平成17年5月27日
日本政府代表団
1. 気候変動枠組条約第22回補助機関会合(SB22)は、19日~27日、ボンにて開催された。
2. 今次会合は、京都議定書発効後、初の条約締約国会合となった。直前16日~17日に同地で開催された将来の行動に関する「政府専門家セミナー」での議論を受け、いかに条約実施上の諸課題を整理し協力を発展させつつ、年末のCOP11およびCOP/MOP1(第一回京都議定書締約国会合)における進展につなげていくかを念頭に、締約国間で鋭意協議が行われた。会合全般に関する主な成果は次の通り。
(1)COP11およびCOP/MOP1における更なる国際取組前進に向けた努力
京都議定書上、2005年までには次期枠組(2013年~)に向けた議論を開始すべしと規定されていることを念頭に、来たる年末のCOP11と、歴史的な初の京都議定書締約国会合となるCOP/MOP1(モントリオールにて同時開催)の重要性が確認された。同会合における議論の形式(閣僚会合など)について合意されたほか、具体的な議論の内容についても種々の突っ込んだ意見交換がもたれた。
(2)気候変動枠組条約実施のための協力を推進各個別議題の下で、条約の着実な実施(途上国支援、国別報告・目録、研究・観測等)や関連する各種方法論につき議論が深まり、一定の前進が見られた。
(3)京都議定書の着実な実施に向けたコミットメントを確認(CDMの制度見直しに関する検討を含む)
我が国は、4月に閣議決定した「京都議定書目標達成計画」について説明したほか、他の先進諸国からも、議定書上の約束達成に向けた具体的な削減方針が種々の機会に表明された。また、京都メカニズムの本格活用、制度改革などに向け、我が国は、経済産業省が中心となって主要国(蘭、加、中、印、伯、チリ)とともにエネルギー分野のCDMを促進するため「CDMの将来」委員会を立ち上げる等、主導的な役割を果たした。
3. その他、本会合とは別に、米、EU、カナダ、豪州、NZなど主要関係国との間で二国間会談を鋭意行い、上記の各論点を中心に非公式な形で活発な意見交換を行った。
京都議定書発効後の第一回締約国会議(COP/MOP1)がCOP11に併せて11月28日から12月9日までモントリオールで開催されるところ、閣僚級会合の形式や議論の進め方(各国からの代表ステートメントを基本としつつ議論を行う)などにつき、概ね締約国の間で合意された。
京都議定書の発効と業務増を踏まえた事務局予算全体の規模と伸び幅について交渉が行われた結果、最終的に前二年度比約13.7%増の予算が合意された。
COP10で決定された「適応策と対応措置に関するブエノスアイレス作業計画」に基づき、「適応5か年作業計画」について会期中ワークショップが開催され、その後の協議の結果、1)同作業計画につき、COP11での採択を目指してSBSTA23にて検討する、2)この作業を促進するため非公式ワークショップを開催する、との合意に至った。また、緩和については、会期中のワークショップやその後の協議を経て、条約事務局がこれまでのワークショップについての報告書を作成しSBSTA23での議論に役立てることになった。
(注)適応(adaptation):海面上昇に対する堤防の建設など気候変動による影響への対応
緩和(mitigation):温室効果ガス排出削減・吸収増加
締約国側と研究関係者・機関との間の研究ニーズ等に関する相互の意思疎通を促進する方法等について議論が行われ、締約国見解を集約した文書の作成、SBSTA24における特別イベントの開催等について合意された。関連して、気候変動研究における国内・地域(アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)等)・国際レベルの連携、学際的アプローチの促進、途上国の能力開発促進及び組織的観測の重要性が歓迎された。
技術開発・移転の効果的な促進のために、EGTT(技術移転に関する専門家グループ)に、実施状況のレビューや技術移転における官民連携の促進策などの検討を依頼することで合意された。また、後発途上国基金(LDCF)に関しては、NAPA(国別適応行動計画)の実施支援のあり方について合意を得た。一方、特別気候変動基金(SCCF)に関しては、先進国側と途上国側で意見が対立し、COP11で継続議論することとなった。
非附属書 I 国(途上国)の国別報告書の提出について、GEFからの資金拠出から4年以内に報告書を提出すること(事務局への通知により更に1年の延長が認められる)、及びCOP15(2009年)において本件に関し再検討することについて合意が得られた。
条約事務局より、締約国から提出されている国際航空・海運からの排出に関する取りまとめについて、及び国際民間航空機関(ICAO)事務局より、モデルによる排出量算定の取り組みの進捗が報告された。これらを踏まえて、今後の技術的検討の進め方について議論したものの合意が得られず、SBSTA23において引き続き検討することとなった。
京都議定書参加先進国の基準年及び第一約束期間に係る温室効果ガス吸収源目録が、国際合意に基づく手法に則っていない等と判断された場合の数値の調整方法に関して、既に合意されている吸収源分野以外の技術的指針をベースに検討が行われ合意された。
COP8決定に基づきIPCC(気候変動に関する専門家パネル)とモントリオール議定書技術・経済評価パネルが共同で作成した報告書を各国とも評価し、報告書の内容について各国の意見を募った上でSBSTA24で検討することとなった。
(参考)補助機関会合は、締約国会合の下部機関で、毎年夏冬2回開催(1回目は6月頃、2回目は締約国会議(COP)と同時期で例年10~12月頃)。以下の二つがあり、気候変動枠組条約締約国(188カ国及びEC)が参加。
(1)実施に関する補助機関(Subsidiary Body for Implementation(SBI)):気候変動枠組条約第10条に基づき設置され、条約の効果的実施(たとえば、事務局予算、資金メカニズム等の問題)を扱う実施に関する補助機関。
(2)科学上及び技術上の助言に関する補助機関(Subsidiary Body for Scientific and Technological Advice(SBSTA)):気候変動枠組条約第9条に基づき設置され、条約に関連する科学的及び技術的な事項(たとえば吸収源、計測等の問題)に関する情報及び助言を提供する補助機関。