グローカル外交ネット

令和4年6月23日

在トロント日本国総領事館

 カナダの最大都市トロントは、年間を通じて大きな国際会議が行われ、多くの人が来訪します。食品の関係では、レストラン・カナダ・ショー(以下、RCショー)という食関連事業者(レストラン・食材店等)を対象としたカナダ最大の食品関連展示会があります(2023年は4月10日から12日開催予定)。
 本年は5月9日から11日までの3日間、3年ぶりにRCショーが有人で開催され、ジェトロ/日本ブースに岩手県と愛媛県が参加されました。両県から最高レベルの日本食品が展示され、多数の来場者がブースに列をなしました。今回はジェトロ、総領事館、岩手、愛媛の両県の皆様との協力で成功裏に行われたRCショーの様子についてご紹介します。

1 カナダの最大都市・トロントの土地柄

 トロントはカナダ最大の都市であり、北米でも人口規模では5本の指に入る大都市です。トロントの住民の半数以上はトロント以外で生まれ、移住者の街といわれています。アジア系はもちろんヨーロッパ、ラテンアメリカ、中東など多くのエスニックグループが存在し様々な文化が同居しています。この国際色豊かな土地柄のため、様々な食品や文化への許容度も高いと言えます。また移住者を中心に現在でも年間100,000人以上の人口増加が見られる、北米でも希有な成長都市です(人口増加率は北米第1位)。
 レストラン業界も近年賑わいを見せ、今年秋には「ミシュラン・ガイド・トロント」の初版が編集されると発表がありました。
 日本食については、ある意味すでに街中に溢れているといえます。ネットで「ジャパニーズ・レストラン」を検索すれば実に1,000軒近いお店が表示されます。トロントの有名フレンチレストラン等でもゆずやこうじ等、高品質の日本産食材を好んで使用しているシェフが続々と現れ、カナダの人は「本当の日本食」「本当の日本食材」をどこに行けば購入でき、また楽しむことができるのかを求めている状況だと言えましょう。

2 RCショーへの参加

 農林水産省は日本産食材等の海外展開支援の事業を行っています。(現地小売・飲食店や流通事業者等と連携した日本産食材等の販路開拓支援事業)。これを活用して、トロント・ジェトロ事務所とも連携し日本政府として実に15年ぶりにRCショーへの参加が決まりました。
 具体的な展示者については、コロナ禍前よりカナダに着目し、プロモートされてこられた、岩手県と愛媛県にお声掛けさせていただきました。両県よりただちに参加の意向が示され、こうして優良な生産現場を抱える両県の参加が決まりました。

3 RCショーまでの準備

 すでに日本食品は一定程度マーケットに展開されている状況で、また日本食だけではなくイタリアンや中華、インド料理などエスニック系の料理のライバルも多い中でどのように日本産品を売り込んでいくか、先進国の成熟したマーケットに切り込んでいくという課題に対処するには、単に展示会にものを並べる、と言うだけでは不十分と言えます。
 そこで岩手県と愛媛県にお願いをし、ショーに先立ち総領事公邸に両県の食材を送付いただき、高級スーパーやレストランの方々をお招きした試食会を5回にわたり実施いたしました。多くの来訪者があり他のブースも立ち並ぶ巨大展示会場ではそれほど踏み込んだ話はできません。公邸において実際のメニューに仕立てながら対面で食材関係者(高級スーパーやハイエンドレストラン等)に試食いただき、県からの販促資料や動画を見てもらい説明をしました。実際、1部の食品についてはその場で直ちに購入したい、と言う業者もおられ、その後ジェトロに個別のフォローアップをお願いする流れになりました。

4 RCショー本番

 3年ぶりの対面開催となったRCショーには、500以上の事業者が出展されました。また日本ブースを訪れた方にバーコードで登録をお願いしたところ、毎日250人を越え合計800人近くの登録来場者がありました。実際にはこれ以上の方々がブースを覗いていかれたと思います。
 ブースには愛媛県から3名(養殖魚、柑橘、日本酒担当)が、また岩手県も従来からカナダで農林水産物の海外輸出事業サポートをされている契約のコンサルタント会社から2名がブースに立たれ、連日列をなす来場者に愛媛の環境配慮型シマアジ養殖技術や岩手の「サステナブル和牛」、岩手県産米等を説明し、試食も勧めておられました。カナダ人は環境意識が非常に高く、他ブースにビーガンミートやオーガニックが立ち並ぶ中で、非常に効果的な宣伝ができたとの実感があります。
 この種の展示会では、実際の契約に結びつくのは数件ほどであることが多いようですが、事前に試食会を行ったことにより今回のショーでは予想以上の関心が寄せられ、かなりの成約につながりそうだということです。両県や展示を行われた事業者の方もかなりの手ごたえを感じたとのことでした。愛媛県は滞在期間中、長年取引のある日本レストラン協会加盟店の1店舗で愛媛フェアを展開し、こちらも大盛況であったと伺っています。
 日本ブースの様子はNHKにも取り上げられました。日本経済新聞の記者も取材に訪れ、当地のレストラン等の日本食に対する関心の高まりを「非日系人の需要を取り込んだ第2の日本食」ブームとして紹介してくださいました。日本の産地の皆様、生産者の皆様が、少しでも海外マーケットにおいて注目され、可能な限り産地と海外の食卓、消費者を直接結ぶためのお手伝いを、在外公館としてできれば幸いです。愛媛は養殖魚(シマアジ、マダイ、ブリ等)、岩手はいわて牛を展示。愛媛県はかんきつジュース等も展示。濃厚な味わいに多くのカナダ人が目を丸くしていた。いわて牛の魅力をステーキを提供して丁寧に紹介。

  • (写真1)魚、肉の展示の様子
    愛媛は養殖魚(シマアジ、マダイ、ブリ等)、岩手はいわて牛を展示。
  • (写真2)ジュース瓶の展示の様子
    愛媛県はかんきつジュース等も展示。濃厚な味わいに多くのカナダ人が目を丸くしていた。
  • (写真3)牛ステーキの提供の様子
    いわて牛の魅力をステーキを提供して丁寧に紹介。
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