地球環境

国連気候変動に関するハイレベル会合
概要と評価

平成19年9月24日

 9月24日、国連「気候変動に関するハイレベル会合」が、バン・ギムン事務総長のイニシアティブにより、ニューヨーク・国連本部にて開催され、我が国から森総理大臣特使が出席したほか、ブッシュ・米大統領(非公式夕食会のみ)、サルコジ・仏大統領、メルケル・独首相、ユドヨノ・インドネシア大統領、ムベキ・南ア大統領(非公式夕食会のみ)、ルーラ・伯大統領(非公式夕食会のみ)ら各国首脳・閣僚等が出席した。

 今次会合においては、オープニング全体会合の後、4つのテーマ別会合「適応」「緩和」「技術」「資金」に分かれて各国のステートメントが行われ、我が国森特使はテーマ別会合「適応」において、「美しい星50」を紹介するとともに、途上国支援の重要性などについてステートメント(和文)(英文)を行った。
 また、非公式夕食会においては、事務総長の主催の下で、森特使の他約25名がうち解けた雰囲気の中で、真剣な意見交換を行った。

I.概要

(1)日時:平成19年9月24日

(2)場所:ニューヨーク・国連本部

(3)参加者:国連加盟各国、EC

(4)会合の概要

(i)オープニング全体会合

バン事務総長、ケリム総会議長、パチャウリ・IPCC議長、シュワルツェネッガー・カリフォルニア州知事のほか、数名のゲストスピーカーが発言した。

(ii)テーマ別会合(各国の主な発言)

  • テーマ別会合I「適応」
    • 気候変動は、すでに環境問題のみならず、エネルギー、開発、公衆衛生など、人間の生存に関わる問題であり、経済・社会部門のすべてのセクターがすでに気候変動の影響を受けている。
    • 適応は、「将来」の問題のみならず、各国ともにすでに気候変動の影響を受けていることから、「現在」の問題としても捉えられないといけない。
    • 「共通だが差異ある責任」の原則は今後も有効であり、先進国は条約および京都議定書で義務づけられているように、途上国への環境技術の移転、資金援助などの責任を果たすべき。
  • テーマ別会合II「緩和」
    • 温室効果ガスの削減のためには、長期目標の設定が重要。
    • 2013年以降の気候変動の国際枠組の構築について、年末のバリ会合でそのロードマップを策定すべき。新たな枠組について2009年までに合意すべき。
    • 気候変動の責任の多くは先進国にあるが、その影響は最も脆弱な途上国により現れる。
    • 緩和対策に当たっては森林保全が重要。
  • テーマ別会合III「技術」
    • 技術は、削減と適応の両方の対策において重要な役割を果たす。技術移転の強化が必要。
    • 再生可能エネルギー、エネルギー効率、CCSなどに関連する技術が重要。
    • 民間投資を促進するためには、官民の協力、市場ベースのアプローチが重要。
    • 革新的技術の開発及び国際協力が重要。
  • テーマ別会合IV「資金」
    • 途上国が適応対策を実施するためには、先進国による技術及び能力構築支援、資金援助の強化が必要。
    • 炭素市場の促進が必要。炭素市場は低炭素経済への費用効果的な移行を促し、途上国に必要な資金を集めるのに役立つ。
    • 炭素市場は唯一の答ではなく、公的資金も不可欠。適応のための資金はアフリカや最も影響を受けている国にとって優先事項。
    • クリーン開発メカニズムは重要な役割を果たしており、さらなる強化が必要。

(iii)閉会

  • バン事務総長より挨拶の後、ユドヨノ・インドネシア大統領が発言。
  • バン事務総長による議長サマリーが作成され、発表された。

(5)その他

(i)事務総長主催非公式首脳夕食会

 事務総長の主催により、非公式の夕食会が開催され、約25カ国の首脳等が参加。我が国からは森特使が出席した。
 事務総長により4つの議題(「適応(特に防災)」、「バリCOP及びポスト京都への期待」、「技術」及び「資金」)に沿って議論が進んだ。

  • 適応(特に防災)
     複数の途上国からの参加者より、最近の異常気象等に伴い、国の存続自体が危うくなっており、国連の下での更なる取り組みの強化を求める意見が出された。これに対し我が国森特使より、脆弱な国々の自然災害から受ける被害は極めて深刻であり、防災・災害対策は、適応の観点から重要。具体的な行動指針として、「兵庫行動枠組2005~2015」がある。各国各機関が包括的かつ一貫した協力をいっそう推進することが必要である。我が国は、途上国に対し支援をしてきており、モルディブの堤防がインド洋津波の際に大きな役割を果たした(注:この点については他の国の首脳から、明示的に評価の声があった。)。我が国は特に脆弱な国々に対し、防災の能力強化に貢献したい、と発言した。
  • バリCOP及びポスト京都への期待
     ポスト京都の交渉は、国連がもっともふさわしい場である点でほぼ意見が一致した。また、先進国と途上国のそれぞれの責任について、いくつかの意見が出されたが、途上国から、途上国にも共通の責任があるという面を強調した意見もあった。また、何らかの長期目標の必要性と経済成長と環境保全の両立の必要性については、これを支持する多くの意見が出された。バリ会合は、交渉開始のためのロードマップに合意すべきとの点を強調する国がある一方で、全ての国の参加を確保することが重要との点を強調する意見もあった。
  • 技術
     技術の開発と普及、開発のための投資の必要性については、ほぼ意見が一致し、また、いくつかの国からは、代替再生エネルギーの必要性を強調する意見や、原子力の必要性を強調する意見などが出された。化石燃料を如何にクリーンに利用するかという点が重要との意見も出された。なお、日本のハイブリッド車などの技術の有用性について、日本の名前を挙げて言及した国があった。
  • 資金
     途上国への資金的協力の必要性を強調する意見が出されたほか、市場メカニズムの重要性を指摘する国があった。
  • その他
     森特使からは、中期・長期の目標の議論のみならず、今すぐにもできることとして、温室効果ガスの削減に効果のある製品の関税撤廃・削減、グリーン購入の促進、エアコンの温度調節を紹介した。

(ii)UNFCCC・COP議長国主催サイドイベント

 昼食時に、昨年~再来年までのUNFCCC・COP議長国(ケニア、インドネシア、ポーランド、デンマーク)主催によるサイドイベントが開催され、ゴア前米国副大統領、ウー世界貿易センター協会副会長が講演したほか、主催者であるインドネシア大統領、ポーランド大統領、ケニア環境天然資源相、デンマーク首相が短いスピーチを行った。

II.評価

(1)国連事務総長がイニシアティブをとり、先進国や途上国(新興国及び島嶼国などを含む。)の幅広い国の首脳が集まって、気候変動を集中的に議論する会合が行われたのは今回が初めてであり、気候変動問題が環境問題のみならず経済・社会の広い分野に関わる問題であるとの認識が浸透してきていることが伺えた。

(2)特に夕食会では、首脳同士がテーマを気候変動問題に絞って真剣な議論を行ったことは、特筆すべきである。

(3)この会合は交渉ではなく、個別の論点について技術的・専門的な面からの検討は必ずしも目的でない。バリの会合に向けて政治的なモメンタムを高め、各国が気候変動を首脳の問題であると捉える一つの大きなきっかけになったと思われる。

(4)我が国は、12月のバリ会合において議論に積極的に貢献するとともに、来年のG8北海道洞爺湖サミット議長国として、引き続き気候変動問題においてリーダーシップを発揮していく。

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