平成18年10月4日
日本政府代表団
要旨:「気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する第2回閣僚級対話」は、10月3日から10月4日まで、メキシコ・モンテレー市内にて開催され、我が国より、西村外務省気候変動担当政府代表、小島環境省地球環境審議官、伊藤経済産業省大臣官房審議官他が参加。G8グレンイーグルズ・サミットの結果を踏まえて、主要18カ国の関係大臣他が一堂に会し、世界銀行、IEA等からの報告を受けつつ、低炭素社会の実現に向けてエネルギー効率を向上させる必要性とその具体的方策等について意見を交わした。本対話は、今後さらに議論が深められ、2008年に我が国で開催されるG8サミットにおいてその成果が報告されることとなっている。
(1)日時:10月3日(火曜日)~10月4日(水曜日)
(2)場所:メキシコ・モンテレー
(3)参加者:G8及び中国、インド、ブラジル、南ア、メキシコ等主要18カ国(及び欧州委員会)のエネルギー・環境担当大臣等、さらに世界銀行、国際エネルギー機関(IEA)、世界エネルギー評議会(WEC)等が参加。我が国からは、西村外務省気候変動担当政府代表、小島環境省地球環境審議官、伊藤経済産業省大臣官房審議官他が参加。
(4)会議の目的
グレンイーグルズ・サミットで合意された「気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する対話」の第2回閣僚会合であり、昨年10-11月の第1回会合(於:ロンドン)に引き続いて行うもの。
本対話では、以下の課題に取り組むこととなっている。
(5)セッション毎の概要
第1セッション:気候変動の経済(英スターン・レビューの報告を受けた議論)
スターン・レビューは、英国政府が作成中の気候変動の科学を基礎にした経済学的分析であり、今回の会合では、著者のスターン卿が、気候変動に対処することは必ずしも経済成長を阻害するものではなく環境対策や貧困対策等との共通の便益があること、また、対処が遅くなればそのコストがそれだけ高くつくこと、さらに、この外部不経済に対処するためには炭素価格に関する市場メカニズムのみならず、技術への研究投資を進める政策も必要であること、等の発表を行った。
これを受けて、参加者による議論が行われ、市場の役割と政府の役割をそれぞれどう評価するかについてさまざまな意見が出された。また、エネルギー効率の向上の必要性、適応の重要性についての指摘がなされた。
第2セッション:代替シナリオ(IEAからの報告を受けた議論)
IEAから、将来のエネルギー技術に基づく複数のシナリオを紹介し、既存技術の普及によりエネルギー効率を高めることで2050年時点でCO2排出を現在のレベルにまで削減することが可能であること、またそのためには、研究開発のインセンティブを与える政策が重要との指摘があった。
これを受けて、参加者による議論が行われ、アジア太平洋パートナーシップ等の地域協力による、省エネルギー技術等の開発・普及、ベスト・プラクティスの共有の意義が指摘され、また、政府による研究開発投資や規制の重要性、再生可能エネルギーの果たし得る役割などについても議論された。
第3セッション:投資枠組(世界銀行からの報告を受けた議論)
世界銀行から、開発のためのエネルギーと貧困層のアクセス、低炭素経済への移行、及び適応の3つの柱に関して、必要とされる資金の見通しと、それへの対処案として、GEF(地球環境ファシリティ)や炭素市場等を通じた資金手当てに関する検討について報告を行った。
これに対し、限られた資金の使途として、エネルギー効率の向上をまず挙げる意見が見られ、また、国際炭素市場の2013年以降の継続への期待を表明する意見が出された。さらに、投資を促進する政策措置・環境整備の重要性、関係機関の調整の重要性も指摘された。
第4セッション:次のステップ
本件対話プロセスの今後の方向につき議論が行われ、エネルギー効率の向上を目指す具体的な取り組みを重点的に取り上げるべきとの意見が多く出された。他に、優良な政策措置、CDMの改革(プログラムCDMやセクターCDMの導入等)等の点を引き続き議論していくべきであるとの意見が出された。また、民間セクターのインセンティブを今後も維持するため、2013年以降の枠組につき早期に国際合意を得る必要があるとの主張がなされた。
会合の成果は、主催国(メキシコ・英国)の責任の下、議長総括としてとりまとめられた。また、次回会合は、2007年にドイツで開催されることとなった。
(1)今回の会合では、主要18ヵ国のエネルギー閣僚と環境閣僚とが一堂に会し、和やかな雰囲気の中で、非公式かつ自由な意見交換がなされ、共通理解が深められた。
(2)エネルギー効率の向上について、参加者がほぼ一致してその重要性を認め、そのための具体的方策について議論がなされたことは、今後の本件対話の方向性をある程度示すものと考えられる。
(3)市場メカニズムについて、これのみでは不十分であり、政府の役割が見落とされるべきではないとの意見が多かったが、一方で、国際炭素市場の2013年以降の継続を望む意見も多く見られた。
(4)この対話プロセスは、温暖化ガスの削減と適応において具体的な行動を念頭に議論していく場として意義が大きく、また、2008年に開催されるG8サミットで報告を受ける我が国にとっては実のある成果を出すことが重要であり、我が国として引き続き積極的に貢献していく。