平成24年7月12日
7月10日(火曜日)から7月12日(木曜日)の3日間,東京においてアジア太平洋・カリブ地域の島嶼国21カ国の気候変動交渉関係者及び在京島嶼国大使館を招待して,「島嶼国向け気候変動政策対話」を開催した。1-2日目は,島嶼国に対する気候変動分野における支援,本年末にカタールにて開催される国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)に向けた気候変動交渉について意見交換するとともに,民間を含めたさまざまなステークホルダーも招いて島嶼国と我が国との今後の協力の方向性について議論を行った。また,3日目には我が国の先端的な環境技術を利用した施設やスマートシティの視察等を行った。概要は以下のとおり。
本政策対話は,昨年末に南アフリカ・ダーバンで開催されたCOP17の際に我が国が発表した「世界低炭素成長ビジョン」に基づき,気候変動及び低炭素成長に関して幅広い意見交換を行う機会を作るために実施したもの。関係各省・各機関(外務省,国際協力機構(JICA),環境省,財務省及び経済産業省)が各セッションで我が国の気候変動問題に対する取組や支援について紹介するとともに,島嶼国との今後の協力の在り方についてオープンで実質的な意見交換を行った。また,外務省がファシリテーターを務め,COP18に向けた気候変動交渉の主な論点や目指すべき成果等について参加各国と活発な議論を行った。さらに,民間企業,研究機関,支援機関,NGO,メディアからの参加を得て,我が国と島嶼国の協力関係について,様々な視点から率直な意見交換を行った。
島嶼国の参加者からは,本政策対話は,我が国の気候変動対策に対する積極的な姿勢を理解する良い機会になったとの評価が得られ,様々な関係者との意見交換や関連施設への視察を含む周到なプログラム設定に関して感謝の意が表明された。また,気候変動交渉については,COP18に向け,島嶼国として日本と引き続き良く連携していきたい旨が述べられた。
(1) 島嶼国に対する日本の支援
本セッションでは,我が国の2012年までの気候変動分野における途上国支援の実施状況や,様々なフォーラムを通じた島嶼国との協力,JICAの実施している具体的なプロジェクトについて説明を行い,参加者と意見交換を行った。参加者からは,日本の取組を評価するとともに,2013年以降も切れ目なく支援が行われることの重要性を指摘するコメント等がなされた。
(2) アジア太平洋地域におけるネットワークの役割
APN(アジア太平洋地球変動研究ネットワーク)やAPAN(アジア太平洋地域適応ネットワーク)といったアジア太平洋地域にある既存のネットワークの取組や役割等について説明が行われた。参加者からは,プロジェクトで実施されているトレーニングには人材教育の観点を重視すべきである点のコメント等がなされた。
(3) マルチの枠組みを通じた島嶼国への気候変動対策支援
島嶼国における再生可能エネルギーの導入を支援するSIDS-DOCKプログラム,太平洋諸国災害リスク保険(PCRAFI)等のマルチ枠組みを通じた資金に関する日本の取組や立場について説明が行われた。参加国からは,将来の資金メカニズムが気候変動交渉全体で果たすべき役割や,地球環境ファシリティ(GEF)等他の資金メカニズムとの連携等についてコメント等が出された。
(4) 気候変動問題を解決するための日本の技術のポテンシャル
我が国が推進する二国間オフセット・クレジット制度の概要や現在実施しているフィージビリティ・スタディの内容及び今後のロードマップについて紹介された。参加国からは,同制度に対する関心が示され,具体的な手続きやプロジェクトの詳細等について質疑応答が行われた。
COP18に向けた気候変動交渉に関し,COP18で目指すべき成果,COP17で立ち上げられた「ダーバン・プラットフォーム特別作業部会」の進め方,各国の緩和野心の上げ方,途上国支援のためのメカニズムの重要性,リオ+20の成果に対する評価等について活発な議論が行われた。
気候変動に関する民間を含めた様々なステークホルダー(民間企業,研究機関,支援機関,NGO,メディア等)を交え,幅広い観点から日本と島嶼国の協力関係に関する議論を行った。有識者から我が国の持つ優れた環境技術に関する紹介やその普及の方法,気候変動交渉を取り巻く国際情勢の変化,島嶼国のニーズに合った技術開発や支援の重要性,メディアからみた気候変動交渉の現状等について問題提起が行われ,参加国との間で意見交換が行われた。参加国からは,様々な分野の関係者を迎えて議論を行ったことで,日本と島嶼国との新しい協力関係を構築する第一歩になったと評価され,今後も多様なプレイヤーを巻き込んで両者の関係を強化していきたい旨述べられた。
3日目には,我が国の先端的な海水淡水化技術や,ビルにおける排水処理施設,コージェネレーション施設等の視察を行ったとともに,複数の日本企業から各社の気候変動対策に関する具体的な取組やスマートシティ構想等に関するプレゼンテーションが行われた。島嶼国諸国からは,日本の気候変動対策に関する先進的な技術・取組を直接見聞きすることができ,大変興味深く有意義であった旨述べられた。