地球環境

「気候変動に対応するための長期的協力の行動に関する対話」(概要と評価)

平成18年5月16日
日本政府代表団

I.概要

1.「気候変動に対応するための長期的協力の行動に関する対話」の第一回会合が、15日、16日の両日、ボンで開催された。

2.この対話は、昨年11月モントリオールで開催された気候変動枠組条約第11回締約国会合(COP11)の際に合意されたもの。具体的には、1)京都議定書未批准国の米国や削減義務のない途上国も含めた全ての国の参加の下、2)経験の交換、戦略的アプローチの分析のための対話を、4)先進国1名、途上国1名の共同議長による最大4回のワークショップの開催を通じて行い、3)その結果をCOP12(2006年)、COP13(2007年)へ報告することになっている。なお、この対話は将来の交渉、約束、プロセス、枠組み、マンデート等を予断しないことが前提とされている。

3.この対話の共同議長には、豪(バムジー環境遺産省次官)と南ア(デ・ヴェット外務省主任法律顧問)が選出され、約190の参加国及びオブザーバーが参加した。わが国からは西村六善気候変動担当政府代表、小島敏郎環境省地球環境審議官、岩田悟志経済産業省大臣官房審議官他が参加した。

II.各国の発表

1.COP11の決定では、「持続可能な開発」、「適応(干ばつ等、気候変動の悪影響に対応するための措置)」、「技術」、「市場の役割」という4つのテーマを含む戦略的アプローチについて議論されることとなっていた。この対話では、各国より4テーマそれぞれについて関心が示されたとともに、これらに必ずしも限られず、各テーマを関連づけた意見表明が多くみられた。

2.4つのテーマについては以下のような意見があった。

(1)「持続可能な開発」については、エネルギー安全保障、大気汚染対策、貧困対策と温室効果ガスの削減を同時に達成することが重要であること。

(2)「適応」については、5カ年作業計画の推進、資金メカニズムの強化、緩和策(削減策)とのバランスが重要であること。

(3)「技術」については、先進国が政府による研究開発プログラムの重要性を言及、途上国は特に技術移転とそのための資金援助、能力向上のための先進国の支援の強化を主張。

(4)「市場の役割」については、CDMなどの京都メカニズムを今後も継続すべきとの声や、プロジェクトの地域バランスの改善が必要であること。

3.各国の発言の主要な点は以下の通り。

(1)わが国からは、枠組条約採択当時からの時代の変化をふまえ、条約の究極目的の実現に向けて各国が連帯して取り組むべきであることを訴え、すべての国がその能力に応じ排出削減に取り組むことを可能とするとともに主要排出国による最大限の削減努力を促す実効ある枠組みの構築を推進する必要性を呼びかけた。

(2)米国は、気候変動への対処には多様なアプローチがあるという点、気候変動問題とともにエネルギー安全保障、大気汚染の解消などを一体的に捉える必要性や、政府による研究開発イニシアティブの重要性などに言及した。

(3)EU、ノルウェー等の欧州諸国は、上記4テーマの他、条約の究極目的(温室効果ガスの濃度安定化)に関する議論の重要性を指摘するとともに、EU排出量取引市場(EU-ETS)やCDMなど市場メカニズムの有効性、途上国の更なる行動を促すためのインセンティブ及び戦略的なアプローチの必要性を強調した。

(4)現在COPの議長をつとめるカナダは、技術の果たす役割の重要性、セクター別の取組など新たなアプローチの必要性、G8など条約の外で行われている取組を参考にすることの意義等について言及した。

(5)中国、ブラジル等の途上国は主に、条約の実施が不十分であり、気候変動対策の核となるクリーンな技術の開発、移転に対する先進国の支援が不十分であるとして、先進国からの更なる技術移転や資金協力の強化や、自主的取組に対する「ポジティブ・インセンティブ」を求めるとともに、CDMなどの京都メカニズムの2013年以降の継続を求めた。

(6)気候変動に対し特に脆弱な小島嶼国や後開発途上国は、適応策の一層の強化、条約の究極目的の達成の必要性を訴えた。

III.評価

1.気候変動対策と持続可能な開発との関係、適応対策のあり方、技術や市場メカニズムのポテンシャルの活用という4つのテーマの他、条約の究極目的の達成に向けた取組等、将来枠組みを巡る主要論点について各国が幅広い意見を表明し、それぞれの立場に対する理解が深まった。

2.我が国をはじめEUやノルウェーなどいくつかの先進国は、条約の究極目的の達成に向けた主要排出国による温室効果ガスの削減など、将来枠組みに向けて連帯した取組を強調した。これに対し、途上国は一貫して、本「対話」では先進国による途上国への支援を規定した条約の条文の実行を強調し、将来の削減義務への幅広い参加の検討には応じられないこと、さらに条約4条の原則である「共通だが差異ある責任」を前面に押し出し、先進国の資金援助や技術移転が不十分であること等の従来の主張を繰り返し、今後の将来枠組みの議論の厳しさが予見された。

3.我が国は、今回の対話を踏まえ、今後も、温室効果ガス削減、適応、技術の開発・普及等の分野での努力を続けるとともに、年末のCOP12に向けて、時代の変化に即して、主要排出国が最大限の削減努力をする効果的な枠組みを構築するよう、積極的に各国の連帯を働きかけていく。

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