広島大学教育開発国際協力研究センター 教授
石田 洋子

ODA評価ワークショップ出席者の写真

ODA評価ワークショップ出席者

ODA評価ワークショップ会合の様子の写真

ODA評価ワークショップ会合の様子

 

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