平成18年5月26日
日本政府代表団
「附属書I国の更なる約束に関するアドホック・ワーキンググループ(AWG)」が補助機関として正式に立ち上げられると共に、以下を主な内容とする作業計画が25日深夜に採択された。
途上国は、条約の究極目標に関する議論などは不要とし、先進国の数値目標の改正のみを議論すべきとの立場であったが、我が国を始めとする先進国が、条約の究極目標の実現に向けて、科学的な分析、現実的な削減ポテンシャル、現在の取組状況の評価等を早急に行い共通認識を形成することや、他の検討プロセスとの連携が重要であることを強く主張した。その結果、こうしたことが計画に盛り込まれ、本年11月にナイロビで開催されるCOP/MOP2でワークショップを開催して情報交換を進めることや、検討すべき事項の参考リストを今回の会議報告に添付すること等について合意した。
本作業計画が合意され、今後も各国が協力して第二約束期間の交渉に努力していくことが確認されたことは評価に値する。
「気候変動枠組条約第24回補助機関会合(SB24)」では、各個別議題の下、気候変動枠組条約・京都議定書の着実な実施や関連する各種方法論につき議論が行われ、COP12、COP/MOP2に向けて議論が深まった。
京都議定書第二回締約国会合(COP/MOP2)が気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)に併せて11月6日から17日までナイロビで開催されることが確認され、閣僚級会合の形式や議論の進め方などにつき、概ね締約国の間で合意された。
COP12、COP/MOP2では、議題を整理すると共に、基本的に毎日午後6時までに会議を終了させることとする等、より効率的な会議運営を目指すことが合意された。
CDMプロジェクトの利益の一部(2%)等により運用されることとなっている「適応基金」については、同基金を管理する機関の選定基準などが論点となり、実績のある地球環境基金(GEF)が最適であると主張する先進国と、手続きの透明性や複雑さの点からGEFに異議をとなえ、予断を排してより多くの機関の中から選択すべきと主張する途上国グループが対立した。この結果、COP/MOP2までに、候補となる機関から意見を聴取することで合意された。
COP11で決定された「気候変動の影響、脆弱性及び適応に関する5ヵ年作業計画」については、科学技術的な情報について理解を深めるため、計画の前半(今後2年間)の具体的作業の進め方について交渉が行われた。限られた人的・財政資源の中で効率的に作業を実施すべきとする先進国と、IPCCなど他の関連する取組みとは別に、補助機関(SBSTA)が独自の評価方法の開発まで行うべきなど、本作業計画に多くの期待を寄せる途上国との間で意見が対立し、SBSTA25(第25回補助機関会合)で議論を継続することとなった。
(注)
適応(adaptation):気候変動による悪影響への対応。
緩和(mitigation):温室効果ガス排出削減・吸収増加。
技術移転に関し、COP12で行うEGTT(技術移転に関する専門家グループ)の見直しにかかるEGTTからの勧告につき議論を行った。勧告には、既存の主要テーマを引き継ぐと共に、適応に関する技術についても検討すること等が盛り込まれている。この勧告を歓迎し、COP12での議論を促進するためSBSTA議長が事前に非公式協議を実施することで合意した。条約および議定書のキャパシティー・ビルディング(能力開発)については、資金拠出に関する情報等の提出、ワークショップの開催などが争点となったが、先進国・途上国間の調整が続き、次期会合まで持ち越されることとなった。
COP11決定に基づき、締約国と研究機関間の研究ニーズに関する対話をいかに促進するかを中心に議論がなされ、我が国を含む締約国、気候変動に関する地域・国際研究機関が参加して特別サイド・イベントが開催された。対話を更に進めるための方法について締約国・研究機関に意見を照会すると共に、SBSTA26(第26回補助機関会合)において、両者の非公式な議論の場を設置することが合意された。
開発途上国の森林減少を抑制することによる排出削減については、今年8月末に開催予定のワークショップの検討事項について議論が行われ、各国の経験・知見を共有すると共に、科学的、政策的側面について検討することが合意された。また、伐採木材製品(HWP)の取り扱いについてはSBSTA26(第26回補助機関会合)において検討を継続することになった。
国際航空・海運からの排出量算定方法を改善するための今後の取り組みについて、技術的な情報交換を目的とするワークショップの開催等が検討されたが、一部途上国の強い反対により合意が得られず、SBSTA25(第25回補助機関会合)で引き続き検討することとなった。
(参考)
補助機関会合は、締約国会合の下部機関で、毎年夏冬2回開催(1回目は6月頃、2回目は締約国会議(COP)と同時期で例年10~12月頃)。以下の既存の二つの機関があり、気候変動枠組条約締約国(188カ国及びEC)が参加。
1)実施に関する補助機関(Subsidiary Body for Implementation(SBI)):気候変動枠組条約第10条に基づき設置され、条約の効果的実施(たとえば、事務局予算、資金メカニズム等の問題)を扱う実施に関する補助機関。
2)科学上及び技術上の助言に関する補助機関(Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice(SBSTA)):気候変動枠組条約第9条に基づき設置され、条約に関連する科学的及び技術的な事項(たとえば吸収源、計測等の問題)に関する情報及び助言を提供する補助機関。