平成21年3月23日
(1)全体
(イ)3月16日(月曜日)~22日(日曜日)、トルコ・イスタンブールにて、第5回世界水フォーラムが開催された。「世界水フォーラム」は、マルセイユに本部をおく国際NPO「世界水会議」がホスト国と共催して3年毎に開催する水に関する世界会議で、5回目の今次会合は、「水問題解決のための架け橋」(Bridging Divides for Water)を主要テーマとして、世界水会議及びトルコ政府の共催により開催され、192カ国より、首脳・閣僚を含む政府関係者、地方自治体関係者、国会議員、多数の国際機関、水関連NPO、民間企業、学識者等約3万人が参加した(事務局発表)。
(ロ)我が国からは、皇太子殿下が御臨席されたほか、森喜朗総理特使、金子恭之国土交通副大臣、西尾哲茂環境次官、古屋地球環境問題担当大使をはじめとして外務省、国土交通省、環境省、農林水産省、厚生労働省など政府側より約70名が参加した。また、JICA、日本水フォーラム(会長:森・元総理)など政府以外の関係者も多数参加した。これに加えて、国土交通省、農林水産省、東京都、複数の水関連企業等が展示(Water Expo)への出展を行った。
(2)皇太子殿下の御臨席(3月16日、17日)
皇太子殿下(国連「水と衛生に関する諮問委員会」名誉総裁)は、16日午前の開会式に御臨席され、お言葉を述べられたほか、17日午前、「水とかかわる-人と水との密接なつながり-」と題する基調講演を行われ、日本古来の水と災害、衛生への対処における知見を紹介しつつ、これら知見が気候変動等により顕在化する今日の水問題への対処においても示唆を与えるであろうと述べられた。また、17日には国連水と衛生に関する諮問委員会非公式昼食会にも御臨席になった。
(3)首脳会合への森喜朗総理特使の出席(3月16日)
(イ)16日午後には、トルコ政府主催で首脳会合が開催され、10カ国及び3国際機関(トルコ、タジキスタン、イラク(以上、大統領)、韓国、キルギス、ツバル、モロッコ(以上、首相)、モナコ、オランダ、日本、国連、ユネスコ、OECD)の代表が出席した。
(ロ)森総理特使は、ステートメントの中で、水と衛生分野におけるトップドナーである我が国は、昨年のTICAD IV及び北海道洞爺湖サミットにおいて水と衛生に関する議論を主導し、「循環型水資源管理」の重要性を訴えた等の成果を報告するとともに、日本国内において超党派の国会議員、政府、学界、産業界、市民社会が緩やかに連携しつつ、水関係者が一体となって取り組む「チーム水日本」が結成されたことを紹介した。
(ハ)首脳会合の成果物として、すべての国に対し、世界の水問題に対応するための地球規模の枠組を形成するための努力に参加することを呼びかけること等を内容とする「水に関するイスタンブール首脳宣言(英文)」が採択された。
(4)その他
(イ)水の安全保障に関するアジア・太平洋閣僚会合(3月20日)
20日、アジア・太平洋水フォーラム(会長:森・元総理)主催で、アジア・太平洋地域セッションとして「水の安全保障に関するアジア・太平洋閣僚会合」が開催された。同会合の議長を務めた森会長は、2007年12月の大分県別府での第1回アジア・太平洋水サミットのフォローアップとして「水の安全保障に関する大臣イニシアチブ」を発表し、アジア・太平洋地域の水担当大臣及び各界のリーダーに協力を呼びかけた。これに対し、アジア太平洋地域の水担当閣僚(我が国は金子国土交通副大臣)から同イニシアチブに対する賛意が表明された。また、G8を代表して、古屋地球環境問題担当大使から、G8北海道洞爺湖サミットの成果、そのフォローアップとしてのG8水と衛生に関する専門家会合での検討状況について報告した。
(ロ)閣僚会議(3月21~22日)
21日、水関係閣僚が参加し、8つのテーマについての閣僚円卓会議・分科会が開催された。金子国交副大臣は、「水関連災害の被害軽減」の円卓会議の議長を務め、今次フォーラムにおける災害管理セッションの成果を報告した。22日、水に関するMDG達成に向けて、また、様々な水問題への対処のため、各主体の更なる努力を要請する「閣僚声明」が採択された。
(1)世界水フォーラムは、世界中の水に関する関係者が一堂に集い、水と衛生に関わる様々な問題への対処につき情報交換や議論を行う場であり、その規模と注目度は回を重ねるごとに高まってきている。
(2)そのような会議に、水と衛生の分野におけるトップドナーである我が国より皇太子殿下の御臨席を得たほか、森・元総理を総理特使として派遣し、首脳会合をはじめとする各種の会合において我が国の実績と立場をアピールできたことは、我が国の存在感を国際社会に印象付ける上で大きな効果があったと思われる。特に、水問題は分野横断的で関係する主体も多様であるため、水問題への対処においては首脳レベルの政治的リーダーシップが不可欠であるとの森総理特使の主張は、それが今次水フォーラムのテーマである「水問題解決のための架け橋」に直結した内容だったこともあり、多くの参加者の賛同を得た。
(3)国連「水と衛生に関する諮問委員会」名誉総裁を務めておられる皇太子殿下は、今回、2003年の第3回(京都ほか)、2006年の第4回(メキシコシティ)に続き、3回連続で世界水フォーラムに御臨席された。皇太子殿下は、同じく水問題に関心の深いオランダのオレンジ公(皇太子殿下)などとともに、今や水問題に関する国際的な「顔」のお一人であり、今回のフォーラムにおいて人と水とのかかわりに関する深い知見に裏付けられた基調講演やお言葉を述べられたことは、各国の専門家のみならず参加者一同に深い感銘を与えた。