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天皇誕生日祝賀レセプションにおける地方の魅力発信について(在インドネシア日本国大使館)
在インドネシア日本国大使館
吉田 一穂
1 レセプション概要
令和2年2月18日,在インドネシア日本国大使館は,ASEAN日本政府代表部と共に,ジャカルタのムリア・ホテルにおいて天皇誕生日祝賀レセプションを開催しました。今回のレセプションは,令和初の天皇誕生日祝賀レセプションとして当地での注目度も高く,インドネシア政府閣僚をはじめとする千名を超える来賓をお迎えしました。また,この機会を捉え,日本の魅力や技術,当地への貢献等についてPRすることができました。中でも,今回は福島県,静岡県,岐阜県,愛媛県の4県がブースを出展し,各自治体の魅力について来賓へのPR活動を実施しました。当館では,日本とインドネシアが国交樹立60周年を迎えた平成30年の天皇誕生日祝賀レセプション以来,特に地方自治体と連携した日本の魅力の発信を積極的に実施してきています。今後さらなる連携強化を図る観点から,各自治体の成功事例についてご紹介いたします。
2 各自治体の出展内容
福島県は,喜多方ラーメン,ぴちぴちピーチ(桃の甘露煮),県産米を利用したおにぎり,あんぽ柿(干し柿)などの食品の提供を実施するとともに,県のスタッフが,地元企業が制作している,日本の着物を再利用したイスラム教徒向け衣服を着用して,地元産品をPRしました。喜多方ラーメンを中心に人気を博し,閉会まで列を途切れさせることなく県の魅力をPRしていた点が印象的でした。
岐阜県は,飛騨牛のステーキと地酒を提供しつつ,地元の伝統工芸品の展示を実施しました。とりわけ,飛騨牛のステーキは来賓にも大人気で,ブースには長蛇の列ができるほどでした。また,列に並んでいる方々に,パンフレットの配布や展示品の説明をして,効果的に県の魅力をPRしている点が特徴的でした。
そのほか,静岡県は煎茶,高知県は柚子ジュースと昆布茶を提供し,特にイスラム教徒の多い当地の多くの来賓に喜ばれ,その高い品質を評価されていました。特に,静岡県ブースは,当館の日本文化紹介の事業の一環で行われた琴の生演奏と一体となり,賑やかなレセプション会場の中でも落ち着ける憩いの空間を演出しました。


3 地方自治体PRの成功要因
インドネシアは,農産品等の輸入規制が厳しい上,イスラム教徒が人口の9割以上を占めることから,豚由来の成分を含む食品を出品しにくいなどの制約があります。そのような状況の中,これらの自治体の展示ブースが成功を収めた背景には,当地の人々の好みや宗教事情を踏まえながら,提供する食品やその提供方法について,十分に検討し,それを当館としても後押しできたことにあると考えます。例えば,福島県は,数ある特産品の中で,当地の高いラーメン人気を踏まえつつ,喜多方ラーメンの提供を決めましたが,豚チャーシューを鶏肉に変えることでイスラム教徒が安心して食べられるよう工夫しました。また,高知県は,当地の規制によりゆず果実が輸入できない中で,加工品として輸入が比較的容易な柚子ジュースを提供することで,地元の魅力をうまくPRすることができました。このように,当地の事情に応じた柔軟な対応が各ブースの成功の背景にあり,当館としても,各自治体の魅力を当地において最大限発信するサポートができたことを嬉しく思っています。
4 最後に
インドネシアは世界有数の親日国であるとともに,めざましい経済発展を遂げており,特に中間層の所得が向上していることから,日本への訪問者が急増しています。実際に,昨年(2019年)のインドネシアからの訪日者数は約41.3万人で,これは10年前(2009年)と比較すると約6.5倍となっています。特に,リピーターが増えた昨今では,定番ルートであった東京,大阪,京都,富士山といったメジャーな観光地に加え,これまで当地においてメジャーでなかった観光地への訪問が進んでいることから,多くのインバウンド需要があり,各自治体のPR活動は一層有意義なものとなっています。新型コロナウイルスの影響を見据えた新たな戦略が必要となるような状況ではありますが,当館としましても,引き続き各自治体と連携して,我が国のさまざまな魅力を発信してまいりますので,インドネシアにおいて地方の魅力の発信を希望される自治体の方々におかれては,ぜひご相談を頂ければ幸いです。