ODA評価年次報告書2018 | 外務省

ODA評価年次報告書2018

コラム

ウガンダ 裾野が広がる二国間交流 (ODA と民間連携)

柏田氏と創業者の前社長の写真

柏田氏と創業者の前社長の記念写真。ウガンダ製オーガニックコットン製品と一緒に

ウガンダの人々にとって、日本は遠いアジアの国であり、二国間の人材交流の範囲はまだ限られています。そんな中、「ウガンダの父」と呼ばれ、慕われた日本人がいます。オーガニックコットンを原材料としたウガンダ特産の衣料品づくりに尽力した、柏田雄一さんです。山崎豊子さん作「沈まぬ太陽」アフリカ編に登場する「富士ワイシャツ」の「松田工場長」のモデルにもなりました。

柏田氏は1965年から、当時、現地で評判が高かった「ヤマトシャツ」の製造・販売を陣頭指揮しましたが、内戦のため1980年代にやむなく帰国。その後ムセベニ大統領の強い要請を受けて1999年にウガンダに戻り、再び衣料工場を立ち上げました。しかし、安価な中国製輸入衣料品におされ経営不振となり、2015年に日本に帰国しました。

この柏田氏の偉業を継ぐべく立ち上がったのが、大阪府泉佐野市にあるスマイリーアース社の社長、奥龍将さんです。同社はウガンダ製オーガニックコットンを輸入し、ウガンダ北部産品を使った独自精練技術により、環境にやさしい高品質の綿製品、タオルなどを製造・販売しています。同社は父の奥竜一さんが2005年にアフリカを旅した時に、柏田さんに出会い、感銘を受けて、2008年に「ほんまもんのオーガニックコットン製品作り」を目指して創業しました。

その後、スマイリーアース社の提案が2015年度の国際協力機構(JICA)の中小企業海外展開支援事業(案件化調査)として採択され、同社はオーガニックコットン産地であるウガンダ北部地域において「オーガニック精練技術を活用した綿花製品の付加価値向上に関する案件化調査」を実施しました。

興味深いことに、この調査をきっかけに、日本タオル製造発祥の地でもある泉佐野市とウガンダ北部地域のグル市との交流が生まれました。一企業の取り組みが自治体間の交流に発展したのです。

2016年4月、グル市から市長をはじめとする代表団が来日し、泉佐野市を訪問しました。同年7月には、泉佐野市長がグル市を訪問しました。2017年7月には両市が友好都市提携を締結し、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは泉佐野市がウガンダのホストタウンになることが決まりました。

このように両市の関係は、スポーツ交流など市民を巻き込む幅広い関係構築へと発展しつつあります。これは民間ベースの交流がもたらす裾野の広さを示唆しています。 近年ウガンダでは事業を立ち上げ奮闘している若い日本人企業家が増えています。その中には、青年海外協力隊OB・OGが草の根協力で培った現場力を活かして、日本企業の現地展開に貢献しているケースがあります。

ウガンダ国別評価においては、こうした交流の深化はODA事業をきっかけとした民間事業が民間企業の海外展開に繋がり、さらに民間企業のイニシアチブが自治体間の交流に繋がったという、ODAの外交的な波及効果として高く評価されています。

出所: 評価チームによるスマイリーアース社とのインタビュー(2017年9月21日)、及び在ウガンダ日本大使館HP(カンパラ通信~ナカセロの丘から(第2回・第15回)、亀田和明大使による執筆)を参考にした。

注記:株式会社スマイリーアースは2017年7月に第19回日本水大賞で経済産業大臣賞を受賞し、2018年2月に第7回ものづくり日本大賞で経済産業大臣賞を受賞。2018年9月3日付で第1回在外公館長賞(在ウガンダ日本国大使館)を受賞している。

グル市で大歓迎をうける千代松・泉佐野市長の写真

グル市で大歓迎をうける千代松・泉佐野市長(写真:在ウガンダ日本大使館HP)

 

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