地球環境

気候変動、クリーンエネルギー及び
持続可能な開発に関する対話の結果概要

平成17年11月1日
日本政府代表団

要旨:「気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する対話」は、10月31日及び11月1日、ロンドン市内にて開催され、我が国より、藪中外務審議官、日下経済産業審議官、小島地球環境審議官他が参加。G8グレンイーグルズサミットの結果を踏まえて、気候変動問題解決の鍵を握る主要19カ国のエネルギー・環境担当大臣が一堂に会し、また、締めくくり全体会合では英ブレア首相の参加も得て、低炭素社会の実現に向けて国際協力を更に進めていくための具体的な方策について議論した。本対話は、今後さらに議論が深められ、2008年に我が国で開催されるG8サミットにおいてその成果が報告されることとなっている。

1. 会議概要

(1)日時:10月31日(月曜日)-11月1日(火曜日)

(2)場所:ロンドン市内ランカスターハウス

(3)参加者:G8及び中国、インド、ブラジル、南ア、メキシコ等主要19カ国のエネルギー担当大臣と環境担当大臣及び世界銀行、国際エネルギー機関(IEA)の責任者等が参加。我が国からは、藪中外務審議官、日下経済産業審議官、小島地球環境審議官他が参加。

(4)会議の目的

 G8各国と主要な新興経済国等から、エネルギー閣僚と環境閣僚とが一堂に会し、グレンイーグルズサミットで合意された「気候変動、クリーンエネルギー及び持続可能な開発に関する対話」を開始するもの。

 本対話では、以下の課題に取り組むこととなっている。

2. 会合の結果概要

(1)G8グレンイーグルズサミットの結果を踏まえ、主要19カ国のエネルギー担当閣僚と環境担当閣僚等が一堂に会するとともに、締めくくり全体会合では英ブレア首相の参加も得て、低炭素社会の実現に向けて国際協力を更に進めていくための具体的な方策について議論した。

(2)会議では、気候変動問題は、世界が協力して取り組んでいくべき極めて重要な課題であること、エネルギー政策や経済政策との一体的な検討が不可欠であることについて、理解が再確認された。また、その解決に向けて、気候変動枠組条約の下での取組を補完するものとして、本対話を進めていくことの意義が共有された。

(3)対話では、とくに、気候変動への対処、クリーンエネルギーの推進、持続可能な発展の世界規模での達成のそれぞれの課題が、密接に関連しているという点に焦点をあてて、議論が進められた。

(4)各課題の主な議論の結果は以下のとおり。

低炭素経済への移行に向けたロードマップ
 (日下経済産業審議官が本テーマの議長をつとめた)

  1. 安定した持続可能なエネルギーを実現し、かつ気候変動への悪影響を回避するため、技術の開発と普及について明確なロードマップを持つことが必要であるとの認識が共有された。
  2. とりわけ、以下の点が強調された。
    • 低炭素技術の開発と普及に向けて、適切な時間スケールをもつ国家戦略と行動計画を定めることの重要性
    • セクター別低炭素技術の開発を加速するためのロードマップの必要性
    • 長期的な目標と短期的な優先課題への取組のバランスを取ることの必要性
    • 普及啓発を更に進めることを含め、個人や企業の行動を促していくことの必要性
  3. 特に短期的な優先課題としては、消費者が既存の省エネ製品の利用を更に進めるような取組を進めること、次世代のエネルギーインフラへの誤った投資を避けることなどが、指摘された。

技術協力への新たなアプローチ

  1. 新技術の開発と既存技術の普及を共に強化していくことの必要性が強調された。また、そのためには個別の国家政策と国家間の国際協力とがともに重要であるとされた。
  2. アジア太平洋パートナーシップをはじめ、EU-中国パートナーシップ、EU―インドイニシャチブなど、様々な地域協力を更に進めていくことの意義が強調された。
  3. この分野で更に取組を進めていくことの意義について共通の理解が得られた。たとえば、以下の点について今後更に検討していくことが議論された。
    • 先進国と途上国との間の協力の優先分野を特定し、短期・中期・長期の目標を検討すること
    • 技術移転を容易にするため、途上国の受入れ環境の改善を支援すること
    • 技術の獲得と移転をファイナンスするための新たなアプローチを探求すること

クリーンエネルギー技術への投資のスケールアップ

  1. 今後のエネルギー需要を満たし、かつ気候変動問題に取り組むには、エネルギーインフラへの大幅な投資が必要であり、その投資の大半は民間セクターによってなされるため、明確な政策シグナルを発信し、それを適切に誘導していくことの必要性が確認された。
  2. 温室効果ガスの排出削減に必要な適正技術は、短期的観点からは不足しておらず、課題はむしろ、民間セクターに如何にインセンティブを与えるかにあるとされた。
  3. 技術への投資を促していく上でのCDMの意義が協調され、また、その更なる推進に向けてCDMの改革の必要性が強調された。
  4. 次世代のクリーンエネルギー技術のための研究開発を進め、更にその技術が商業的に活用されるようにするため、インセンティブを与える適切な枠組みが必要とされた。

次のステップ

  1. 気候変動問題に対処するための長期的な国際協力についての議論を前進させるため、多くの国が本年末のモントリオールでのCOP11及びCOP/MOP1に期待を寄せた。
  2. 2008年に日本で開催されるG8サミットにおいて、本対話の成果の報告を受けるとの我が国の提案が歓迎され、実りある成果を得るために更に協力を進めていくこととなった。
  3. 本対話に貢献するため、世界銀行とIEAが更に積極的に取り組んでいくこととなり、両機関の更なる活動が歓迎された。

(5)我が国からは、藪中外務審議官、日下経済産業審議官、小島地球環境審議官が参加し、京都議定書の削減約束の確実な達成に向けた様々な取組や、省エネルギー技術の分野での優れた実績・経験などを踏まえつつ、それぞれプレゼンテーションの発表や、小グループの議長を務めるなど、議論に貢献した。

(6)会合の成果は、今後主催国(英国)の責任の下、議長サマリーとしてとりまとめられる予定である。また、今回開始された対話は、今後さらに議論・取組が深められ、次回会合は、2006年にメキシコで開催されることとなった。

3. 評価

(1)今回の会合では、主要19ヵ国のエネルギー閣僚と環境閣僚とが一堂に会し、和やかな雰囲気の中で、政策決定者同士の非公式かつ自由な意見交換がなされた。

(2)本対話は、気候変動枠組条約の下での取組を補完するものであるとの共通の認識の下、実際的かつ具体的な国際協力を更に進めるとの観点から、各国とも積極的に貢献していく姿勢を示した。その結果、建設的な議論が行われ、共通理解が深められた。

(3)今後、本対話の下で更に議論・検討を深め、2008年に我が国で開催されるG8サミットで実のある成果を出すことが重要であり、我が国としても、省エネルギーを始めとする優れた経験や知見を踏まえ、引き続き積極的に貢献していくこととしている。

(4)なお、今回の対話プロセスは、2008年に日本で開催されるG8サミットに向けてその報告をとりまとめる予定となっているものであり、モントリオールで開催されるCOP11及びCOP/MOP1での将来枠組み等に関する国際交渉とは異なるプロセスであるが、気候変動問題に対処するためには、本対話のような実務的な協力の推進と合わせ、気候変動枠組条約の下で、全ての国が参加する実効ある次期枠組みを構築していくことがきわめて重要であり、その実現に向け、我が国として引き続き最大限努力していくこととしたい。

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