平成24年12月25日
12月20日(木曜日),外務省は,「緑の未来協力隊」の発足を記念し,独立行政法人国際協力機構(JICA)との共催により,フォーラム『「グリーン経済を考える」-「緑の未来協力隊」発足に際して-』を外務省内で開催しました。政府,民間企業,学会,NGO等様々なセクターから約120名の参加を得,グリーン経済移行に向けた国際社会や日本の取り組みに関するパネルディスカッションを行いました。
本年6月にブラジルで開催された「リオ+20」において,日本は,「緑の未来」イニシアティブを発表し,世界全体のグリーン経済移行実現に向けた途上国での人づくりを後押しするため,3年間で1万人の「緑の未来協力隊」を編成することを表明しました。 本フォーラムは,この「緑の未来協力隊」の発足に際して,環境問題に取り組む様々なセクターの方と共に,「グリーン経済」とは何なのか,なぜ重要なのか,そしてグリーン経済への移行に向けて世界や日本はどのように取り組んでおり,またこれから取り組んでいくべきかを多方面から議論し,「グリーン経済」に向けたオールジャパンの取組を加速させることを目的に開催されました。
石井正文外務省地球規模課題審議官より,リオ+20およびそこで日本が表明した「緑の未来」イニシアティブを紹介し,また日本が「世界のグリーン経済への移行」について貢献していくための取組およびその課題についての議論を深め,オールジャパンで,グリーン経済への移行と持続可能な開発の推進に向けて邁進して行くという本フォーラムの目的について説明を行いました。
コーディネーター:
杉中淳 外務省地球環境課長
パネリスト(発言順)
崎田裕子 ジャーナリスト・環境カウンセラー/NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長/リオ+20国内準備委員会共同議長
小嶋公史 地球環境戦略研究機関(IGES)経済と環境グループディレクター
木原晋一 内閣官房国家戦略室企画官
吉武将吾 外務省気候変動課交渉官
まず杉中課長よりグリーン経済の意義,国際社会やリオ+20におけるグリーン経済について紹介がありました。続いて崎田氏からは,リオ+20国内準備委員会共同議長としての経験を踏まえ,企業の技術を活かし,よりグリーンで循環型の社会を追求すべきであり,またそのためにはマルチステークホルダーによる連携が重要である旨発言があり,小嶋氏からは途上国のグリーン経済に対する警戒を解消する必要があること,緑の未来協力隊がグリーン経済の促進だけでなく日本自身の環境問題に対する意識を変えることにも貢献しうる旨発言がありました。次に,木原企画官が世界のエネルギー情勢と日本のエネルギー・環境をめぐる今後の方向性について説明し,吉武交渉官から先日行われた国連気候変動枠組条約第18回締約国会議(COP18)と気候変動問題に対する日本の取組について紹介がありました。
傍聴席からは,環境問題に関する国際交渉における「共通だが差異ある責任」の議論の進展やグリーン金融に関する質問があったほか,「緑の未来協力隊」は様々なセクターを取り込んですすめていくべきといった意見が出されました。
コーディネーター:
安達一郎 国際協力機構地球環境部環境管理第二課長 (ディスカッション2)
パネリスト(発言順)
古沢広祐 國學院大學経済学部教授
信時正人 横浜市温暖化対策統括本部環境未来都市推進担当理事
藤野純一 (独)国立環境研究所社会環境システム研究センター持続可能社会システム
研究室主任研究員
古沢教授から,環境に対するパラダイムは変わりつつあり,人と自然のつながりに対する視点,考え方が見直されていること,また環境問題における多様性の重要性につき説明がありました。信時氏からは,上下水道分野での途上国への技術支援や各国都市との連携といった横浜市の独自の取組の紹介と,民間との協力に関する展望が述べられました。藤野氏からは,Asia Pacific Integrated Model(APIM)というシミュレーション・モデルを用いて低炭素化社会に向けた提言を行う活動を紹介するとともに,今後に向けた取組や課題について説明がありました。
傍聴席からは,環境・経済・社会という持続可能な開発の3本柱に関する考え方や,地方自治体としての取組の意義などについて質問が寄せられました。
グリーン経済の重要性が改めて確認されたほか,グリーン経済移行に向けた多様な視点,取組についての情報が共有されるなど,本フォーラムは今後日本や世界のグリーン経済への取組を促進する上で有意義なものとなりました。また,「緑の未来協力隊」についても,出席者から積極的な支持と期待が表明され,協力隊が世界のグリーン経済移に力強く貢献するための方向性が示されました。