平成19年5月19日
日本政府代表団
ラウンドテーブル会合を開催し、各国、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)やIEA等の国際機関、ビジネス界より、科学的、技術的な知見のインプットを得た上で(我が国よりも、本部経済産業省審議官が日本の省エネ努力を通じた排出削減努力や今後の長期的な削減に向けた取組みについてプレゼンテーションを実施)、先進国(附属書 I 国)の削減ポテンシャルの分析について議論を行い、以下を主な内容とする結論文書を採択した。
特に、バリに向けての作業スケジュールの中で、今後の議論を促進する観点から、先進国の削減ポテンシャルや削減幅の特定に必要な共通の指標を得るべく、テクニカル・ペーパーを作成することとなったことは、削減約束の議論は科学的分析に基づくべきであるとの我が国の主張が採用された成果といえる。
なお、削減幅の特定については、これまで各国毎の幅か、附属書 I 国全体の幅か明確ではなかったが、今回の議論を通じて、附属書 I 国全体の幅であることについて共通の理解が得られた。
主要4テーマの内、残っていた「技術」と「適応」を取り上げ、IPCCやIEA等の国際機関やビジネス界よりのプレゼンテーションを踏まえて、非公式且つ率直な意見交換が行われた。
その中で、本年12月のCOP13への報告を以って終了する本件対話の今後の取り扱いについて説明を求める発言(米国)、更にはCOP13後の対話のあり方に関する具体的な提案(南ア)があったことは、米国や途上国も含めた全ての国が参加する本件対話の今後の展開との関係で注目される。
昨年のナイロビCOP/MOPでの決定を受けて、途上国(非附属書 I 国)の自主的なコミットメントを正当に評価するメカニズムを開発すべく、ワークショップが開催され、ロシアよりのプレゼンテーションを基に、初めて具体的な意見交換が行われた。
ロシア提案の論点は大きく2つあり、途上国の附属書 I 国、京都議定書附属書B国への追加手続きの簡素化、及び自主的なコミットメントの定義やそれを促すインセンティブであり、将来枠組みの議論との関係でも、有意義なワークショップとなった。
京都議定書の第一約束期間の開始を来年に控え、適応基金、技術移転、キャパシティー・ビルディング、小規模森林CDM等の気候変動枠組条約・京都議定書上の主要論点につき一定の進展が見られるとともに、関連する各種方法論につき議論が行われ、本年12月のバリのCOP13、COP/MOP3に向けて議論が深まった。
気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)及び京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)が12月3日から14日までインドネシア・バリで開催されることが確認され、閣僚級会合の形式や議論の進め方などにつき、概ね締約国の間で合意された。
特に、IPCCの第4次統合報告書(秋に公表予定)の取り扱いについては、その重要性にも鑑み、閣僚級会合の場でIPCCによるプレゼンテーションが行われることとなった。
今次会合では、(a)どのような国が本基金からの資金供与を申請できるか、(b)どのようなプロジェクトに対して資金供与を行うか、(c)クレジットの現金化をどのような方針で行うか(注)、(d)本基金の制度の整備をいかに図るか(本基金の付託機関の選定を含む)、の4つの課題につき、本年12月にバリにて開催されるCOP/MOP3での決定採択を目指し、かかる合意文書の策定を行った。協議の結果、上記(a)~(c)に関し、合意に至った。(d)については、地球環境基金(GEF)への付託につき途上国が強く反対していることなどを理由に議論が進まず、次回会合及びそれに先立つ事前協議において、議論を継続することとなった。
(注)本基金は、他の基金とは異なり、すべてのCDMプロジェクトからのクレジットの2%を原資としているため、現金化プロセスが必要となる。
昨年に引き続き、COP7(2001年、マラケシュ)で設置が合意され、COP13(本年12月、バリ)で終期を迎える「技術移転に関する専門家グループ(EGTT)」の見直しに関する議論が行われた。COP13での決定に向けて、決定草案について協議を行い、主として1)EGTTを引き継ぐ新たな組織の位置付け、2)技術移転のための資金支援のあり方、3)技術移転の実績の評価手法、の3点に関する先進国、途上国双方の提案を反映した文書がまとめられ、引き続き協議していくことで合意した。
今回合意された結論文書には、我が国及び中国がSB26に先立って、締約国間の対話の促進に向けたイニシアティブを発揮したことを評価する内容が盛り込まれている。
なお、我が方(環境省)が本件議題の共同議長を務めた。
2008年から本格化するクレジットの取引を国際的に管理する国際取引ログ(ITL)の運用費用に対して、各国が分担して支払う新たな仕組みが決定された。また、CDMクレジットの迅速な流通を可能とするために、わが国を含む全ての国別登録簿とITLとの接続・運用を可能な限り早期に行うことも決定された。
COP決定(2/CP7)で定められたキャパシティー・ビルディング実施の進捗状況のモニタリングのための事務局統合報告書のフォーマットに合意した。また、キャパシティ・ビルディングのモニタリングに関する実務的経験を共有するワークショップの目的に合意した。
研究について、「世界気候研究計画(WCRP)」、「地球圏-生物圏国際共同研究計画(IGBP)」、「地球環境変化の人間社会側面に関する国際研究計画(IHDP)」、「地球変動に関する分析・研究・研修システム(START)」などの国際研究計画・機関及び「北米及び中南米地球変動研究所(IAI)、「アジア太平洋地球変動ネットワーク(APN)」などの地域研究計画・機関の活動が紹介されるとともに、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第4次評価報告書が締約国に対し、気候変動に関する科学的、技術的及び社会・経済的情報を提供するものであることが再確認された。
また、補助機関(SBSTA)がこのような研究計画・機関の協力を得て、今後の研究課題に関する締約国と研究機関との間の対話を促進することが合意された。第28回補助機関(SBSTA28)の議論には、関係する研究計画・機関の参加を求めることとなった。
COP11において2年間の検討のマンデートが与えられた本議題では、2回のSBSTAワークショップを含む検討の結果を報告するとともに、それ以降の進め方を合意するためのCOP13決定案の作成が行われた。多くの未決着部分が残され文案の合意に至らなかったが、次回SBSTA27では今回作成された交渉文書を出発点として継続議論することが合意された。決定案には、前文、既存の取組み・新たな取組みへの参加の促進、途上国の能力開発、必要な資源(resources)の動員、技術的・方法論的検討事項、今後の進め方などが含まれている。
COP/MOP2において、ボリビア等から小規模植林CDMの上限値(1年あたり8キロCO2トン)がプロジェクト実施の阻害要因となっており、これを見直すべきとする意見が出され、今次会合で議論することとされていた。今回の議論においては、ブラジル等から植林CDMについてはなお経験が不足しており、上限値の変更の検討は時期尚早との主張もあり、最終的には上限値を変更した場合の社会・経済・環境的影響に関し、各国等の意見を9月までに求めた上、次回会合で引き続き上限値変更の可否について検討することとなった。
なお、我が方(林野庁)が本件議題の共同議長を務めた。
本議題の議論を要求する一部先進国と、それを認めない一部途上国との対立のため、議題の取り扱いにつき合意が得られず次回会合で再び議論することとなった。
(参考)補助機関会合は、締約国会合の下部機関で、毎年夏冬2回開催(1回目は5~6月頃、2回目は締約国会議(COP)と同時期で例年10~12月頃)。2つの機関があり、気候変動枠組条約締約国が参加。
1)実施に関する補助機関(Subsidiary Body for Implementation(SBI)):気候変動枠組条約第10条に基づき設置され、条約の効果的実施(たとえば、事務局予算、資金メカニズム等の問題)を扱う実施に関する補助機関。
2)科学上及び技術上の助言に関する補助機関(Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice(SBSTA)):気候変動枠組条約第9条に基づき設置され、条約に関連する科学的及び技術的な事項(たとえば吸収源、計測等の問題)に関する情報及び助言を提供する補助機関。