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米国カリフォルニア州リバサイド市ホワイトパーク「結心庭」の修復事業
仙台市建設局百年の杜推進課
1 経緯
仙台市では1957年から米国リバサイド市と国際姉妹都市提携を結んでおり,2007年に提携50周年を記念して,リバサイド市ホワイトパーク内に日本庭園(結心庭)が造られました。しかし設置から10年以上経過し,施設の劣化や樹木等の繁茂が顕著となり,リバサイド市側が修復を希望していたことから,今回,国土交通省の海外日本庭園再生プロジェクトを活用し,一般社団法人宮城県造園建設業協会と本市が共同して,リバサイド市の修復事業を支援することとなりました。
2 実施体制
リバサイド市との連絡調整は本市が行い,一般社団法人宮城県造園建設業協会から技術者4人を派遣しました。技術者派遣に際しては,一般社団法人日本造園建設業協会宮城県支部と宮城県造園芸協同組合の協賛を頂きました。
現地での修復作業のサポートとして,日本の仙台リバサイド交流連絡会と現地のリバサイド国際交流協会仙台委員会の連携により,作業ボランティアや活動資金の確保,通訳などの提供を受けることができました。
3 事前調査
2018年10月24日から28日までの期間で一般社団法人宮城県造園建設業協会から2名,本市からは1名の計3名により事前調査を行いました。結心庭の修復箇所等の現状把握,資材販売店での材料供給状況,ホワイトパークでの植栽管理業者からの管理状況のヒアリング等の調査を踏まえ,リバサイド市の担当者と修復方針について打合せをしました。
また,リバサイド国際交流協会仙台委員会が開催したパーティ等の募金イベントにも参加し,早速,国際交流も果たしてきました。
4 修復作業
事前調査を踏まえ,修復作業の日程は2019年1月28日から2月3日までの7日間とし,一般社団法人宮城県造園建設業協会から4名の技術者を派遣し,作業を行うこととしました。
主な作業内容は心字池の石組護岸の修復,石燈籠・景石の設置,園路への飛石設置,植栽の移植・剪定等で,ししおどしなど一部の施設については,事前に日本で製作したものを現地へ輸送しました。
作業を進めていくと,現地で調達できた機材等が,普段日本で使用しているものより大型で扱いにくかったこと,日本であれば簡単に用意できる景石の据え付けに必要なチェーンブロックの手配がうまくいかなかったこと,普段は雨が少ない地域なのに日程の後半は,まさかの雨続きになったこと(雨男は派遣していなかったはずなのですが)等,少なからずアクシデントの発生がありました。中でも,樹木の調達について,事前調査時に日本庭園に合うものとして規格,樹勢等を吟味して発注したにもかかわらず,違う樹木が納品されてしまい,幹の曲り具合による日本庭園独特の雰囲気を作りだすのに,かなり苦労しました。
作業を通じてボランティアの方々には大変助けられました。特に,護岸に再利用する石組みについては,何千という数の石に張り付いていたモルタルを丁寧に削り取ってもらえ,その後の作業がスムーズに行えました。
また,ボランティアは現地と仙台との混成チームで,言葉が通じなかったのですが,ゼスチャーでコミュニケーションをとりながら,楽しそうに作業をしていたのが印象的でした。その甲斐もあって,何とか無事完了させることができました。
なお,現地ボランティアの中には軽犯罪歴のある未成年がいたのですが,社会貢献として精いっぱい作業をするその姿には,考えさせられるものがありました。
5 米国文化を垣間見る
一日の作業が終わると,夜は盛大なおもてなしを頂きました。期間中のホームステイ先のホスト様が大変お酒の好きな方で,お酒を毎晩振る舞われましたので,翌日の作業に影響が出ないようにするのに必死でした。
また,滞在時にちょうどアメリカンフットボールの最高峰のスーパーボウルの中継があり,ホームパーティが開かれました。ホストファミリーの友人がたくさん集まり,プレイ一つに皆が熱い応援をするその様子には,ただただ圧倒されるばかりでした。
6 おわりに
限られた時間の中,海外での日本庭園修復という不慣れな作業となりましたが,参加した全員に全力で取り組んでいただけました。その結果,この度の作業は,修復というよりは,むしろリニューアルに近い内容となりました。やるからにはいいものを残したいという職人の心意気の表れで,その仕上がりに関してはリバサイド市民の皆さんにも大いに喜んでいただけました。また,リバサイド市議会に呼ばれ,一人ずつ紹介されるとともに,感謝状もいただきました。
今回の作業を通じて,両市の交流を深め,友好関係の向上に貢献できたことは,大変意義深い事業だったと考えております。今後も両市の交流がさらに深まり,日米両国の友好発展に寄与していければと切に願うものであります。
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生まれ変わった結心庭
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リバサイド市からの感謝状
(ベイリー市長やスタッフとの記念撮影) -
ボランティアの皆さんと飛石設置作業