
第5回「気候変動に対する更なる行動」に関する非公式会合(概要と評価)
(1月24~25日、於:三田共用会議所)
平成19年1月25日
1.会合の概要
本件会合は、日本とブラジルの共同議長(西村外務省気候変動担当政府代表・地球環境問題担当大使、マシャード外務省環境問題特別局長)の下で、世界の温室効果ガス排出量の約70%を占める主要先進国・開発途上国(合計21カ国及びEC)の政府関係者、デ・ブアUNFCCC(国連気候変動枠組条約)事務局長や研究機関等の参加を得て行われた。
各国の率直で自由な発言を促すため会合は非公開とし、発言内容は必ずしも公式の見解ではないとの前提で意見交換を行った。
2.議論の概要
(1)京都議定書以降の将来枠組を巡る最近の議論と今後の展望
- 現在行われている4つの場(注)での議論に加えて、途上国の自発的な取組みについても具体的に議論していくべきとの意見が多くの参加者からなされた(例として、セクター別アプローチや持続可能な開発に資する政策措置等)。そのような努力によって、国際的な枠組を通じた解決を目指すべきとの意見が多かった。
- 大幅な温室効果ガスの排出削減には先進国の取組では不十分であり、途上国を含む全世界的な努力が必要であるとする意見の一方で、先進国の歴史的な排出の蓄積を、先進国の義務に反映させるべきとの意見もあったが、そのための方策は実際上困難ではないかとの意見が出された。
- 気候変動対策においては先進国が率先して取組むべきであり、それは先進国の競争力を阻害しないで可能であるとの意見と、そうではなくそれは困難であるとの意見があった。
- 気候変動は緊急に対処しなければならないとの点ではほぼ意見が一致したが、今後の気候変動対策の検討においては、技術発展等の不確定要素があるとの意見も見られた。
- 気候変動の問題は、環境面だけの問題にとどまらず、その解決には政治的な意思が必要との認識が共有された。
(注)将来枠組に関する4つの場での議論
1)京都議定書第3条9項に基づく先進国の次期削減約束に関する議論(アドホック・ワーキング・グループ(AWG))、2)京都議定書第9条に基づく京都議定書全体の見直しに関する議論、3)気候変動枠組条約下で全ての国の参加の下で行われている長期的な協力に関する対話、4)京都議定書上削減約束を負っていない途上国の自主的削減努力に関する手続きについての議論(ロシア提案)
(2)技術移転
- 技術は主に民間が所有していると同時に、政府が果たすべき役割として、技術の研究開発(R&D)や民間の技術開発のための支援等が重要であり、官民の連携が必要との点で共通認識が得られた。
- また、技術移転の促進には途上国における政策やデータ等についての情報が重要であるとの意見が出された。
- 他方で、どれだけ技術移転を実施すれば十分であるかはっきりしないとの意見が出された。
- 途上国への技術移転は気候変動枠組条約や京都議定書の枠組だけではすべての対応をすることはできず、民間を含めた全体的な取組が行われるべきものとの意見も表明された。
(3)気候変動の悪影響に対する適応、ODA
- 適応の定義が定まっておらず、如何なる悪影響が気候変動によってもたらされたかを特定することは難しいとの指摘がある一方、既に気候変動の悪影響は顕在化しつつあり緊急な対応が必要であるとの主張がなされた。更に、適応の問題は開発政策の中で意識的に捉えていくこと(適応の主流化)の重要性が多く指摘された。
- 技術移転と同様、適応の問題についても、条約・京都議定書の枠組だけでは対応しきれないとの意見が多く見られ、この問題は開発問題と密接に関わっていることから、国際開発金融機関の果たす役割が大きいとの指摘があった。
3.評価
- 公式な交渉の場では議論されることが殆どない新たな発想や様々な仮定を行った上での議論を行うことができ、極めて活発かつ有意義な意見交換を行うことができた。
- 特に、途上国がいかなる取組・行動をとるべきかについて、途上国側の参加者も交えて率直な議論が行われたことは注目された。
- 気候変動に対する国際社会の関心が急速に高まっている現在、我が国としても、主要排出国の最大限の削減努力を促す実効ある枠組の構築に貢献していくべく、条約及び議定書の下での議論に参加していくことともに、こうした非公式会合の開催やG8プロセス、クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)への積極的な参画等、多様な取組みを行っていく。