1.日中関係の現状と展望
(1)日中関係の現状
(イ)中国の発展と変化
中国は改革・開放政策の下、経済・社会面を中心に大きく発展・変化、開放の度合いも増加。反面、貧困や地域間格差への対応は中国としての課題のみならず国際的課題。
(ロ)日中関係の質的転換
- 日中関係は全体として望ましい方向で発展。質的にも転換。
- 日中両国ともグローバル化の動きに組み込まれる中で、相互依存関係が深化
- 二国間「善隣友好」関係から「平和と発展のための友好協力パートナーシップ」へ
- 両国間に問題が少なからず存在(歴史問題や台湾との関係。中国おける核実験、軍事費の増大など。)
(2)日中関係の展望と対応
- 我が国の対外関係の基本は、我が国の安全と繁栄の維持・強化。
- そのためには、平和な国際環境の保持、特に東アジアの安定と発展が不可欠。
- 中国が開かれた社会となり、「国際社会の一員」としての責任を一層果たしていくことを強く期待。
- このため中国が国際社会への関与と参加を深めるよう働きかけ、またそうした努力を支援することが必要。
- 以上の努力の前提としての確固たる安全保障体制の存在(日米安保体制の堅持、ARF等多国間協力の枠組みの中での信頼醸成)。
2.対中ODAを巡る状況の変化と新たな検討の必要性
(1)対中ODAを巡る状況の変化
- 我が国の厳しい経済・財政事情の下、日本国内において、ODAのあり方について厳しい議論。
- 特に対中ODAについては、中国の国力増大を背景に様々な批判あり。
- 民間資金の増大に伴い、我が国ODA資金に対する中国の期待・需要の対象が変化(環境、貧困等)、またソフト面の開発需要が増大。
(2)今後の対中ODAを進めるに当たっての考え方
- 我が国国民が納得し支持できるような援助が重要。
- 中国が自ら実施できることは自ら行う。
- ODAその他公的資金、民間資金の連携を図り、目標の効率的かつ効果的な実現を図る。
- 国際社会への一体化を促進することが重要。
- 対中援助が軍事力強化に結びつくこと等、ODA大綱の原則にそぐわないことのないよう注意。
- 対中ODAは、従来の支援額を所与のものとせず、新たな支援需要に適切に対応しつつ、我が国の厳しい財政事情を勘案し、下記の重点課題・分野を踏まえ、個別具体的に案件を審査の上、実施。
3.21世紀の対中経済協力の重点課題・分野
- 具体的な案件の審査・採択に当たっては以下の重点課題・分野を中心とする。
- 従来型の沿海部中心のインフラ整備からより環境保全、内陸部の民生向上や社会開発、人材育成、制度作り、技術移転などを重視、また、日中間の相互理解促進により資する。
(1)改革・開放支援
(例)
- 世界経済との一体化支援(制度整備・人材育成支援を含め市場経済化の促進、世界基準・ルール(WTO協定を含む)への理解促進)
(2)環境問題など地球的規模の問題を解決するための協力
(例)
- 環境保全(水資源管理を含む)
- 感染症対策(HIV/AIDS、結核)]
(3)相互理解の増進
(例)
- 留学生支援
- 青年交流
- 文化交流
- 学術交流・大学間交流の強化(日本研究促進、日中共同研究を含む)
(4)貧困問題克服のための支援
(例)
- 沿海部と内陸部の格差是正、都市と農村の格差是正、社会的弱者対策等の支援
- 貧困層を対象とした草の根レベルの保健・教育分野の支援、貧困人口を多く抱える地域の民生向上に向けた協力で貧困層に裨益するもの
(5)民間活動への支援
(例)
- WTO加盟支援(知的所有権保護政策の強化等)
- 本邦企業の円借款受注率の向上に資する工夫
(6)多国間協力の推進
(例)
- 第三国(アフリカなど)に対する支援活動を協力して実施
- 環境分野等、東アジアにおける域内協力の推進
4.実施上の留意点
(1)政策協議の強化
ODA大綱についての中国側の認識の徹底
(2)日本国民に対する対中援助の透明性の向上
情報公開の促進、分かりやすい情報の提供、インターネットの活用
(3)顔の見える援助の推進
(イ)地方政府の直接の意向を反映した案件形成
(ロ)我が国の地方自治体・NGOとの連携強化
(ハ)中国での草の根レベルでの支援強化(草の根無償資金協力の活用)
(ニ)広報の強化(テレビ・インターネットの活用など)、協力案件への広報費用組み込み
(4)対中技術協力の一層の活用とあり方の見直し
ソフト面での援助を重視、そのための我が国における体制整備、資金協力との連携の一層の強化
(5)プロジェクトの共同形成
プロジェクトの共同形成主義の徹底(円借款のロングリスト化等)
(6)その他
(イ)モデル・アプローチ(特定モデル地域開発のための重点的援助及びモデル・プロジェクトの実施と普及)
(ロ)旧輸銀資金及び民間資金との関係の整理(役割分担の明確化と連携の強化)
(ハ)国際機関(世界銀行、アジア開発銀行)など主要援助機関との連携強化
(ニ)二国間及び域内協力を念頭に置いたIT協力の検討並びに推進
(ホ)国内における留学生受入れ体制の強化
(ヘ)「対中援助評価委員会」の設置