保健・医療

第62回WHO(世界保健機関)総会における新型インフルエンザ検体共有及び利益共有の議論の結果について

平成21年5月25日

1.5月21日、WHO総会において、新型インフルエンザ検体共有及び利益共有に関する決議案が加盟国のコンセンサスにより了承され、22日に採択されました。この決議により、政府間会合(IGM)は一部の未解決の問題を残したまま終了し、今後はWHO事務局長主導により、残された問題について協議が行われ、来年1月のWHO執行理事会までの決着を目指すことになりました。

2.今回のIGMやWHO総会では、新型インフルエンザA(H1N1)の発生を受けて、WHOのネットワークを通じて検体が迅速に国際社会で共有されたことが、各国の対策やワクチン開発を進める上で大きな役割を果たしているとの発言が相次ぎました。しかしながら、検体をWHOと共有するための手続きの透明性を向上させるために、提供国やWHOの関係機関の間で利用される、標準的な契約文書(standard material transfer agreement)の作成については、日・米・EUは、簡潔で、円滑な検体提供の妨げにならないようなものとすることを訴えたのに対し、インドネシア、インド、ブラジルは、検体提供国の了解なしに検体が第三者によって利用されることを懸念し、詳細なものとすることを主張したため、作業が進まず、今後とも協議が行われることになりました。

3.IGMの成果文書案では、全ての国が検体の提供や利益の提供にコミットし、共同で行動することが再確認されました。

 また、成果文書案の中で、WHO加盟国は、ワクチン生産メーカーに対し、生産量の一部(portion)を途上国への支援のために無償でまたは割引価格で提供するよう強く求めており、現在WHO事務局がワクチン生産メーカーと行っている協議を後押しする形となっています。

 一方、H5N1ワクチンの国際共同備蓄については、今回のIGMの結果にかかわりなく、WHO事務局による検討が進んでいます。

 今回の総会決議においては、こうした既に事務局主導で行われている取り組みを含め、IGMにおいて合意された要素については前に進めていくことが確認されました。

4.日本代表団は、今後の作業には、検体の共有や情報の共有の重要性など、H1N1インフルエンザ対策の経験や教訓が反映されるべきであると発言すると共に、IGM全体で合意に至らずに終了したことを理由に、鳥由来H5N1インフルエンザの発生国が検体をWHOに提供することを停止すべきでないと改めて主張しました。

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