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山花外務大臣政務官のバングラデシュ訪問について
(概要と成果)

平成23年1月
国際協力局


 山花郁夫外務大臣政務官は,1月15日(土曜日)から18日(火曜日)まで,青年海外協力隊(JOCV)をはじめとするJICAボランティア事業の現場を視察することにより今後の事業のあり方を検討する上での参考とすること,及び対バングラデシュ経済協力につき関係者と意見交換することを目的として,バングラデシュを訪問しました。

1.主要日程 

1月15日(土曜日)
JOCV隊員との懇談
1月16日(日曜日)
JOCV隊員及びシニア海外ボランティア(SV)の活動現場視察,無償資金協力案件視察,邦人援助関係者との懇談
1月17日(月曜日)
JOCV隊員の活動現場視察,無償資金協力案件視察,JICA関係者との懇談

2.成果 

(1)JOCV隊員,シニア海外ボランティア(SV)の活動現場視察,意見交換

【JOCV隊員との懇談】

(写真)

 首都ダッカ及びその近郊で環境教育,スポーツ,コンピュータ技術指導等の活動を行う計9名のJOCV隊員と意見交換を行いました。隊員から,JOCV事業の意義,今後の課題などについて主に以下の意見が出され,今後の事業の改善と効果的実施に向けた方策を検討する上で有意義な機会となりました。

  • JOCVが伝える「技術』とは,日本人が当然身につけている計画性や公衆の概念を含むもので,日本人で あること自体で途上国に伝えられる「技術」がある。
  • 要請から派遣まで時差があるため,派遣時には要請時と事情が変わっている場合もあるが,「やってくれ」と言われたことだけをやるようではJOCVの意味がない。
  • 現地の習慣や考え方が分かった人間が企業の中に入らないと,日本企業は現場感覚不足で中国や韓国企業に負けてしまう。JOCV経験者がもっと企業で活用されるべき。

 

【JOCV隊員が活動中の村落(ジョゴトプール)を訪問】

(写真)

 バングラデシュにおける貧困削減のためには農村の開発が重要ですが,農村住民の声が地方行政の担当者に届きにくい実態があったため,我が国は農村住民のニーズを汲み取り,当該ニーズを行政サービスに結びつける方策について研究協力を行いました。JOCV隊員がジョゴトプールでそれを実施に移しています。

(写真)
 視察時にはジョゴトプール住民の集まり(村落会議)が開かれており,住民からバングラデシュに対する我が国の長年の支援,特にJOCV活動に対して深い感謝の意が示されました。
 また,JOCV隊員が現地のコミュニティに溶け込み,住民から慕われている様子が実感できました。

 

【シニア海外ボランティア(SV)による空手普及活動視察】

 ダッカ市内で,シニア海外ボランティア(SV)が,空手の普及,国内の競技会の企画・運営の助言等を行う活動をしています。
 視察の際,SVより「空手の指導を通じて,スポーツとしての空手の技能向上もさることながら,時間を守るとか礼節を重んじるといった日本人の資質,日本の文化を理解してもらえる,それが人づくりにつながっていくと考える。」との説明があり,スポーツ分野での支援の意義を実感できました。

 

【JOCV隊員が小学校で実施した環境教育を視察】

(写真)
 ダッカ市内の小学校で,JOCV隊員が清掃管理員とともにゴミの分別をテーマにした環境教育を実施し,生徒及び学校関係者の環境問題に対する理解を促進する活動を行っている現場を視察しました。
 授業では,ゲームを取り入れる等して小学生がゴミの分別方法とその意義を学べるようよく工夫されており,JOCV隊員の熱心な教え方と小学生たちがそれに真剣に聞き入っている様子が印象的でした。

 

【JOCV隊員によるスポーツ指導活動現場の視察】

(写真)
(写真)
 ダッカ市近郊の国立スポーツ学院では,JOCV隊員がバングラデシュの若者にサッカー,水泳,テニス,バスケットボールの指導を行っています。
 今回,同学院においてJOCV隊員の活動現場を視察した際,隊員から以下の意見が示され,スポーツ分野での支援の重要性が改めて認識されました。

  • スポーツは人を育てる上で重要な手段。その影響力の大きさを人材育成に使わない手はない。
  • 競技のレベルアップを図るだけであればプロのコーチを雇った方がバングラデシュのためにもなるにも拘らず,なぜJOCVの要請があるかと言えば,日本人の規律や礼儀正しさが評価されているから。

 

(2)無償資金協力案件視察

【一般無償資金協力により建設された「メグナ橋」を視察】

(写真)
 1986年度から5年間に亘り我が国の一般無償資金協力により建設されたメグナ橋を視察しました。同橋は,川で分断され,従来フェリーでの輸送に頼っていた首都ダッカと第二の商業都市チッタゴンを結ぶ幹線道路(国道1号線)を橋で結ぶことにより,物流を促進することを目的に建設されました。
 現場を訪問し,この橋を通る自動車の活発な往来を目の当たりにして,本件無償資金協力の効果を実感することができました。

 

【一般無償資金協力により建設された下水処理場を視察】

(写真)
 1988年度から2年間に亘り,ダッカ市郊外に我が国の一般無償資金協力(「下水道網整備計画」)により建設された下水処理場を視察しました。
 上記計画においてはバングラデシュ側が下水管の補修・清掃等を自己負担により行うとされていますが,予算の都合等によりこれが十分に行われていないため,視察した下水処理場も,残念ながら所期の効果を十分に発揮しているとは言えない状況にあります。
 この点については,先日外務省が発表したODAのあり方検討のフォローアップ報告(詳しくは http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/kaikaku/mieruka/index.html 参照)の中にも含まれていますが,協力を実施した後のフォローアップの重要性を改めて実感しました。

 

(3)邦人援助関係者等との懇談

 バングラデシュ支援の現場で活躍されている日本の援助関係者の方々(JICAの職員や専門家,NGOスタッフ等),及びJETROの所長らと日本大使公邸において懇談し,日本の対バングラデシュ支援のあり方や官民の連携等につき貴重なご意見を頂戴しました。

(写真)

 出席者の方々から出された主な意見は次のようなものであり,バングラデシュに対する我が国の今後の支援に関してはもとより,ODAのあり方や開発途上国との経済関係促進の方策を考える上で非常に有益な機会となりました。

  • バングラデシュでの「日本」ブランドの高さ,対日感情の良さは特筆に値するが,これは日本の支援の長い歴史の蓄積であり,その中でJOCVが果たした役割は大きい。
  • JOCVの仕事は,現地の人々のやる気を引き出し,行動様式を変えることであり,効率性だけでは成否を判断しにくい。こうした地道な協力を行っているのは日本だけ。
  • JOCV隊員の地道な活動の成果を日本国内でも活用すべき。

 

(4)JICA関係者との懇談

 帰国直前の17日夕,JICAバングラデシュ事務所の所長や健康管理員,また,JOCV・SV担当の企画調査員(ボランティア担当)らJICA関係者と懇談しました。この席では,事業仕分けで指摘を受けたボランティア事業の実施方法やボランティア担当の企画調査員の役割・待遇,そしてJICA事務所のボランティア事業への関与のあり方等につき,実情に即した率直な意見を聞くことができました。

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