地球環境

気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)
京都議定書第5回締約国会合(CMP5)等の概要

平成21年12月20日
日本政府代表団

1. 全体の概要

(1)12月7日から19日までデンマークのコペンハーゲンにおいて、気候変動枠組条約第15 回締約国会議(COP15)、京都議定書第5回締約国会合(CMP5)等が行われた。鳩山総理大臣、小沢環境大臣、福山外務副大臣、増子経済産業副大臣、大谷環境大臣政務官等が出席した。

(2)前半の事務レベルの特別作業部会における議論、閣僚レベルでの協議等を経て、17日夜から18日深夜にかけては首脳による協議・交渉も行われた。30近くの国・機関の首脳レベルの協議・交渉の結果、「コペンハーゲン合意」が作成された。

(3)その後19日未明にかけて、「コペンハーゲン合意」をCOP全体会合にかけたところ、先進国、島嶼国、LDCを含めほぼ全ての国が賛同し、その採択を求めたが、数か国(ベネズエラ、キューバ、ボリビア、スーダン等)が、作成過程が不透明であったことを理由に採択に反対したため、条約締約国会議として「同合意に留意する」と決定された。今後の議論については、本年終了することになっていたAWG-LCAも、AWG-KPとともに作業を継続することが決定された。

2. 2つの特別作業部会(AWG-LCA、AWG-KP)における交渉

(1)第1週目は、枠組条約の下の長期的協力について話し合う特別作業部会(AWG-LCA)及び京都議定書附属書Bの改正について話し合う特別作業部会(AWG-KP)の双方において、11月のバルセロナ会合までの議論を踏まえ、引き続き議論が進められたが、実質的進展はほとんど得られなかった。

(2)11日(金曜日)には、事態を打開すべく、両作業部会の議長からそれぞれ締約国会議(会合)に提出する報告書案が提示された。

(イ)AWG-KP議長からは、京都議定書附属書Bの改正を採択する内容を含む、途上諸国の意向を強く反映する案が提示された。京都議定書附属書Bの改正を先議すべしとする多くの途上国は、同議長提案を歓迎したが、先進諸国は、京都議定書のみでは世界規模の温室効果ガス削減に不十分であるとして、京都議定書を締結していない先進国(米国)や同議定書の下で義務を負わない主要途上国(中国、インド等)の排出削減を含めた包括的かつ実効的法的枠組みを構築すべしと主張し、議長提案に反対した。

(ロ)AWG-LCA議長の提案も京都議定書附属書Bの改正を前提とし、先進国を米国と京都議定書締約国に区別するものであった。この提案に基づき、温室効果ガス削減について先進国と途上国のとるべき行動や義務の程度、共有のビジョン、資金支援の方式等を巡り議論したものの、意見の対立は埋まらなかった。

(3)両議長の提案を巡り、12日(土曜日)以降も、閣僚級非公式協議やAWGの分科会等が続けられたが、合意に向けた進展は得られないまま、16日(水曜日)には、両議長提案を若干修正したテキストが、未合意のまま気候変動枠組条約締約国会議(COP)、京都議定書締約国会合(CMP)双方に報告され、議論を継続することとなった。

3. COP・CMPにおける交渉、首脳級の調整

(1)16日(水曜日)、交渉はCOP、CMPの場に移された。COP議長が、両AWGの報告を踏まえた新たな文書を提出し議論を進展させたいとの発言をしたところ、中国、インド、ブラジル等の主要途上国が、両AWGからの報告文書に基づき交渉をすべきと強く反発した。このため、議論は再度紛糾し、17日(木曜日)、両AWG議長の文書を基礎に論点別のドラフティング会合が行われたが、特段の進展は見られなかった。先進国側としては、少数国会合の実施、議長国デンマークによる新提案の提示を求めたが、途上国は透明で全ての締約国が参加するプロセスを志向し、議事進行は混乱した。

(2)こうした中、17日(木曜日)夜の晩餐会後、少数国による首脳級の会合が実施された。鳩山総理をはじめ、オバマ米大統領、ブラウン英首相、ラッド豪首相、メルケル独首相、サルコジ仏大統領、中国、インド、ブラジル、南ア、小島嶼諸国グループやアフリカ諸国グループといった途上国地域代表等30近くの国・機関の首脳級が参加して、18日(金曜日)も午前から首脳級会合で断続的に議論が続き、18日深夜になって、これらの国々の間で「コペンハーゲン合意」が合意された。

(3)その後、「コペンハーゲン合意」をCOP全体会合にかけたところ、先進国、島嶼国、LDCを含めほぼ全ての国が賛同し、その採択を求めたが、数か国(ベネズエラ、キューバ、ボリビア、スーダン等)が、作成過程が不透明であったこと等を理由に採択に反対したため、議論が紛糾し、デンマーク首相は議長を降板し、最終的には19日午後に、副議長(バハマ)の下で、条約締約国会議として「同合意に留意する」と決定された。

(参考)「コペンハーゲン合意」の主たる内容

1)世界全体の気温の上昇が2度以内にとどまるべきであるとの科学的見解を認識し、長期の協力的行動を強化する。

2)附属書I国(先進国)は2020年の削減目標を、非附属書I国(途上国)は削減行動を、それぞれ付表I及びIIの様式により、2010年1月31日までに事務局に提出する。

3)附属書I国の行動はMRV(測定/報告/検証)の対象となる。非附属書I国が自発的に行う削減行動は国内的なMRVを経た上で、国際的な協議・分析の対象となるが、支援を受けて行う削減行動については、国際的なMRVの対象となる。

4)先進国は、途上国に対する支援として、2010~2012年の間に300億ドルに近づく新規かつ追加的な資金の供与を共同で行うことにコミットし、また、2020年までには年間1,000億ドルの資金を共同で調達するとの目標にコミットする。気候変動枠組条約の資金供与の制度の実施機関として「コペンハーゲン緑の気候基金」の設立を決定する。

5)2015年までに合意の実施に関する評価の完了を要請する。

4.日本政府の対応

(1)日本政府としては、鳩山総理、小沢環境大臣によるバイ会談や福山外務副大臣や増子経済産業副大臣、大谷環境大臣政務官による各国代表団長への働きかけ等を通じて、議長国デンマーク政府との連携、米国等他の先進国との協調、中国をはじめとする途上国への働きかけ等を進めながら、交渉に参画、貢献し、全ての主要排出国の参加する1つの枠組みの必要性をはじめとする各論点について積極的主張を行った。

(2)鳩山総理は、18日の首脳級会合でステートメント他のサイトヘを発表すると共に、17日の首脳級晩餐会、その直後から18日夜にかけての首脳級の会合に出席し、コペンハーゲン合意の作成交渉に直接参加した。併せて、デンマーク、中国等とのバイ会談を行った。小沢環境大臣は12日午後から現地に滞在し、各国とのバイ会談等を行うとともに、ハイレベル会合でステートメントを行った。

(3)これに先立ち、16日(水曜日)には、小沢環境大臣より、日本は、全ての主要排出国が参加する公平で実効性のある枠組みの構築と野心的な目標の合意を前提に、2020年までに90年比25%の削減を目指すことを改めて表明すると共に、鳩山イニシアティブの具体化として、COP15における政治合意の成立の際には、温室効果ガスの排出削減など気候変動対策に積極的に取り組む途上国や、気候変動の悪影響に脆弱な状況にある途上国を広く対象として、2012年末までの約3年間で1兆7,500億円(概ね150億ドル)、そのうち公的資金は1兆3,000億円(概ね110億ドル)の支援を実施していくことを決定した旨発表し、各国から歓迎されると共に、交渉の進展に弾みを付けた。

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