
国際航空分野における温室効果ガス削減に関するワシントン会合
平成24年8月3日
1.会合の概要
- 日程:
- 2012年7月31日~8月1日
- 場所:
- 米国運輸省(ワシントンDC)
- 主催:
- 米国政府(議長:トッド・スターン米国務省気候変動特使)
- 参加国:
- 17カ国(豪州,ブラジル,カナダ,チリ,中国,コロンビア,インド,日本,韓国,メキシコ,ナイジェリア,ロシア,サウジ,シンガポール,南アフリカ,UAE,米国)我が国からは,平松外務省地球規模課題審議官,平嶋国土交通省航空局国際企画室長ほかが出席
2.議論の概要
- 冒頭,ラフード米運輸長官とフローマン米大統領補佐官が挨拶し,次いで,ワースICAO理事会米国代表が2010年総会以降のICAOにおける気候変動対策の議論の進捗を,バールソンFAA副長官補が2010年ICAO総会決議A37-19の概要をそれぞれ説明した。
- 参加国はいずれも,EU-ETSの国際航空への適用には反対であり,このようなEUの措置がICAOにおけるこれまでの努力を無駄にする懸念を有する旨表明した。
- 各国は,(1)国際航空分野からの温室効果ガス対策についてはグローバルな解決が必要であり,ICAOがその場として適切,(2)ICAOの議論には進展がみられる,(3)削減策は経済的手法(MBM)のみではない等を発言。2010年ICAO総会決議A37-19で定められた目標はaspirationalなものであるが,個別国の目標・取組みはvoluntaryなものであり,目標達成に向かっては全体で共同して取組むべきであって,各国への割当てによるべきではない旨,多くの国が発言。
- その際,航空分野の特殊性,シカゴ条約との関係,special circumstancesへの配慮のあり方などについての議論があった。
- 2010年総会において示された国別行動計画の策定,MBM,技術革新,運用改善,代替燃料の活用といった取組を各国が組合せで実施することにより,全体として目標達成を図ることが重要な点につき,認識の共有があった。
- MBMについては,ICAOでは現在,(1)より技術的なMBM制度設計(グローバルスキーム)の検討と,(2)大きな枠組み(framework)の策定が並行して進められているが,スキームづくりよりも枠組みづくりを優先すべき旨主張する国もあった。
- また,国別行動計画により,各国がどんな削減策をとり,どのように目標達成に寄与するのかをICAOが理解できるようにする必要があり,またオープンにすることが重要ではないかとの指摘もあった。
- 我が国から,(1)ICAOの果たす役割の重要性,(2)EU-ETSに反対であり,各国が連携してICAOでの検討が確実に進んでいるとのメッセージをEUに対して発信することが重要である,(3)我が国政府及び関係民間セクターは様々な手法を活用して,航空分野における温室効果ガス削減に真剣に取り組んでいる,(4)本件会合においては,MBMのみならず種々の削減手法を組み合わせつつ目標達成が可能となるよう,単なる方向性だけではなく,具体的な合意形成のために議論を行うべきである,(5)国別行動計画は,各国の取組みの透明性を高め,優良事例を共有する上で重要なツールである旨の発言を行った。
3.今後の方向性
- 今回の議論を受け,11月の次回ICAO理事会で具体的な進展を図ることを目指し,建設的な議論を継続していくことで一致した。
- なお,会合終了後,議長国である米の責任で議論の概要をとりまとめた議長サマリーが発出された。
【参考】欧州連合温室効果ガス排出規制制度(EU-ETS)について
EUによる温室効果ガス排出規制制度(Emission Trading System)は,温室効果ガスの排出を抑制するため,個々の事業者に対して一定の年間排出枠(無償での排出可能上限)を割り当て,無償排出枠を超過した場合には,市場等において超過分の排出権を購入することを義務づけている。本制度は,EU域内の発電所や製鉄所等のエネルギー多消費施設を対象として既に2005年から開始されているが,2008年に規定が改正され,2012年1月からその適用範囲を航空分野にも拡大させ,EU域内の空港に発着する航空便からの排出(相手空港との間の飛行区間全体からの排出)も対象となることとなっている。これにより本邦航空企業を含む第三国の航空企業のEU域内の空港への乗り入れ便も規制対象に含まれることとなっている。