平成19年9月28日
日本政府代表団
(1)日程・場所
9月27日、28日、於米国務省(ワシントン)
(2)参加者
日本、米国、中国、EU(議長国ポルトガル及びEC)、ロシア、印、独、加、英、伊、韓国、仏、メキシコ、豪、南ア、インドネシア、及びブラジルが参加した。我が国よりは、高村外務大臣(27日)、西村内閣官房参与(首脳個人代表)、鶴岡外務省地球規模課題審議官、伊藤経済産業省審議官、谷津環境省審議官の他、外務、財務、農林水産、経済産業、国土交通、環境の各省が参加した。
会合二日目にあたる28日午前、ブッシュ大統領が参加者他に演説を行い、気候変動問題に真剣に取り組む姿勢を強調し、本件会合において、国連気候変動枠組条約下における交渉を前進させる途に合意できる、と述べ、また、来年夏までにこの会合の参加国の首脳が集まり、排出削減に関する長期目標等につき合意したい、そうすることで初めて2009年に国連の下で次期枠組についての世界的合意が可能となるであろう、と述べた。また、大統領は、クリーン・エネルギー技術が鍵であり、米国がこの分野で主導していく意図を表明した上で、途上国におけるクリーン・エネルギーのプロジェクト支援のための新しい国際的クリーン技術基金の創設を発表した。また、森林の重要性等にも言及した。
(1)開会
冒頭、ライス国務長官が演説を行い、気候変動問題を兵器の拡散、テロ等と並ぶ地球的問題と位置づけ、本会合の目的は、気候変動枠組条約下における次期枠組構築の支援及び加速化であり、そのために、温室効果ガス削減の長期目標を共有し、さらにその達成のため各国が中期目標を確立することである、等述べた。引き続き、デ・ブア気候変動枠組条約事務局長が、パン国連事務総長個人代表として演説を行った。
(2)各国ステートメント:温室効果ガス及びエネルギー安全保障に関する国別優先事項
各国が各々の気候変動政策における優先事項を紹介した。我が国は、高村外務大臣より、新内閣においても気候変動問題を最重要課題の一つとして引き続き位置づけていく旨、また、5月に行った気候変動問題についての我が国提案にある基本方針に変更はない等表明した。さらに、我が国の目標達成計画に基づく取組み、及び、エネルギー効率とエネルギー源の多様化について、具体的に紹介を行った。
(3)官民セッション:技術開発及び市場化における優先分野
4つのセクターについて、企業やシンクタンク等民間及び国際機関等関係者を含むパネリストからそれぞれプレゼンテーションがあり、それに対する参加各国からの質疑やコメントが為された。
(イ)低炭素化石燃料発電については、クリーン石炭技術の重要性を指摘する意見等が出された。
(ロ)車輌及び燃料技術については、燃料電池車、エタノール車やバイオエネルギー等の可能性につき議論された。
(ハ)土地利用(農業及び森林)については、将来枠組みにおける農業・森林分野の扱いについて、問題の複雑さが多く指摘された。
(ニ)エネルギー効率、原子力、太陽光発電及び風力発電の市場化促進については、エネルギー効率及び原子力の重要性を指摘する意見が出された。我が国からはトップランナー制度の紹介を行い、これを評価する意見も出された。
(ホ)資金については、官民双方の役割が重要との点で意見の一致が見られた他、民間資金を呼び込むことが重要との意見が多く出された。また、炭素市場の重要性を強調する意見と、政府の役割を重視すべきとの双方の意見が出された。また、途上国の貧困に目を向けるべきとの主張も為された。
(4)長期目標設定へのプロセス及び要素
我が国、加及びEUが各々の提案・政策についてプレゼンテーションを行い、それに基づき議論を行った。途上国よりは、歴史的責任論や開発の権利、他の途上国が不在の場で議論を進めることへの懸念、長期目標の衡平性や実現可能性への疑問や、途上国の責任と結びつけることへの懸念も示したが、我が国より、我が国の提案している長期目標はビジョンであって法的拘束力のあるものではなく、また、各国の負担の議論に直接つながることを意図しているものではない旨述べ、他にも各国から様々な意見が出された。最終的には議長サマリーにあるとおり、我が国の提案に沿って各国の意見が集約された。
また、短中期目標の法的拘束性についても、各国から多様な考え方が提示され、引き続き議論していくこととなった。
(5)2008年に向けて・次のステップ及び結論
第二日回の会合は、バリ会合の後に開催することで一致した。また、我が国の提案によって、技術の研究開発について情報交換を行い議論を深める、専門家による会合を設けることとなった。
(1)米国は、本件会合を主催することを通じ、また、その発言によって、次期枠組の議論に関与することを明確にし、また、自らの気候変動対策や次期枠組への立場が現在真剣に検討中であること等について、率直に紹介した事は、米国の積極的姿勢といえる。また、主催国として、国務、財務、商務、エネルギー、環境といった関連主要閣僚や高官が多く会合に参加し、政府を挙げて相当な注力を行っていることが看取された。
(2)米国からは、本件会合は国連プロセスを支援、加速するものであることがあらためて表明され、本件主要経済国会合プロセスの成果は国連プロセスに貢献するものであることが再確認されたことも評価できる。次回会合は12月のバリ会合の結果をふまえて、その後の国連の交渉を円滑化するべく開催されることとなった。
(3)長期目標に関して、きわめて率直な議論が行われた。参加国の間で、完全に意見の一致ではないが、理解が大きく深まった。また我が国の提案の内容、特にビジョンであること、また、技術が大きな役割を果たすことに、殆どの参加国の意見が一致し、我が国の提案が大きな役割を果たした。
他方、短中期目標の法的拘束性については、各国の立場の違いが改めて明確になった。
(4)また、我が国が主張する革新的技術の必要性についても各国の賛同が得られたことは意義が大きい。
(5)今後、この会合が今後の国連の下での交渉を促進するような成果をあげるよう、我が国としても積極的に参加していきたい。